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「走る、曲がる、停まる」のレベルが想像以上に高かった。スズキ・イグニスに試乗する

2016/02/21

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さて、先般より楽しみにしていたスズキ・イグニスに試乗。
グレードはハイブリッドMZの4WD。
ハイブリッドで4WDながらも178万円というのは非常に魅力的で、これにレーダーやナビゲーションシステム、全方位モニタを装着したとしてもプラス23万円程度。
オプションも豊富で非常に楽しそうな車であります。

エンジンは1.2リッター91馬力、モーターは3.1馬力。 モーターのみの走行は出来ずアシストに徹底する「マイルドハイブリッド」ですね。

車体サイズは全長3700ミリ、全幅1660ミリ、高さ1595ミリ。
最低地上高は180ミリで回転半径は4.7メートル。
非常にコンパクトで回転半径が小さく、かつ最低地上高が高いので段差や傾斜にも強いということになります。

サスペンション形式はマクファーソン・ストラット、リアはアイソレーテッド・トレーリングアーム。
なお2WDの場合リアサスペンションはトレーリングアームとなりますが、4WDではきっちりとサスペンションを変更しているところに好感が持てます(4WDなのに2WDと同じサスペンション形式のままにしてコストダウンを図っているメーカーがある)。

ざっと外観を見てみると、初代エスクードにあったようなボンネット脇のスリットや、Cピラーの3本スラッシュなどスズキの伝統とも言えるデザインが見られ、このあたりはオッサンもターゲットに入れているのかもしれません。

実際のところ現行アルトから急に過去へのオマージュを取り入れたように思われ、イグニスについても「フロンテ」を思わせるリアビューを持っていますね。

ただし全体的なイメージは「現代風」で、プレスラインで明確に区切られて張り出したフェンダー、そして国産車としてはかなりツライチにセットされた4輪がいかにも「しっかりと踏ん張っている」印象を演出しており、コンパクトカーとは思えない視覚的安定感を感じます。

ボディカラーはレッドやオレンジなど明るい色を含めた8種類。
ハイブリッドMZのみがルーフをブラックにする「2トーンルーフ」を選択することができます。
試乗車はちょっと暗めのトーンを持つ「プレミアムシルバーメタリック」で、これがガンメタ塗装のホイールと相性が良く、全体的にかなり引き締まった印象。
このボディカラーにマットクリアのラッピングを施して「マットグレー」に仕上げるとかなり格好良さそうだ、と思います。

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ドアを開けて乗り込みますが、ドアインナーハンドルやセンターコンソール付近のカラフルなパーツが目に付きます。
ステアリングホイール、パーキングレバー(電動式でないのは残念)は本革巻ですが、スムースレザーを採用しており手触りも良好。
全体的にシンプルな内装ですが安っぽさはなく、このあたり国産車は急激にデザイン力を上げているように思います。

ホンダはちょっと未来的で立体的な印象がありますが、スズキは直線と円をうまく使ってポップに見せる手法が得意なようです。
イグニスにおいてもシリンダー状デザインを持つエアコン操作部は秀逸で、ステアリングホイール、シフトレバー、エアコン吹き出し口など各部のデザイン性もかなり高いレベル。

シートは柔らかく、しかし適度な反発力を持っており、これも良くできていると評価できる点です。
実際に走行するとサスペンションはちょっと硬めでロールも抑えられているのですが、このシートがうまく衝撃を吸収してくれる印象があり(トヨタの場合は時折シートが柔すぎることがある)、自動車の構成部品ひとつひとつを真剣かつ真面目にしっかりと研究しているという印象を受けますね。

なお最近ぼくは「サスペンションとシートとの関係」について注意することが多くなっています。
これはルノー・メガーヌR.S.に試乗したとき、「(F1マシンの設計を行う)ルノー・スポールではサスペンションとシートは同時設計されるべきだと考えており、実際にそうしている」と聞き、実際に乗ってみて「ああなるほど、こういうことか」と納得したことに起因しています。

