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【試乗:HONDA e】これは完全に新世代のプレミアムカー!ホンダeは2.5%のイノベーターに向けたガジェットだ

2020/08/30

| ホンダはもっと「ホンダeはプレミアムカー」だということを前面に押し出すべきだと思う |

ホンダ待望のEV、「Honda e」に試乗。

正確にいうと、ホンダの提供するカーシェアリングサービス「Honda EveryGo」にてお金を払って借りてみた(2時間半で2,000円)ということに。

EveryGoについては別の機会に触れるとして、今回はホンダeに特化した内容をお届けしたいと思います。

ホンダeはこんなクルマ

ホンダeはホンダ初のEVということになりますが、そのルックスは初代シビックをイメージしたといい、いわゆる「レトロフューチャー」。

クリーンでキュートといったイメージで、ボディサイズそのものも全長3895ミリ、全幅1750ミリ、全高1510ミリとコンパクト(全長の割に全幅が大きい)。

グレードは「ホンダe」と「ホンダe アドバンス」の2種類で、前者はスタンダードモデル、後者がハイパワーな豪華版。

ホンダeの出力は136PS、一回の充電あたり走行可能距離は283km(WLTC)、価格は451万円。

ホンダe アドバンスだと出力は154PSとなり、しかしその代償として航続距離は259kmとやや短くなって、価格はもちろん上昇して495万円へ。※バッテリー容量は両方とも35.5kWh

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ホンダeはベースモデルであっても機能・装備が充実していて、Honda SENSINGはもちろん、件のワイドスクリーンやサイドカメラ、フラッシュアウターハンドルといった装備のほか、スカイルーフやステアリングヒーター、後退出庫サポートといった機能が標準装備となっています。

上位グレードの「アドバンス」になると、ここへHondaパーキングパイロットやマルチビューカメラシステム、プレミアムサウンドシステム、センターカメラシステム、17インチアルミホイールが追加されることになり、さらに快適性や機能性が充実することに。

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なお、ベースモデルの451万円という価格は日産リーフ(航続可能距離322km)の332万円よりも100万円以上高く、数字だけ見ると「価格が高いのにバッテリー容量が小さく、距離を走れない電気自動車」。

ただしホンダは、ホンダeについて、リーフのように大量に売ろうとはそもそも考えておらず、プレミアムカーとして販売したいと考えているようで、フラッシュアウターハンドル、サイドミラーカメラシステム、ダッシュボードに並ぶ5つのスクリーン等の”コストのかかった”装備を持ち、かつ「そもそも生産キャパシティが限られており、大量に作れない」とも公言しています(そのために受注方法は特殊であり、何回かに分けて行われる)。

よって、ホンダは「どう頑張っても電気自動車は高くなるのだから、であれば日産リーフやフォルクスワーゲンID.3のように無理に価格を下げず、高くなっても買ってもらえるような装備を盛り込み、他社と差別化をしよう」「数が出なくとも、利益が出る(もしくは赤字が小さい)電気自動車を作ろう」と考えたのだと推測しています。

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そうして出来上がったのがホンダeということになりますが、見ての通り細部にまでこだわった作りを持っていて、ターゲットとしては「ランニングコストを抑えたいから電気自動車を買う」という人ではなく、「高くても自分が気に入ったものや、先進的なモノを買う」、つまりイノベーター層だと思われます。

参考までに、「イノベーター」とは、イノベーター理論において5つにわけられた消費者グループのうち、「新しいものに真っ先に飛びつく」2.5%の人々を指していて、その次が13.5%の「流行に敏感で、自分で情報を収集して購入を判断し、新しい商品やサービスに積極的にお金を払う」アーリーアダプター層、次いで34.0%のアーリーマジョリティ層、レイトマジョリティ層(34.0%)、ラガード層(16.0%)と続きます。

なお、ぼくとしては、現段階における電気自動車は「アーリーアダプター」までにしか普及しないだろうという印象があり、つまり多くても16%くらいの人にしか購買対象として映らないと考えていて、いかにここから「普通の人」に買ってもらうようにするか、というのは各社の戦略によるところなのかもしれません。

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まずはホンダeの外観はこうなっている

まずホンダeの実車を見て驚くのは、おどろくほど「アーバンEVコンセプト」の雰囲気を再現している、ということ。

アーバンEVコンセプトは、未来からそのままやってきたようなツルンとしたクリーンな外観が特徴でしたが、ぼくは「これを再現するのは難しいだろう」と考えていたわけですね。

