
| ランボルギーニのデザインは「けして過去を振り返らない」 |
ランボルギーニの魅力は「過去にとらわれず新しい時代を切り開く」ところにある
ミウラ、カウンタック、ディアブロといったレジェンドを抱えるランボルギーニですが、そのデザイン哲学は「常に未来志向」。
モデルごとのデザインは大きく異なるものの、一貫して「シャープで攻撃的な印象」を維持していることも大きな特徴です。
この未来志向を牽引しているのが、ランボルギーニのチーフデザイナーでありチェントロスティーレ(デザインセンター)責任者のミッチャ・ボルカート氏ですが、彼は今回、英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにてカーメディアのインタビューに応じ、テメラリオのデザイン裏話と今後の展望を明かしています。
レーシングカーが市販車のデザインに与える影響
ミッチャ・ボルカート氏によれば、近年のランボルギーニでは市販車とレースカーの開発チームが密接に連携しており、互いにアイデアを共有しながらデザインを形成しているとのこと。
たとえば、新型テメラリオGT3では、市販車に由来する六角形のライトやリアウイング、Sダクトといった意匠が踏襲されていて、それらの要素もまた、逆に「レーシングカーからテメラリオのデザインにフィードバックされた」ものだと語ります。
「我々には、テメラリオの標準仕様、軽量パッケージ、GT3仕様があり、これら全てがテメラリオのレガシーを形成しています。」
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かつてレーシングカーというと、「市販車をのちにレース仕様へと改装する」という手法が主であったものの、近年では「ロードカーを設計する際、レーシングカーに求められる要件を盛り込み、のちに改装する範囲を小さく留めるよう」考慮する例が増えており(GR GT3にいたっては、先に”レースで勝てる”レーシングカーを設計し、そのレーシングカーを市販モデルへと改装して市販するというプロセスを経ているとされる)、ランボルギーニだとウラカン時代からこの方法を取り入れています。
こうした手法を採用することで、ロードカーのパフォーマンスも向上し、レーシングカーの製造コストも低くなり(いままでは完成したロードカーを分解し手作業にて改造していたものの、ロードカーとレーシングカーを同じ生産ラインで製造できるようになる)、そしてレーシングカーを手にするプライベートチームにとっても「車両コスト、維持コスト」が下がるので「いいことづくめ」。
ただ、これには「モータースポーツに参戦する」という前提が必要なため、この部分のハードルをクリアしておく必要があることには留意しておかねばなりません(ある意味では、ここがもっとも高い障壁なのかもしれない)。
さらに近年ではロードカーとレーシングカーに用いられる技術が「接近」し、より高い効率性を求めるという意味では両者に求められるエアロダイナミクスも”共通”することとなるうえ、モータースポーツをブランディングの一部として組み込むことが一般化した現代においてはデザインすらも「市販車と競技用車とで」一致させる必要が出てきます(実際、BMWのル・マン用レーシングカーには、レーシングカーには不要だとも考えられるキドニーグリルが備わる)。
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そういった意味において、現代ではかつてないほどレーシングカーとロードカーとが接近しているという印象もありますが、これはランボルギーニにとっても同様で、ミッチャ・ボルカート氏いわく「ランボルギーニでは、デザイナーとレーシング部門の間に”争い”は存在しない」。
彼自身がカートやサーキット走行を趣味とする“走れるデザイナー”であり、空力設計に深い理解を持っているため、エンジニアとの信頼関係が構築されているのだと語ります。

Image:Lamborghini
レースカーはランボルギーニというブランドの「アンバサダー」
そして「争い」が生じないもう一つの理由はランボルギーニが「モータースポーツを、ブランド価値を高めるためのアンバサダー(大使)である」と考えているということ。
「レースカーは、世界中のサーキットでブランドを代表する“大アンバサダーです。よってデザイン監修やリバリー設計、イタリア国旗の使い方にも一貫性を持たせています。」
こういった「レーシングカーもまた、ランボルギーニを代表し、牽引する」という考え方に基づいてレーシングカーに対して最大限の注力を行っており、新型LMDhマシンでは、レヴエルトに採用される“Y字”モチーフを前後に大きく配置するなどブランドらしさを演出しているわけですね。
Image:Lamborghini
「イースターエッグ」が次期モデルのヒントに?
そして冒頭で語ったように、「レーシングカーのデザイン」もまた市販車に影響を与えており、ミッチャ・ボルカート氏は、テメラリオのデザインにはすでにエッセンツァSCV12で使われたモチーフ(六角形やボディサイドの造形など)が隠されていると語ります。
実際のところ、エッセンツァSCV12の「ヘキサゴン形状のライト」については・・・。
テメラリオのデイタイムランニングランプへ。
エッセンツァSCV12のテールランプもまた・・・。
テメラリオへ。
そのほか、サイドのボディラインもテメラリオに影響を与えていると説明されています。
ミッチャ・ボルカート氏はランボルギーニCEO、ステファン・ヴィンケルマン氏の「フロントグラスを大きく、バックミラーを小さく」という一言を非常に気に入っているといい、これは過去を見るより未来を見ろ、という意味。
よってステファン・ヴィンケルマンCEOは「リバイバルは行わない」と述べていますが、これについてミッチャ・ボルカート氏も全面的に賛成しており、今後のランボルギーニはロードカーとレーシングカーとのデザインを密接に関連させつつ、相互にインスピレーションを取り入れたデザインを行ってゆくこととなりそうですね。
「我々の哲学は“未来を見据えること”。ミウラやディアブロには戻らない。次のランボルギーニを創り出すのが我々の使命です。」
ミッチャ・ボルカート
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参照:CARBUZZ