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いい腕時計の見分け方を紹介する(4)。「文字盤の凹凸」「ゼンマイの持ち」「スクリュー(ビス)」

投稿日:2018/10/30 更新日:

| 腕時計の良し悪しはこうやって見分けている |

さて、これまでもいくつか紹介してきた「いい腕時計の見分け方。
これまでは「ペースの磨き」「エッジ」「文字盤と針とのクリアランス」「プッシュボタン/リューズ」「針の仕上げ」「文字盤のインデックス」「ベルト」「バックル」「文字盤の精度」を紹介してきましたが、今回は「文字盤の凹凸」「ゼンマイの持ち」「スクリュー(ビス)」について述べたいと思います。

いい腕時計の見分け方を紹介する(2)。「プッシュボタン/リューズ」「針の仕上げ」「文字盤のインデックス」

文字盤はブランドの技術力を端的に表す、小さな世界である

まず文字盤の凹凸ですが、これはそのブランドの技術力を(視覚的な部分で)もっともよく表していると考えていて、というのも文字盤はその腕時計の表情を作るのに重要な部分で、そこには様々な要素が含まれると考えているから。
「インデックス」についてはすでに触れたということもあり、今回考えてみたいのは「文字盤そのもの」。

文字盤の装飾だと、主なものはギョーシェ(彫り)、エンボス(凹凸)、エナメルなどが主なところですが、今回エナメルは(ぼくとは縁がないということもあり)除外したいと思います。

ギョーシェはより細く、複雑で、エッジがしっかりしているほどいい

ギョーシェ(ギョウシェ、ギヨシェとも)とは文字盤にある文様のようなものですが、これの発案者はブレゲだそう。
ギョーシェとは、要は細かい溝ですが、この溝が複雑で、細く、かつエッジがしっかりしているものほど技術力に優れると考えています。
かつては職人が「手で彫って」いたものの、現代では簡単に「金型」でも採用が可能になった技術でもありますが、金型で再現した場合、とうしても溝が太くなり、エッジも曖昧に。

よっていくつかのウォッチメゾンは今でも「美しさのためだけに」昔ながらの手彫りを行うことになり、金型による大量生産と手彫りとの間では見た目で大きな差があります。

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これについて、ぼくが優れた技術を持つと考えているのはカルティエ、ジャガールクルト、フランクミュラー、A.ランゲ&ゾーネ。

その逆はウブロ、ボーム&メルシエ、オメガ、ブライトリング、ルイ・ヴィトンIWCですが、IWCについては技術力がどうこうという問題ではなく、ただたんにドイツ的発想からなのか「無駄な装飾を施さない」、つまりシンプルに徹しただけ、という印象を受けます。
また、デザイン的にあえてギョウシェを用いない(とくにスポーツ系、実用系はギョウシェとの親和性が高くなく、よってロレックスもスポーツモデルではこれを用いない)こともあるので、ギョウシェがあればいいというわけではなく、ギョウシェを用いている場合は上記の要素に注意して見てみるといい、といったことですね。

エンボスで知られるのはオーデマピゲ

エンボスは文字盤に凹凸をつける加工を指しますが、これで有名なのはオーデマピゲ(タペストリー)とパテック・フィリップ。
これは一般に金型を用いるものですが、その金型の精度(と文字盤の素材も)がモノをいい、平面部分が「どれだけ平面か」、直線部分が「どれだけ直線か」、そしてエッジがピンと張っているかどうか、がその良し悪しを見分けるポイント。

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とくに押出加工をすると文字盤の平面部分が「歪む」ことがあり、そもそも歪みがないか、歪みが出てもそれを職人が「平面に」修正しているかどうかがお金と手間の差異ということになり、これがちゃんとできているのはいい腕時計だと言えます。

もちろん、オーデマピゲ、パテック・フィリップは比類ない仕上げを誇っています。

そのほか、スネイル、サンドブラスト、サンバースト仕上げも

他に技術力の良し悪しが出る、そして手が込んでいるかどうかがわかるのは「スネイル加工」「サンドブラスト加工」「サンバースト加工」。

スネイルとは円状に刻みを入れているもので、クロノグラフの「スモールセコンド部分」に使用されることも。
これは最近だとマシニング加工を用いるのでズレがないのは当然ですが、やはり溝の細さ、深さ、エッジについては工作機械の精度が問われることになります。