というのも、実際のクルマには必ず各パーツの接合部に段差が生じることになり、アーバンEVコンセプトのウリでもあった「ウインドウとピラーとのフラッシュサーフェス化」は実車では実現できず、一般的なクルマのように段差がどうしてもできてしまい、これによってアーバンEVコンセプトの市販時には「全く普通のクルマになるだろう」と考えていたわけですね(アーバンEVコンセプトは、このフラッシュサーフェスを実現できないとなると”ほかに大きな特徴がなく、普通のクルマ”でしかなくなる)。

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ただ、ホンダeは驚くべきレベルでフラッシュサーフェス化が実現されていて、これはその価格1億2000万円のアストンマーティン・ラゴンダ・タラフと同じレベル(ラゴンダ・タラフは、サイドをフラッシュサーフェス化するためにBピラーをガラス化している)。

そしてウインドウ周辺にかかわらず、とにかく段差が小さいのがホンダe。

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フロントドアハンドルはフラッシュマウント。

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後部ドアハンドルもピラーに埋め込み。

この「後部ドアハンドルをピラー内に隠す」クルマは珍しくはなく、しかしフラッシュマウントしてしまったクルマはホンダeくらいのものかもしれません。

なお、ウインドウモールはグロスブラック仕上げ。

そのほか車体の黒い部分は全てグロスブラックとなり、安っぽさが微塵も感じられないデザインを持っています。

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そしてドアミラーのかわりには「サイドカメラ」。

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なお、ドアはサッシュレスですが、これはぼく的にかなり大きな評価ポイント。

サッシュレスドアはコストや強度の面では不利ではあるものの、見た目のプレミアム感は抜群であり、これを採用しているというだけで「そのメーカーの、そのクルマに対する考え方」がわかろうというものです。

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ホンダeの内装はこうなっている

そしてこちらはホンダeの内装。

シンプルかつモダン、そして落ち着きのあるインテリアです。

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モニターは5連。

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ダッシュボードやセンターコンソールはツヤを抑えた、落ち着きのあるウッド。

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シートやシートベルトはちょっとオシャレ。

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ザックリとした生地に飾りステッチが入ります。

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サイドカメラの映像はダッシュボード両端に。

意外と違和感はなく、すぐに慣れます。

ちなみにウインカーを出すと、その側のモニター内にクルマのおよそ1台分をあらわすインジケーターが表示され、映し出されたクルマとの距離が測れるようになっています。

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ホンダeに乗ってみよう

そして実際にホンダeに乗ってみた印象ですが、一言でいうと「あまりの普通さに驚いた」。

ホンダeはもちろんEVであり、およそEVにはEVなりの特殊さがあるものの、ホンダeはそれを押さえ込むことで「普通のガソリン車」同様に乗れるような味付けを行っている、という感じ。

ホンダeは「普通」に運転できる

まずはドアを開けて乗り込みますが、そこで気づくのは「意外とシート位置が低い」ということ。

EVなのでフロアにバッテリーを敷き詰めているはずで、そのぶんフロアが高くなるはずですが、さほど座面が高くないということですね。

システムの起動はダッシュボード右(ステアリングコラム右)にあるスタート/ストップボタンを押して行いますが、始動前には心臓の鼓動のようなペースで点滅。

ブレーキペダルを踏みながらシステムを起動させるとモニター類が目覚め、これで走行可能な状態となり、その後にはDレンジに(ボタンを押して)入れてアクセルを踏めば走り出すことが可能です。

走ってみた印象では、アクセルをぐっと踏み込んだ際のトルクの立ち上がりを意図的に抑えているように思われ、これはガソリン車からの乗り換えでも違和感を感じないように、という配慮からなのかもしれません。

そして同様の配慮といえば「回生ブレーキ」で、こちらも普通のガソリン車と同様のフィーリングでドライブ可能(回生ブレーキの効きを強くし、ワンペダルドライブもできる)。

このあたり、もしかすると「知らなければ、電気自動車だと気づかない」人もいるんじゃないかと思えるレベルです。

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ホンダeは非常に快適

ただ、実際に走ってみるとEVらしく車内は非常に静か。

「EVなんだから当たり前じゃない」と思うかもしれませんが、多くのEVは航続可能距離を伸ばすために軽量化を図り、遮音材や防振処理を簡略化する傾向にあります。

よって、「停車していると静かだが、走り出すとロードノイズを拾って騒音レベルは普通の車と同じか、それ以上」というケースも。

さらに、やはり軽量化を目的としてガラスを薄肉化している場合もあって、こういったクルマだとやはり車外のノイズを拾うことになるわけですね。

しかしホンダeの場合は比較的ガラスも厚く(ドアを開けるとわかる)、制振・防音もしっかりしていて、止まっていても、そして走っていてもやはり快適ということになります。

