| 名前の由来が明確だと、さらに覚えやすい |
さて、英国にてちょっとおもしろい統計が公開。
簡単に言うと、クルマの名称について、「番号やアルファベットだけのものよりも、名前が与えられた車のほうが記憶されやすい」というもの。
つまり、同じSUVであっても、アウディ「Q5」より、ポルシェ「マカン」のほうが覚えてもらえる確率が高くなるということですね。
一部自動車メーカーは「名前」へとシフト
なお、こういった事実は一部自動車メーカーも把握していたようで、キャデラックも「これからはCT6やXT5といった無機質な名称から、エスカレードやエルドラドといった”名前”を与える方向にシフトする」と発表。
さらにマクラーレンも「P1」「720S」のような数字とアルファベットの羅列から「名前」をその車名として与えると発表し、たしかにその後発表されたのは「セナ」「エルヴァ」「スピードテール」「セイバー」、そして最新モデルでは「アルトゥーラ」。※「GT」だけは例外のようだ
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やはり「名前」があったほうが覚えやすい
そこで今回公開された調査結果ですが、「スモールカー」「ファミリーカー」「SUV」だとこういった感じ。
どの程度そのクルマを覚えているかという人の比率を表したもので、スモールカーだとシトロエン「C1」は25%、フォード「フィエスタ」だと倍の50%。
ファミリーカーだとマツダ「3」は21%、フォルクスワーゲン「ゴルフ」は47%。
そしてSUVだとボルボ「XC90」が32%、レンジローバー「イヴォーク」が47%。
そのクルマが人気不人気という差はあるかもしれませんが、おおよそ同じような結果となっているので、冒頭で掲げた傾向に間違いはなさそうです。
そして次は「名称のタイプ」。
「名前」「数字だけ」「アルファベットだけ」「アルファベットと数字との組み合わせ」という種別にて調査を行っていますが、やはり「名前」を持つクルマは記憶に残り(58%)、次は「数字とアルファベット(23%)」、ついで「数字(12%)」、最も覚えにくいのが「アルファベット(7%)」。
フェラーリとて、その例外ではなかった
そしてこういった傾向はフェラーリとて例外では内容で、たとえば「エンツォ」「カリフォルニア」「ラ・フェラーリ」といった名前を持つモデルに比較すると、「812」「488」「F8」といったモデルの記憶率は半分程度にとどまっています。
ポルシェは「数字」と「名前」を使い分け
ちなみにポルシェはスポーツカーモデルに「911」「718」「918」と3桁の数字をモデル名として与え、4ドア(5ドア)モデルにはタイカン、カイエン、マカン、パナメーラといった名前を付与するという規則を採用しています。
なお、ポルシェやフェラーリが一部モデルに「名前」を与えるのは、そのモデルからなんらかのイメージを膨らませて欲しいと考えているからだと思われ、たとえばカリフォルニアであれば「カリフォルニアの陽光」を、ポルトフィーノであれば「(イタリアのリゾート地である)ポルトフィーノの美しさや優雅さ」を連想してほしいと考えてるのかもしれません。
一方、812や488、F8にもそれぞれの意味が存在するものの、スーパースポーツに関しては、イメージよりもその数字的な意味合いの方を重視しているのでしょうね。
ポルシェの場合、「カイエン」では「アフリカ原産のカイエンペッパー」がその由来で、アフリカ=エキゾチックな旅を連想させることがその目的です(同時に発売されたフォルクスワーゲン・トゥアレグも、遊牧民である”トゥアレグ族=旅や冒険”をイメージ)。
反面、スポーツカーレンジにおいては、「911」「718」という、過去のアイコニックなクルマそしてレーシングカーの名称を引き継いでおり、こちらも「イメージ」よりは「ファクト」を重視したのかもしれません。
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欧州と米国ではクルマに対する捉え方が異なる
なお、一般に欧州ではクルマに「数字」「アルファベット」「数字+アルファベット」を与える例が多く、これは「クルマをモノとしてしか捉えていないから」とも言われます。
ポルシェやルノーだと「設計番号」もしくは「発売順」へと機械的に番号を割り振っていた時期もあり、BMWやメルセデス・ベンツ、アウディはそのクラスを表す数字やアルファベットを割り振るだけで、これはまさに「無機質的」。
こういった傾向から、欧州ではクルマを工業製品としてしか見ておらず、そもそも現地の人々も、クルマに対して愛着を持つ例が少ないという話もあるようです(イギリスだけは傾向が異なると思う)。
一方のアメリカだと「カマロ」「マスタング」「コルベット」といった名前が与えられるのが一般的で、多くの人がクルマに愛着を持つことでも知られます。
つまり、欧州ではクルマを「移動や運搬の道具」、アメリカでは「生活を豊かにしてくれるパートナー」という捉え方がなされているのかもしれません。
ただ、現代ではいずれのクルマも世界中で販売されることが多くなり、こういった「習慣」が当てはまらなくなってきているものの(アメ車でも、欧州で売りたい場合は数字とアルファベットになったりする)、やはりぼくとしては「名前」を持っていたほうが感情移入しやすいとも考えています。
ボクはクルマを単なるモノとして考えたくはない
ぼくのクルマに対する接し方は「アメリカ型」であり、単に移動のための道具ではなく、愛着を持てるパートナーだとも考えています。
その意味では、無機質な数字とアルファベットの羅列よりも、ちゃんとした名前があったほうがいい、とも思うわけですね(自分でクルマに名前をつけるようなことはしないけれど)。
ぼくは白いクルマには「99」というナンバーをつけることが多いのですが、それはTOTOの楽曲「99」から。
この曲は未来の管理社会について歌ったもので、その世界では全ての人間が感情をコントロールされ、皆同じ白い服を着て、名前もなく数字のみで呼ばれる社会であり、しかしその歌の主人公(男性)は、本来制御されていて生まれるはずのない「愛」という感情を「99番」の女の子に抱いてしまい、この感情はいったい何だろうという内容。
よってぼくは、白い車には「99番の女の子」になぞらえたナンバーを与えているのですが、やはりそのクルマに感情移入できるかどうかは「そこにドラマがあるのかどうか」だと考えていて、人を「数字」で呼ぶべきではないと考えているのと同様に、クルマにも「名前」があったほうがいい、とも考えているわけですね。
参照: Vanarama