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ロールスロイスは「はみ出し者、先見者、反逆者」のための車だった!ロールス自らがその歴史を語り、ブラックバッジは「破壊者だ」と語る

ロールスロイスは「はみ出し者、先見者、反逆者」のための車だった!ロールス自らがその歴史を語り、ブラックバッジは「破壊者だ」と語る

| てっきりロールスロイスは「人生アガリ」の人が乗る保守的なクルマだと思っていたが |

どうりでロールスロイスの顧客の平均年齢が若いわけだ

さて、ロールスロイスが「ブラックバッジ」シリーズを積極的に展開するための新しいキャンペーンを展開開始(現在、ブラックバッジはロールスロイスの販売の27%を占める)。

あわせてロールスロイスの歴史、ブラックバッジのルーツに焦点を当てたコンテンツを公開しています。

まずはNFT(non-fungible token)クリエイター/アーティスト/イラストレーターであるメイソン・ロンドン氏と協力して、イラストやアニメーションを制作し、その一部を公開していますが、ロールスロイス自身は、自社をして「破壊者」と表現していることには注目を要するところかもしれません。

なぜロールスロイスは「破壊者」なのか

ロールスロイスは今のぼくらから見ると「保守的」「伝統」「安定・安心」といったイメージがあるものの、その創業時から現在に至るまでの歴史を見た場合、実は「常に既存概念を壊し続けてきた」ようです。

ロールス・ロイスは、「ヘンリー・ロイスとチャールズ・ロールズ」の二名によって創業されていますが、ヘンリー・ロイスは、貧困や困窮、正規の教育を受けていないという逆境を克服して「世界最高の車」を生み出す世界的なエンジニアとなり、その功績が認められて爵位を授けられるまでに。

一方でチャールズ・スチュワート・ロールズは、貴族として生まれ、ケンブリッジ大学で教育を受けており、その裕福な家庭環境から「楽で怠惰で特権的な人生」を選ぶこともできたそうですが、それをよしとせず、モータースポーツへの挑戦や航空機の開発という、”油汚れや、日常的な危険”にさらされることを選び、両分野のパイオニアとなっています。

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つまりロールス・ロイスの創業者たちは、それぞれの出自・経歴が大きく異なるにもかかわらず、それぞれの立場や環境にとらわれることなく、それらを破壊し、または克服し、一歩踏み出し挑戦することで「新しいことを成し遂げた」わけですね。

その原動力は何かを成し遂げたいという、自己表現に対する欲求だったのだと思われ、これは人間にとって基本的なものだと思われます(人に認められたという承認欲求ではなく、単に自分の限界を破りたいというチャレンジングな人々)。

つまりロールスロイスの創業者は、限界を突破し、可能性を再定義し、既成概念に挑戦してきた人たちで、その集大成としての製品がロールスロイスのクルマであり、これがロールスロイスいわく「顧客が惹かれる理由のひとつ」。

ロールスロイスの創業者は、20世紀初頭の社会の規範や期待に縛られることを拒み、 自由な精神、創造的な心、既成概念に挑戦しようとする心を持ち続け、 彼らの勇気、ビジョン、そして限界を超えようとする意志こそが、彼ら自身を、そして今日のロールスロイスを作り上げたわけですね。

参考までに、ロールスロイスの顧客たちは、安定よりも変化を好む傾向があるといい、つまり顧客は明確に、もしくは知らず知らずのうちでもにロールスロイスのバックボーンを理解していると考えられ、多くの「自ら成功を勝ち取った者」がロールスロイスを好むこと、そして意外や「若い」という平均年齢層もそれを証明しているのかもしれません(むしろ、安定を好む人にロールスロイスは向かないのかもしれない)。

ロールスロイス・ファントム
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ロールスロイス「ブラックバッジ」は、破壊社の精神を極限まで表現している

そしてロールスロイスは、ブラックバッジシリーズについて「破壊者のためのロールスロイス」と表現。

ロールスロイスそのものが「常に異端児、先見者、象徴主義者といったユニークな人種を魅了してきた」という歴史を持っていて、古くは「馬車が当たり前だった時代に、自動車を選ぶという傾奇者」に選ばれる存在だったり、近代のモデルラインアップについても、ゴーストを投入することで客層を(王侯貴族からビジネスリーダーへと)広げ、最近だとカリナンの発売によってさらに(これまでとは異なる)客層へとリーチしています。

こういったところを見ても、やはりロールスロイス自身が「社会通念や、自らの歴史を破壊してきた」ということがわかりますが、それをさらに推し進めたのが「ブラックバッジ・シリーズ」。

これは個性主義、自己表現、創造性、象徴主義、さらには明白な反逆という、ロールスロイスの創業以来の歴史を端的にあらわしたもので、現代の顧客に提供するユニークな提案だといいます。

誰も夢見ない、あるいはあえて試みない方法で物事を行い、世界を形成するはみ出し者、先見者、破壊者、そして反抗的な性質を共有する人々に向けたシリーズだというわけですね。

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なぜ「ブラック」なのか

そしてロールスロイスは「なぜ”ブラック”なのか」についても説明を行っており、まず「ブラックは長い間、力強さ、強さ、権威を連想させる色であり、エレガンスと自信を表すから」。