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サンバースト加工はロレックスがよく用いる手法で、放射線状に光が反射し、見る角度によって色味が変わるもの(画像はミルガウス)。
ロレックスはギョウシェを使用しないぶん、この加工を用いて文字盤に表情を持たせることが多いようですが、これは非常に細い線を、寸分の狂いもなく放射線状に、かつそれぞれの線は真っ直ぐにしないと再現できないもので、非常に高い技術力を要します。

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さらにロレックスだと、文字盤ではないものの、エクスプローラーⅡのベセルには「放射線状のヘアライン加工」を施しており、これは見落としがちではありますが、「すごい技術」だと言えますね。

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サテン、サンドブラスト加工は「ざらついた」加工とすることでシックさを演出しますが、これも「均一」に加工するのは難しく、技術力が低いと広い面積に施工するのは不可。
ロレックス・ヨットマスター(旧モデル)の文字盤に用いられたものや、最近だとオーデマピゲが「フロステッド」と称して用いているものが有名ですね。

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ゼンマイの持ちは見落としがち

意外と語られないのが「ゼンマイの持ち」。
これはパワーリザーブの時間ではなく、ゼンマイの巻き上げについて「残りわずか」となったとき、巻き上げが十分な場合と同じだけの精度を維持できるかどうか、ということ。

ウォッチメゾンであっても多くが自社製ではなくETA製のムーブメントを使用していますが、ETAの安価なムーブメントを使用している場合はゼンマイの巻き上げ状態によって精度が大きく狂うように思います。

たとえばよく動いた日は腕時計が進み、あまり動かずゼンマイの巻き上げが少なかった日は時間が遅れがちになる、ということですね。

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現在、ETAは「2020年にはムーブメントの供給を停止する」としており、よって多くのメーカーが自社内製にてムーブメントを切り替えつつありますが、これに伴い(最新技術の応用にて)こういった問題も解消しつつある模様。

ただ、技術力がないメーカーの場合は依然として「安価なムーブメントをどこからか購入」せざるを得ず、もしくは自社で無理やり開発した結果、「ゼンマイの巻き上げと精度」問題は解決されないままとなりそうです。

これは購入前に知ることが困難な現象であり、購入してしばらく使用し、かつ日差を測った場合のみに知りうる現象ではありますが、「針が止まる寸前まで、精度がきっちり出ている腕時計」はいい腕時計だと言えます。



ビスの形状、向きは意外と重要

腕時計に使用されるビス(スクリュー)は意外と重要だ、とぼくは考えています。
つまりビスの形状にこだわっていて、その向きにもこだわっている腕時計はいい腕時計である、と考えています。

ちなみにオーデマピゲ(ロイヤルオーク・オフショア)はビスの向きが(締め付けトルクにかかわらず)ちゃんと揃う設計で、すべてのビスが中央に対して同じ角度を持っています。

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こういった「ビス/スクリュー」を使う腕時計は多く、しかしこの向きが揃っているメーカーは非常に少なく、たとえばウブロはビスに「HUBLOT」の「H」を模した、デザイン性の高いビスを持つものの、そのビスの向きが「バラバラ」。
一旦気にしはじめると、けっこう気になりますよね。

ベル&ロスは、以前はビスの向きがバラバラだったものの、最近の製品だとちゃんと向きが揃っていて、これはやはり「そこに注意した」からだと思います。
ただし締め付けを行うパーツなので、こういった感じに「向きを揃える」のは非常に困難であることは想像に難くなく、よって設計段階からこれができている腕時計は「いい腕時計」。

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ちなみにカシオG-SHOCKでは、安価なモデルは「+」のヘッドを持つ安っぽいもので、上級モデルになるとビスのヘッドもトルクスや「Y」など特殊な形状を持つものへと変更され、かつその仕上げ、カラーにもこだわりがもたらされています。
つまりGショックではモデルのヒエラルキーとビスの仕様(グレード/デザイン)は連動しており、ビスを重要視している、ということがわかります。

「たががネジ、されどネジ」。工業製品における構成部品のデザイン(腕時計、自動車)について考える

ちなみに安価なモデルはこんな感じですが・・・

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高級モデルになるとこう。
さらにモデルによってデザインにマッチしたカラーを採用するなど、スクリューもデザインの一つとして取り入れていることがわかります。

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そのほか、リシャール・ミルもスクリューに対しては相当なこだわりを持っていることで知られますね。

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リシャール・ミルの展示会に行ってきた。これが1本2億5000万円の腕時計だ

 

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