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【試乗:ロールスロイス・カリナン】お金で買える最高の満足がここにある。”わかっている”人に向けた別世界のラグジュアリー

2019/02/12

なぜロールスロイスが高価なのかを述べてみたい

さて、ロールスロイス・カリナンに試乗。
ロールスロイス・カリナンはロールスロイス「初の」SUVとなり(当初ロールスロイスはSUVではなくHSVと呼んでいたが、最近ではSUVと表記するようになった)、全長5350ミリ、全幅2000ミリ、全高1835ミリという巨大なクルマ。

「カリナン」とはアフリカのカリナン鉱山にて発見された世界最大級のダイヤモンドの名称であり、そしてロールスロイス・カリナンもまたその名に恥じない堂々たるスタイルを誇っています。
なお、価格は38,945,000円という一般常識からかけはなれた設定となっています(しかしロールスロイスの中では高い方ではない)。

ロールスロイス・カリナンはこんなクルマ

ロールスロイス・カリナンに搭載されるエンジンは6.7リッターV12、出力は571馬力。
車体重量は2660キロという(超)ヘビー級。
ちなみにエンジンはロールスロイスのフラッグシップである「ファントム(5460万円)と同じ。
そしてファントムの車体重量は2700キロなので、ほぼ動力性能として同じだと考えて良さそうです。

ロールスロイスがカリナンについて紹介しているのは下記の通り。
「冒険心」をキーワードに、どこへでも行けるクルマ、としてカリナンを開発したことがわかりますね。

「我々はお客様がSUV市場で見つけられなかったものを提供しなければならない――そのことをわかっていました。」ミュラー・エトヴェシュはそう続けました。「お客様は、人生において限界や妥協を良しとしません。お客様はパイオニアであり、お客様にとっては冒険心や斬新さをどう体験できるか、ということに尽きるのです。そんなお客様の為には、どこへでも行ける最高級のラグジュアリー・スタイル――、そう、ロールス・ロイス・スタイルのSUVが必要です。すなわち、カリナンに他なりません。」

VIA:RollsRoyce

ロールスロイス・カリナンの外装はこうなっている

カリナン最大の特徴は、ほかのロールスロイスとは異なり「2ボックス」スタイルということ。
つまりはセダンやクーペではなく、平たく言うと「バン」になり、そのために「テールゲート」を持つ独特のリヤビューを形成しています。

なお、このテールゲートは「ザ・クラスプ」と名付けられ、上下二分割。
もちろん電動で開閉し、トランク内側にもロールスロイス特有の、毛足の長いカーペットが貼られることに。

このトランクスペースは実に広大で、ロールスロイスいわく、「レンジローバー・ヴォーグ・エクステンデット・ホイールベースよりも広く」「マーク・ロスコの芸術作品を載せることも容易」。

フロントはこれもロールスロイス特有の「パルテノン神殿」をモチーフにしたグリルが特徴(パンテオングリル)。
このルーバーはステンレス製で、一本一本が丁寧に磨かがれています。

そしてふと気づいたのは、「フロントの押し出しは、セダンであるファントムのほうが、SUVであるカリナンよりも強い」ということ。

カリナンの車体サイズは全長5350ミリ、全幅2000ミリ、全高1835ミリ、ファントムは全長5770ミリ、全幅2018ミリ、全高1646ミリ。

カリナンのほうが全高がある、つまりキャビンの高さがあるために相対的にフロントグリルが小さく見えるんじゃないかと考えたのですが、どうやらファントムのほうがグリルが大きく(ただし測ったわけではない)、そしてカリナンのほうがグリルが小さいようですね。

その意図は不明ですが、カリナンでは「迫力」よりも「スポーティーさ」を強調したかったのだろう、と考えています(もちろんそれはクルマのキャラクターの差に起因している)。