ロールスロイスの歴史において「ブラック」を用いた個性的なオーナーの例は少なくないといい、いくつか例をあげていて、まずは1933年のファントムIIコンチネンタル。

1930年、ヘンリー・ロイスの依頼を受けたデザイナーのアイバン・エヴァーンデンは、コンチネンタルの長距離ツーリングに特化した実験的なファントムIIコンチネンタルを設計し、26EXと命名したそうですが、これはショートシャシーとクローズドカップルの4人乗りサルーンボディを持ち、重量配分を最適化するために2つのスペアホイールをラゲッジコンパートメントの後ろに垂直に設置するという仕様を持っています。

この車はビアリッツで開催されたコンクール・デレガンスに展示され、そこでグランプリ・ドヌールを獲得することになりますが、この勝利を受けて、ロールス・ロイスは26EXと同じ機械・構造的特性とコーチワーク全体の寸法を持つ「シリーズ」モデルを発売することを決定し、コーチビルダーやオーナーが自分の好みのデザインに対応できるようにした、と言われます。

つまりはひとりのオーナーがロールスロイスの新しい方向性を切り開いたということになりますが、これは「スピリット・オブ・エクスタシー」同様の例でもありますね(これもやはり、一人の顧客のオーダーからはじまっている)。

さらに、1933年にサミュエル・コックスヒル氏のために製作された94MYは、ロンドンのコーチビルダー、ガーニー・ナッティング社が得意とした「オーエン・フィックスド・ヘッド・クーペ」と呼ばれるボディワークを採用しており、これは調整可能なフロント・バケットシート、ツインワイパー、サイドウィンドウの後ろに取り付けられた方向指示器など、当時としては珍しく、長距離のコンチネンタル・ツーリングをよりリラックスして楽しむというコンセプトを持っています。

デザイナーのアイバン・エヴァンデンは「良い車の基準は、一日中運転していても、最後には新鮮でリラックスしてディナーを楽しむことができることだ」とも語っていますが、これを見事に体現したクルマということになりそうですね。

そして1959年にシルバーレイスに代わって登場したのがファントムVですが、これは大型化されたボディを持つため主に運転手付きの車として使用され、ごく少数のボディを除いてリムジン仕様になっていたほど。

ほとんどのボディはブラックで仕上げられ、フォーマルな場での使用か、富裕層のプライベートな使用に限られていたそうですが、1960年9月に納車された「5AT30」はこの例外でもあり、この車両のオーナーは、ジョージ5世とメアリー王妃の三男であり、エリザベス2世の叔父にあたるグロスター公爵。

同公爵は車体の水平面をマットブラック、垂直面はグロスブラックという塗装を指示し、これは一般的な常識を覆すものであったといい(今でも先進的だと思う)、さらには標準よりもずっと小さいバックライト、大型のフォグランプ、ドアに取り付けられたドライビングミラー、リアウィンドウのスライディングシャッター、2つのステファン・グレーベル製スポットライト等があり、当時もっともエレガントなロールスロイスと言われたようですね(これもまた、同公爵の型破りなオーダーによって実現した仕様でもある)。

ちなみに、記録が残る範囲では、はじめて「傘立て」と装備したロールスロイスだとされ、これも現在に至るまで受け継がれる仕様となっています。

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そのほか、ジョン・レノンが1964年に注文したファントムV(5VD73)も外すことはできず、これはメイデンヘッドのR.S.ミード社による架装で、内外装すべてをブラックにてオーダーし、通常はクロムプレートやステンレススチールで仕上げるブライトワークもすべてブラックにするという、現代のカスタムシーンで用いられる手法を(57年も前に)取り入れています。

さらにはホイールディスクやバンパーを含むすべての黒のグロスペイントが施されていたそうですが、「パンテオングリルとスピリット・オブ・エクスタシーのマスコットだけは」ロールスロイスの意向によりクローム仕上げのままだった、とのこと

もちろんウインドウ類もブラックで、ジョン・レノンは1965年のローリング・ストーンズ誌のインタビューに対し、この仕様について 「帰りが日中でも、車の中はまだ暗いから、窓を全部閉めてしまえば、まだクラブの中にいるようなものだからね」と答えています。

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ロールスロイス「ブラックバッジ」はさらに進化し続ける

こういった例を見るに、ロールスロイス自身が「伝統を破壊し続けてきた」こと、そういった姿勢に惹かれる人々がロールスロイスを購入し、さらには自己表現の手段としてカスタムを行ってきたということがわかりますが、近代の「ブラックバッジ」はそういった過去の事例を取り入れたモデルだとも考えられ、そしてこのブラックバッジを(ロールスロイス自らが)反逆者のためのクルマと呼ぶのもうなずけますね。

ロールスロイスは今後あたらしいブラックバッジを続々発表することになるかと思われ、それらもまた「既成概念を破壊する」クルマであり、新しい価値観を見せてくれるものと思います。

なお、今回公開された「あたらしいブラックバッジ」を示す画像を見ると、「寿司、レコード、スニーカー、アート、バー」という要素が見られ、ここからもロールスロイスが「伝統にとらわれず、新しい方向性を目指している」ということが伺えます。

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参照:RollsRoyce Motorcars

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