| いつ乗ってもポルシェのミドシップモデルは楽しくて仕方がない |
同一世代であったとしても、ポルシェが行う毎年の「進化」には感心せざるをえない
さて、ポルシェセンター北大阪さんにて718ボクスターTに試乗させていただいたので、その際の印象を紹介したいと思います。
なお、今回試乗した718ボクスターTは先日ショールームに展示されていた個体で、それをデモカーとして登録したということになります。
ボディカラーは992世代の911GT3にてはじめて採用された「シャークブルー」、そして「T」モデルならではのアゲートグレーのアクセントが入っており、さらにはスポーツシャシーの採用にて2センチ(標準モデルより)下がった車高がなんともナイス。
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ポルシェ718ボクスターTはこんなクルマ
そこでまずこのポルシェ718ボクスターTについて説明しておくと、ポルシェにおける「T」は「ツーリング」を意味しており「過剰な性能を追求せず、比較的シンプルな」装備に留めたグレードです(ポジション的にはベースグレードと”S”との中間に位置する。価格はベースモデルのボクスターが768万円、ボクスターTが881万円、ボクスターSが967万円)。
ただし廉価版という意味ではなく、走りに関する装備は充実していて、アクティブエンジンマウント、電制デフ(PTV)によるロッキングとトルクベクタリング、スポーツシャシー、スポーツクロノパッケージといった装備が与えられ、まさに走りに対する備えは万全といったところ(スポーツエグゾーストモデルも標準装備)。
ホイールは20インチサイズのハイグロスチタングレー、ドアミラーやモデルネームはアゲートグレーにペイントされています。
ボディサイドの「Boxster S」ステッカーもアゲートグレー。
インテリアだとスポーツシートプラスや、ドライブモードスイッチ付GTスポーツステアリングホイールが装備されており、さらにドアインナーハンドルは911GT3同様の「ストラップ」へと変更されるなど軽量化にも配慮されているようですね。
ちなみにシート表皮も「T」専用の軽量ファブリック。
ボディサイズは全長4,379ミリ、全幅1,801ミリ、全高は1,264ミリ、車体重量は1,350kg(MT)、搭載されるエンジンは2リッター4気筒ターボ、最高出力は300馬力で、0−100km/h加速は5.1秒、最高速は275km/hというスペックを誇ります。※車体重量はベースモデルのボクスターに比較して10kg軽い
実際にポルシェ718ボクスターTで走ってみよう
そして実際に試乗へと入りますが、ぼくはこれまでに986世代のボクスターS、981世代のボクスター、718ケイマンを所有したことがあり、よってボクスターは「比較的慣れ親しんだクルマ」。
よって操作系に戸惑うことはなく、乗り込んだ後にはシートやミラー類をあわせてサクっとエンジンをスタート。
ただしそこで気づくのは「シャープさと軽さ」で、エンジンに火を入れた瞬間に(普段乗っているマカンの3リッターV6エンジンとはまったく異なる)透明感のある吹け上がりに驚かされることになります。
そこからパーキングブレーキを解除して走り出すことになりますが、やはりここでも「軽さ」を感じさせられ、試乗への期待が高まろうというものです。
さらに走行を寝ると「軽い」という印象はいっそう強くなり、ステアリングホイールの操作に対する応答性の高さには(最初に曲がった瞬間から)びっくり。
ポルシェからはアナウンスされていないものの、おそらくはベースモデルの718ボクスターとはステアリングレシオが変更されているものと思われ、(718ケイマンでは)ステアリングホイールを持ち替えていたような場面でも718ボクスターTでは(ステアリングホイールを)持ち替えることなく「すっと」曲がれるように思います。
これによって(ドライバー側の)動作が減っているため、よりクイックかつ「意のままに曲がる」という印象を受けるので気持ちよく走ることができるわけですが、カーブで「すっと鼻先が入る」感覚にも磨きがかかり、かつコーナリング中にアクセルを踏んだ時の「駆動力で曲がる」感覚も(PTVが装備されているだけに)かなり強く、陳腐な表現ではあるものの、両腕は前輪に、右足は後輪に繋がっているというクルマとの一体感がかなり増しているようですね。※試乗中はウエットだったので、実を言うとあまり踏めなかった
加えてブレーキを踏んだ際のフィーリングもけっこう改善されていて、踏み始めの効きがマイルドになり、そこから踏み込んでゆくと踏力に応じてスピードを「殺してゆく」ことになりますが、路上の落下物を発見して急ブレーキを踏むような場面であっても「カックン」とならないのはけっこう嬉しいかも。
加えて、信号停止等で完全停止する際の「最後の一瞬」もカクっという感じではなく「すっと」停止することになり、ブレーキのマナーは大きく改善して高級車っぽくなった、とも思います。
なお、障害物といえばその回避性能も特筆すべきところで、ブレーキ性能はもちろんですが、急ハンドル操作を行って障害物を回避し、もとのレーンに戻る際にもまったく不安はなく、このあたりはポルシェならでは(歓迎すべき事態ではないが、ぼくは緊急時にこそポルシェらしさを実感する)。
さらに「減速して回避する」ほか、「加速して回避する」ことができるのもポルシェの特徴のひとつで、この重要性ついてはトヨタも着目しており、GRスープラを用いて「ドリフトによって障害物を回避する」という、積極的にアクセルを踏みつつも安全に危険を避けるということに着目しているようですね。