そしてカリナンはじめロールスロイスには多くのシルバーのパーツが存在しますが、これらは安っぽいメッキではなく、職人が「磨いて」光沢を出しているようですね。

実際に目にすると金属ならではの重量感を感じさせ、その輝きには目を奪われます。

そして「磨き」といえば塗装も同様であり、何層もに重ねられた塗装は「研ぎ」も繰り返されたと見え、いわゆるゆず肌(オレンジピール)は一切なく、まさに鏡面。

ホイールも同様に美しくポリッシュがかけられ、やはりアルミの質感が最大限に感じられる仕上がりです(センターキャップの”RR”文字は、ホイールがどの角度であっても必ずこの方向~正しく読める~を向く構造を持っている)。

ロールスロイス・カリナンの内装はこうなっている

ロールスロイス・カリナンのインテリアを「豪華」という言葉だけで片付けるのははばかられ、そこには「伝統」「シンプル」という要素が含まれるように思います。

イギリスのデザインは(内装にかかわらず外装でも)ミニや、昔のジャガーのように「丸と直線」で構成されることが多いのですが、ロールスロイス・カリナンの内装もやはり「円と線」が根底に。

なお、イギリスの美学として「ヒドゥン・デライト」という、「持ち主にしかわからないような仕上げや素材」を用いた楽しみ方があって、第三者に見せて自己満足を得るというよりも自分自身が満足感を得るというものが存在。※外から見るとシックなダークスーツなのに、裏地やポケット内部の生地に自分の好きな色や柄を用いる、というアレ

よってロールスロイスの場合も「見るからに豪華絢爛」というわけではなく、「見れば見るほど感心する」というデザインそして作りを持つ部分が多いように感じます。

そしてもちろん内装においても、外装同様にシルバーパーツはチャチなメッキではなく、重厚感の感じられるポリッシュ仕上げ。

操作系においては特殊なところはなく、しかしウインカーレバーなどステアリングコラムから生えているレバー類は「細くエレガントな」デザインを持っています(最近のクルマに見られる、無愛想な樹脂製の、そしてパーツの継ぎ目の見えるような棒ではない)。

とにかく微に入り細に入り注意が払われたのがロールスロイス・カリナンのインテリアですが、アームレスト内にあるシガーライターソケットのキャップまでもが半透明のクリスタル風になのには驚かされます(さすがにガラス製ではないが、他の車のように黒いキャップでもない)。

こちらはおなじみの「傘」。
もちろんグリップ部分や布部分はカスタム可能です。

カーペットは伝統のウール製でモッフモフ。
靴を脱いで足を埋めるとたいへん気持ちの良いフロアです。

そしてキックプレートもポリッシュ加工が施され、シートレールすらもポリッシュ(ぼくの知る限り、シートレールにポリッシュがかかっているクルマはロールスロイスの他にはない)。

ちなみにカリナンの車両本体価格38,945,000円と価格が近い車だと「ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダー」の38,612,614円がありますが、これら2車は、似たような価格帯であってもお金のかけどころが全く異なるクルマであり、ロールスロイス・カリナンの場合は上で述べたような「磨き」「素材」といったクラフトマンシップに関する部分、反面ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーは「シャシー」「エンジン」「足回り」といった運動性能に関する部分にかけるコストが特化していて、それぞれの金額にはそれぞれの理由がある、というのが面白いところ。

ロールスロイス・カリナンで走ってみよう

ロールスロイス・カリナンは上述のように、とても大きなクルマ。
横に並ぶと「このクルマを運転するんか・・・大丈夫かな・・・」という不安のほうが先に立つサイズですが、意を決してドアを開けて乗り込むことに。

ちなみに乗降時には「乗り降りしやすいよう」車高が40ミリ下がります。

シートに座った後はメーターフード内側にあるボタンを押してドアをクローズ。
そしてシートを調整し(ドアインナーパネルとシート調整レバーとの隙間が狭く手が入りにくい。シートポジションメモリー付きだと思われるので何度も調整する必要はないだろうけど)、ステアリングコラム左端にあるボタンを押してエンジンスタート。

ちなみにこのエンジンスターターボタンは「控えめ」なサイズを持っていて、ここも「いたずらに何かを強調しない」ロールスロイスの美学が感じられるところ(いくつかのメーカーは、サルーンであってもスポーツカーのような大きなスターターボタンを持っているものの、あれは違和感がある)。

