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フェラーリの転換期に存在した「ディーノ208GT4」とはどんなクルマだったのか?「フェラーリ最小のV8搭載」「ディーノ初の2+2」「ベルトーネデザイン」

2023/05/01

フェラーリの転換期に存在した「ディーノ208GT4」とはどんなクルマだったのか?「フェラーリ最小のV8搭載」「ディーノ初の2+2」「ベルトーネデザイン」

| フェラーリはすべてのモデルにおいて「成功」を記録したわけではない |

ディーノブランドは予期したような成果を残せず、結果的に「廃止」となっている

さて、フェラーリは自社にて「過去のアイコニックなモデルを振り返る」コンテンツを公開していますが、今回はディーノ308GT4の2リッター版、「ディーノ208GT4」について触れています。

このディーノ208GT4は、1967年に登場したディーノ206GT、1969年のディーノ246GT、1972年のディーノ246GTS、1973年のディーノ308GT4に次いで発表されたモデルであり、208という名称は「2リッター8気筒」から命名されています。

そしてフェラーリはこの「最小のV8エンジンを積んだ」クルマに今回スポットライトを当てているわけですね。

ディーノ208GT4とはどんなクルマだったのか

ディーノ208GT4にはいくつかの特徴がありますが、「現代のV8フェラーリの約半分の排気量のV8エンジン」を積む意外にも「ディーノブランドで初の2+2」「ピニンファリーナではなくベルトーネのデザイン」といった特徴も。

そこでこれらを一つづつ見てゆくと、まず「2リッター」という排気量について、これは当時のイタリアが「2リッター以上の排気量を持つクルマ」に非常に重い税金を課していたことから(課税回避のため)決定されたもので、エンジン型式はティーポ106CB000、公称出力は180馬力。

組み合わせられるトランスミッションは5速マニュアル、0−100km/h加速は7.7秒、最高速220km/hというスペックを持っています。

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そして(2+2という)レイアウトについてだと、それまでのディーノはすべて2シーター構成となっており、フェラーリは販売の裾野を広げるために(308GT4で)2+2を導入しようと考えたそうですが、ディーノブランド自体が「量販」を意図して立ち上げられているので、より売れる可能性の高い選択を行うというのは当然の成り行きかもしれません。

なお、当時のエンツォ・フェラーリは「V12エンジン搭載車意外はフェラーリとは呼ばない」という信念を持っていて、そのために(コストを下げることを目的とし)V12エンジンを積んでいないディーノにはフェラーリの名称そしてエンブレムを与えなかったわけですが、これはもちろんフェラーリブランドのイメージを守るためであり、フェラーリブランドは「日和らない」という姿勢を示したかったのだと思われます。

ただ、フェラーリが日和らないことで市場性(購入層)を狭めていたことも事実であり、しかし会社の運営資金、レース参戦のための資金を捻出せねばフェラーリの運営が立ち行かなくなるのもまた事実。

そこでフェラーリブランドの価値を下げずに資金を獲得するためにディーノブランドを立ち上げたということになり、フェラーリが”おもねらない”一方、ディーノブランドが”市場にあわせた”展開を行ったのはそのブランドの目的を考慮するという観点において理にかなっている、と考えることも可能です。

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ディーノ308GT4はベルトーネデザイン

そしてぼく的にもっとも注目すべきだと考えているのは、ディーノ208GT4、そしてその派生元のディーノ308GT4がベルトーネによるデザインを採用していること。

フェラーリは1951年以降、そのデザインを(2015年まで)ピニンファリーナへと一任していますが、その事実を考慮すると「ディーノ308GT4/208GT4がベルトーネデザイン」というのは極めて異例なことでもあります。

その理由については公式に語られてはいないものの、ジョルジエット・ジウジアーロが1972年に発表したマセラティ・ブーメラン、ベルトーネが1968年に発表したアルファロメオ・カラボ、同じくベルトーネによる1970年のランチア・ストラトス・ゼロ、そしてこれもベルトーネの作となる1972年のランボルギーニ・カウンタック(コンセプト)の影響があったのかもしれません。※さらに言えば、ディーノ206GTはフェラーリとしてははじめてのミドシップカーであり、これも1966年に発表された”世界初の大排気量ミドシップスポーツ”であったランボルギーニ・ミウラから影響を(多少なりとも)受けた可能性も

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実際のところ、当時のフェラーリは「それまでの」美しい曲線を持つボディからウエッジシェイプへと移行したいと考えていたフシがあり、1971年の356GTC4、356GT4BB、1972年の365GT4 2+2、1975年の308GTBといった具合にウェッジシェイプまっしぐら。

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その意味では「フェラーリ最小の排気量を持つV8エンジン」「ディーノブランドで初の2+2」「ピニンファリーナではなくベルトーネのデザイン」という特徴もさることながら、その背景にあったものこそがディーノ308GT4 / 208GT4の”真に”語るべきストーリーなのかもしれません。

ちなみにですが、こういった革新的な試みに関わらず、ディーノブランドの動向はエンツォ・フェラーリの期待に沿うものではなかったといい、エンツォ・フェラーリは1976年にディーノブランドを廃止してフェラーリブランドに統合することを決定することになりますが、同時期に「在庫者として保管しているディーノのエンブレムをすべてフェラーリへと置き換えるよう」指示を行ったとも伝えられています。

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参照:Ferrari

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