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できればですが、ポルシェを試乗することがあれば、セールスさんに断って、走行中に(もちろん安全な環境にて)ガクッとステアリングホイールを切り、そこからもとの位置に戻るという動作を試してほしく、それだけでぼくは「ポルシェというクルマ」が理解できるとも考えています。
ちなみにサスペンションはけっこう固い部類に入るものの、BMW Mモデルのように「鋭い突き上げ」を感じさせるものではなく、初期のあたりが柔らかく、そこからは強いダンピングを発揮するといった感じ。※足回りが硬い割にロールの大きいクルマもあるが、ポルシェはその逆
よってサスペンションストロークはかなり短いという印象ではあるものの、走行中の姿勢はかなりフラットであり、「アクティブサスペンションでもないのに、よくこれほどまでにフラットな姿勢を保てるな」と感心させられます(伸び側がけっこう柔らかいのかもしれない)。
なお、ポルシェの面白いところは「バリエーションがたくさんあっても、それぞれに明確な違いがある」ということ。
どういうことかというと、たとえば現在911には「22もの」バリエーションがありますが、これらは実際に乗ってみると「それぞれ別のクルマである」かのような印象を受けるということで(もちろんぼくはこれらすべてを運転したことがあるわけではないけれど)、当然ながらこれはポルシェが意図的に「乗り味に変化をつけている」からですが、言い換えれば「どこをどうすれば、どうクルマの印象が変わり、ドライバーに与える印象がどう変わるのか」を知り尽くしていないとできないわけですね。
逆に、これが理解できていないと「そのメーカーの、どのクルマに、そしてどのグレードに乗っても、同じクルマであるように感じる」ことになってしまう、ということに。
よってポルシェの場合、ベースグレードとこの「T」、そして「S」には明確な相違があり、「S」は単にベースグレードのパワーを上げただけのモデルではなく、まったくドライブフィールの異なるクルマとなっています(ぼくの印象だと、大船に乗ったかのような安定感や、しっとりした上質さを感じる)。
そしてベースグレードには、「S」にはない軽快さや直接的なフィーリングを感じさせるものがあり、「T」はさらにそれを強化したものだとも考えられます。
そのため、ベースグレードにはベースグレードを買う理由があり、そしてTにはTの、SにはSの理由もそれぞれ存在していて、ベースグレードだからといって「安く上げている」「エントリー向け」なわけではないともぼくは捉えているわけですね(じっさい、ぼくはポルシェのベースグレードが大好きだ)。
ちなみにですが、718世代になってから「アクセルオフ」でエンジン回転数が下がらず(4気筒ターボのみ)、ここはそれまでの「アクセルオフ時、一瞬でタコメーターの針が落ちてくる」ポルシェとは異なる部分。
おそらくはいったん回転を落としてしまうと再加速時に(回転数が上がるまで)加給がかからず、そして2リッターという排気量なので加給がかかるまではモタついてしまうからだと推測しています(911の場合はターボエンジンであっても回転落ちは速い。参考までに、同じ2リッターターボであってもアウデイの場合はアクセルオフで一気に回転を落として燃費を稼ぐ仕様となっている)。
やはり最新のポルシェは最良のポルシェだった
その他気づいたこととしては、格段にボディ剛性が向上している、ということ。
これについてもポルシェからなんらかのアナウンスがあったわけではなく、しかし轍を超える際の動きや印象からして間違いなくボディがしっかりしているようです。
実際のところ、ポルシェの(スポーツモデルの)名物でもある”内装のきしみ音”が試乗中にはまったく確認できず、正直いうとこれはかなり驚いた部分であり、ポルシェは着実に改良を行っている、ということですね。
あとはサウンドが(スポーツエキゾースト装着にもかかわらず)ちょっと静かになったなという感じですが(これもポルシェからなんらかの発表があったわけではないので、ぼくがそう感じるだけなのかも)、これはもしかすると騒音規制に配慮しての仕様なのかもしれません。
試乗を終えてみて思ったのは、やはり「最良のポルシェは最新のポルシェ」ということ(以前に乗っていた718ケイマンに比較しても全体的な質感の向上が著しい)、そしてこれは「小さいランボルギーニ」ということ。
ぼくは981世代の頃から、ボクスターそしてケイマンは「小さなランボルギーニ(のV10モデル)のようだ」と考えていて、その印象は今回の試乗でますます強くなった、と思います。
その理由としてはシャープなハンドリング、接地性の高い足回り、そしてミドシップレイアウトに起因する高い回頭性と旋回性、それらを総合したフィーリングでありますが、ボクスターとケイマンを3台、ランボルギーニのV10モデルを3台乗り継いでもその印象が変わらないので、やはりボクスターそしてケイマンは「小さなランボルギーニ」なのかもしれません。
ポルシェ718ボクスターTを試乗させていただいたのはポルシェセンター北大阪さん
今回ポルシェ718ボクスターTを試乗させていただいたのはポルシェセンター北大阪さん。
ポルシェセンター中大阪さんと同じ系列であり、あわせて5台のポルシェを購入することとなっていますが、いつも大変お世話になっており、感謝いたします。