加えてサスペンションもかなりソフトな仕上がりを持っていて、段差や路面のうねりにおいても車内に衝撃を伝えることははなく、しかしロールやピッチはよく抑えられているように感じます。

ただ、ロールに関してはダブルレーンチェンジの際に若干の揺り戻しがあるものの、これはじゅうぶん許容できるレベル。

しかしながら、速度を上げてゆくとそのロールが大きくなる傾向もあり、高速走行時にはこれがもっと大きくなるのかもしれません。

そのほか、スタート時や停車直前のマナーにも優れ、ヒルスタートアシストからのロック解除、完全停止する前の「最後のカックン」もなく、多少ラフな操作をしてもその快適さは失なわれないままで、そうとうにしつけのいいクルマだと言えそうです。

試乗時は炎天下において、さらに冷房をほぼ最強にした状態(EVにとってはかなりキツい環境)でしたが、メーター上に表示される走行距離に対して、実際の走行距離のほうが少なかったので、比較的”メーカー公称値通りの”航続距離を出せるのかもしれません。

結局どうなのホンダe?

正直言って、ホンダeは見た目、走り、快適性、質感といった「ほぼ全て」において想像のずっと上だったクルマ。

特に質感の高さは特筆もので、外観だと「樹脂剥き出しのパーツ」はひとつもなく、ブラックに見える部分はすべてグロスブラック仕上げ。

かつパネル同士のチリもタイトで、おそらくは「オーナーであっても、見るたびに感心するレベル」。

そしてサイドカメラやデジタルルームミラー、内装だと大きな液晶パネルといった先進的な装備も持っていて、「レザーシート」のようなわかりやすい豪華さこそないものの、インテリアはシックでシンプル、なによりも心地よいデザインとフィニッシュを持っています。

快適性や静粛性においても非常に高いレベルを実現しており、これはEVでないと絶対に到達できないレベル。

つまりホンダは「EVでしかできないこと」「EVだからこそできること」「EVだからこそやるべきこと」をしっかり理解し、そこに費用を投じたということになりそうですが、それらはしっかりとぼくの心に届いていて、「今、EVを買うならこのクルマしかないな」とも考えています。

加えて、「乗り出し500万円のクルマ」としても非常に競争力が高く、このデザイン、この仕上げ、この装備のクルマをこの価格で買えるのであれば、むしろ安いと断言できるほど(ガジェットとしても面白い製品でもある)。

あまりホンダはこのクルマについて「プレミアムカー」ということを押し出していないものの、現段階で世に出ているクルマの中で、「最もプレミアムな部類」というのも間違いなく、しかしこのままだとホンダeの魅力が理解されることなく、単に「高いクルマ」ということで売れずに終わるんじゃないかというのはちょっとした懸念です。

逆に、気になるのは実際に使用した際の航続可能距離と「あおり対象」とならないか。

航続可能距離については、冬場にもう一度、しかし1日借りてみて「ヒーター最強」状態でテストするしかなさそう。

「あおり運転」については、ぼくの経験上こういった「可愛い」クルマほどその被害に遭いやすく、おそらく避けることはできないだろうな、とも考えています(同じルートを、同じ時間に、同じように走ったとしても、今まで乗ってきたクルマの中では、コンパクトカーほどあおり運転の対象になりやすかった)。

参考までに、サイドカメラシステム、デジタルルームミラーは相当に優秀で、その解像度はかなり高く、そして明るく、おそらくは通常の鏡よりも「はっきり」状況を確認できます。

加えて、カメラの取り付け位置も「ベストポジション」であると見え(当然と言えば当然)、ほぼ死角はなさそうです。

ただ、最初慣れなかったのは、おそらく安全上の理由だと思われますが、「実際よりも周囲の車が近くに見えること」。

そのため、モニターに写る周囲のクルマを見ると「オイオイ近づきすぎじゃないか」と思うものの、肉眼で見ると十分に距離が空いている、ということも(近くにいるように見えた方が、ドライバーとしては安全に注意する可能性が高い)。

とくにデジタルルームミラーにその傾向が顕著で、かつ実際よりも拡大率が高いのか、真後ろにいるクルマに乗る人々が車内で何をしているのかがはっきり確認できるほどです(ほかメーカーのデジタルルームミラーでは、ここまでくっきりはっきり様子を見ることができるという印象はなかった)。

そのほかの画像はFlikrのアルバム「HONDA e」に保存しています(156枚)。

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