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さて試乗に戻りますが、キーはスマートキー化しており、エンジンはプッシュボタンで始動。
シートやミラーを合わせていざ道路に出ますが、ディーラーの敷地から出る際の段差越えの段階でも「かなりっかりしている」ことがわかります。
ちょっと大きめの段差を斜めに出るのですが、内装は音ひとつたてず、もちろんボディの歪みも感じられません。

そのままサクっと加速に移ってみると予想外の軽さにびっくり。
車内に入るエンジン音は最小限で、かなり静かと言って良いでしょうね。
ヒップポイントは高めに設定されていますがベルトラインが高く囲まれ感があるので不安な印象はまったく無し。

前方、横、後方の視界も非常によく安心して運転できる車と言えるでしょう。
ウインカーレバーなどの操作系もタッチが良く、経験上ではBMWやポルシェよりもしっかりした操作感を持っているのにも驚くところ。

坂道での加速、車線変更時の加速なども身軽にこなし、横方向のふらつきも感じられず(足回りの剛性やダンパー性能が不十分だとゆり戻しがくることがある)、非常に安定感があるのも良いところですね。
ステアリングの中央付近はやや不安定というか遊びが大きいように感じますが、車の性格を考えるとこれくらいの余裕があったほうが良いのかもしれません。

しかしながらカーブでステアリングを切り込むと曖昧な印象は姿を消して非常に正確な反応を示し、かつ「切りすぎたり、足りなかったり」することがないのも優れた点ですね。
上述のようにサスペンションはやや硬めのセッティングでロールが少ないのですが、これは下の山道だと絶大な安心感をもたらすことになり、クラス以上の安定感を生み出していると言って良いでしょう。

ブレーキペダルは軽く、最初は効きが物足りないように感じるものの、さらに踏んで行くとしっかりと効いてゆくタイプ。
ちょっと前までは全般的にカックンブレーキが多かったように思いますが、ここ数年は軽い操作系と踏みしろに応じて効くブレーキというのが国産車、輸入車問わずトレンドのようです。

アイドリングストップは標準で装備されますが、エンジンの停止と再スタートについても振動が少なく、よくできていると言えますね。

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全体的に見ると、ボディ剛性が高い、内装の立て付けが良い、足回りとシートとのバランスが良い等ありますが、なにより車としての基本性能「走る、曲がる、停まる」についてバランスが良く、かつ高いレベルにあると言えるでしょう。
これらについてまったく不満はなく、しかし自然すぎる振る舞いを持っているため、「良くできている」ということにすら気づかいない場合があると思われ、正直なところ「スズキ恐るべし」と感じた次第。
とにかく真剣に、誠実に自動車としての基本性能を追求したということが伝わってくる、素晴らしい車と言えますね。

軽自動車とそう変わらない価格帯ではありますが、軽という枠を外して設計しているためか軽自動車とはまったく異なる安定感と安心感、懐の深さを持っており(先日試乗したアルトワークスと比較したとしても)、軽にするかイグニスにするか迷っている場合は「迷わずイグニス」と断言できます。

LEDヘッドライトやLEDフォグランプ、LEDポジションランプを持ち、ヒルスタートアシスト、ブレーキサポート、レーン逸脱警報、誤発信抑制機能、ふらつき警報、先行車発信お知らせ機能(停車中にスマートフォンなど捜査する人には便利)など数々の便利機能を持っており、4WDではヒルディセントコントールまでも備えているという充実ぶり。
この価格でこれらの機能を持つ車(しかもハイブリッド)はまず他になく、スズキは新たなベンチマークを確立したと言っても良いかもしれませんね。

ランボルギーニ、AMG、アルファロメオ、VW、ジャガー、ベントレー、ルノー、ミニ、フェラーリ、マクラーレン、レンジローバー、スズキ、トヨタ、マツダ、スバル、ホンダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、BMWなどこれまで試乗してきた車のインプレッション、評価はこちらにまとめています。

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