Image:KTM
| ただし「悪影響がない」根拠は示されず、KTMの声明は楽観的という報道も |
実際のところ、資金援助を得られなかった時点で自力による再建は難しい
さて、KTMは衝撃の「破産」を宣告し、現在非常に困難な状況にありますが、この原因はここ数年で急激に減少した販売、そしてその根本的な要因である金利の上昇、賃金の停滞、世界情勢の不安定さ、消費支出の急落などに加え、部品不足、製造問題、長期納期などのオペレーション面での課題が改善する見込みがほぼ無いと思われるため。
ただしKTMの経営陣は(KTM含め)同社が所有するモーターサイクルブランド(ハクスバーナ、ガスガス、そして新たに買収したMVアグスタ)の再構築を行うための事業再生手続きを開始したことに言及し、これをつかの間の「ピットストップ」だと表現しています。※「Ready to Race」が社是のKTMらしい
今後KTMはどうなるのか
KTMによると、今後数ヶ月の間に事業を再構築することを目指しており、KTMのプレスリリースには「1992年に160人の社員と6,000台の生産量から始まり、現在は1日最大1,000台の生産能力を持つに至りましたが、今、我々は大きな課題に直面しています。これに対応するため、KTMは自己管理の下で法的な再構築手続きを開始しました。この申請は11月29日金曜日に提出され、90日以内に完了することを目指しています」と記されています。
しかし、この説明はかなり楽観的であり、実際にはそれほど順風満帆ではないという報道も見られ、この再構築手続きは「倒産のリスクがあるが、まだ倒産していない企業は、倒産を申し立てる前に経済的に回復する機会を得ることができる」という制度を利用したもので、「この手続きは、倒産のリスクが差し迫っている場合にのみ利用できる。手続きに先立って、企業は再構築の計画を策定し、その計画が信頼できるものであることを示さなければならない。その計画は、債権者の承認を得る必要がある」とも報じられています。
つまり今後再建の計画、具体的には「膨らんだ負債を解消する方法」が90日以内に承認されなければ、KTMはこのまま消失してしまう可能性があるということですね。
KTM親会社の株価は急落
再構築と膨大な負債のニュースを受け、KTMの親会社であるPierer(ピーラー)の株価は急落し、ブルームバーグによると、Pierer Mobility AGの株価は1日で45%下落して6.9スイスフランとなり、記録的な日次下落へ。
ただ、今年に入ってからは株価が84%も下落しているため、多くの投資家がすでに「KTMは危機的状態にある」と判断していたのかもしれません。
そしてこの株価急落を受けてのことか、報道の1日後にKTMの共同CEOであるステファン・ピーラー氏とゴッドフリート・ノイマイスター氏は共同にて声明を(動画にて)発表し、そこでは「過去30年間で、私たちはヨーロッパ最大のモーターサイクルメーカーに成長しました。私たちの製品は、世界中の何百万ものモーターサイクリストにインスピレーションを与えています。しかし今、私たちは将来に向けてのピットストップを行っている最中です。KTMブランドは私の人生の仕事であり、私はそれを守るために戦います」と語ることに。
そしてちょっと興味深いのは、この再構築計画がKTM North AmericaやKTMジャパン、その他の子会社に影響を与えないというKTMの主張。
KTMは「パーツ供給や車両の購入に悪影響はない」と述べているものの、資金が枯渇したKTMに対しサプライヤーがパーツの納入を行うとは考えられず、そしてKTMの従業員の多くも(給与が支払われないのであれば)KTMを離れることになるものと思われます。
ただ、KTMは同社の言う通り「ヨーロッパ最大のモーターサイクルメーカー」でもあり、その高いブランド価値(他のバイクブランドとは競合しにくい排他性がある)と一定の市場を確保していることもまた事実。
よって資金力のある企業がKTMの買収に乗り出す可能性が高く(あるいはKTMがハクスバーナやMVアグスタを売りに出すかもしれない)、どのような形となるにせよ、KTMというブランドが失われることはないであろうと考えられます。
【KTMのお客様には何の影響もありません】
— KTM Japan【公式】 (@ktm_japan) November 29, 2024
KTMの経営陣から、お客様に向けた公式声明が発表されました。
マッティヒホーフェン –… pic.twitter.com/YcUIEhrjn7
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