Dレンジに入れるにはステアリングコラムから生えている右上のレバーを引いて下げることで行い(つまりコラムシフト)、ここは慣れていないと迷ってしまう部分ですね。

とりあえずDレンジに入れ、そのままアクセルペダルを踏んでクルマをスタートさせますが、エンジン始動からここまで「ほぼ無音」かつ「無振動」。

その後感触を確かめるようにゆっくり走ってみるものの、意外とこの大きさにも慣れるようで、というのも四角い車であり、フロントの見切りもよく、ボンネットの端を見ているとクルマのサイズがおおよそわかるため。

ただ、ドアミラーを見ると「けっこう車線いっぱいいっぱい(もちろん実際はかなり余裕があるはず)を走って」いて、そうとうに大きな車であることを再認識させられます。

座っている位置はかなり高く、雰囲気的には「バスかトラックに乗っている」ようなポジション。
よってすべてのクルマが「下」に見えますが、これはかなり新鮮な体験です。

エンジンについては571馬力もあるので不足はなく、そしてアクセルを踏み込むと当時にぐっと加速し、しかし車体の姿勢変化は非常に小さく、「ガツン」という衝撃を伝えないまま加速するように設定されているようです(ただし、スピードメーターを見る限り相当に加速は速い)。

そして段差超えやカーブを曲がるときなどもとにかく滑らかで、ブレーキング時もそれは同じ。

ロールスロイスの乗り心地をして「魔法のじゅうたん」とはよく言われるものの、たしかに乗った印象は「魔法のじゅうたん」そのもの。

内外装の仕上げが「豪華」という言葉だけで表現しきれないのと同様に、乗り心地についても「快適」という表現だけではとうてい言い表すのが難しく、それは「超」快適というよりは「快適の”質”」が違うという印象。

つまり、単なる「快適」の延長線上ではなく、快適なりに3次元的な奥行きがそこにある、とぼくは考えています。

急加速、急ハンドル、急ブレーキという、いわゆる「急」のつく動作をしても、カリナンはおそらく急激な姿勢変化を見せること無く、しかし要求したとおりの結果をドライバーに示すことになるのだと思われ(ロールスロイスでそこまではさすがに試せなかった)、とにかくカリナンは懐の深いクルマ、という印象。

たぶん、他メーカーの高級車にて「もっとも丁寧な運転をした」としても、ロールスロイス・カリナンで「もっとも雑に運転をした」ときのマナーには遠く及ばないレベル、といえばわかりやすいかも。

ロールスロイスは自社の製品をして「人類が作りうる最高のクルマ」だと表現していますが、おそらくその言葉には間違いはなく、そしてそれを理解できるのはおそらく「一流のものに触れてきた人だけ」。

よって、お金ができて「最初のクルマがロールスロイス」という人ではなく、これまでも国内外のサルーン、高級と言われるクルマを乗り継いだ人のほうがより良くロールスロイスの良さを理解できるのではないかと考えていて、そういった人であればあるほど「割安だ」と感じるのがロールスロイスなのかもしれません。

ロールスロイスは価格が価格だけに購入できる人は限られ、しかし購入する人は「ずっとロールスロイス」、そして「何台も同時に買う」傾向があり、それもやはり「ロールスロイスでないとダメだ(ほかのサルーンでは満足できない)」と思わせるものがあるからのでしょうね。

なお、今回試乗させていただいたのはコーンズさんのお誘いにて。
会場は大阪・中之島にあるリーガロイヤルホテルで、フェラーリとの合同試乗会となります。

いまだコーンズさんではクルマを購入したことはなく、しかしいつもお声がけいただき、大変感謝(ポルトフィーノのフェイスリフトモデルは購入したいと考えている)。

上で述べた「ランボルギーニとロールスロイス」同様、フェラーリとロールスロイスもまた価格帯がよく似ているクルマで、しかし方向性が全く異なる、というのも面白いですね。

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