| 当時は誰もイーロン・マスクCEOの言うことには耳を貸さなかったが |
フタを開ければEV業界はテスラを中心に回っている
さて、現在テスラを取り巻く状況は大きく変わっており、株式に関して言えば昨年末の「歴史的な下げ」曲面から一転し、現在では多くのアナリストが「買い」だというコメントを出しています。
そしてその理由の一つが「値下げ」であることは間違いないのですが、この値下げについて、当初は「テスラ車の需要が下がっており、在庫が増えてきたため、もしくは性能能力が需要を上回ってしまったため」、つまり苦しくなったために価格を下げるのだと見られていたわけですね。
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ところが一転、テスラ車は売れに売れる
ただ、この値下げ後に起きた状況は「過去に例を見ないほどの注文増加」であり、直近のデータを見る限り、実際に世界のいくつかの主要な市場でテスラの市場シェアを押し上げたことが示されています。
まず欧州連合(EU)の最新データによると、テスラの登録台数はヨーロッパ大陸全域で増加傾向にあり、テスラは2023年2月、同市場で他のどの自動車メーカーよりも急速に成長したことが明らかに。
数字的なものだと、テスラは2月に19,249台を販売し、前年同月の12,860台から大きく台数が増加していますが、さらに、中国乗用車協会が発表したデータによると、今年最初の2ヶ月間、中国国内および中国から輸出されたバッテリー電気自動車(BEV)の中においてもテスラは市場シェアを伸ばしており、つまりテスラは値下げによって大きく躍進したということを意味します。
もちろん、値下げによって1台あたりの単価は減少しているはずですが、増加した販売台数によって「利益総額」が伸長しているとも考えられ、4月に発表される第1四半期の決算報告を待ちたいところでもありますね。
テスラの目標株価は220ドル
そして今回の値下げにつき、モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏も「さまざまな要因がテスラ、そしてイーロン・マスクCEOの戦略や見通しに好影響を与えている」と指摘しており、同氏はテスラを”業界のコストリーダー”であるとも表現。
つまり、今後のEV業界は「テスラの車両価格にあわせた展開を行う必要がある」ということを意味しており、アダム・ジョナス氏はテスラの目標株価を220ドルに設定しています(現在の株価よりも10%以上高い)。
さらにアダム・ジョナス氏は「EVの値下げは一過性の流行ではなく、継続するトレンドだ」とも述べており、さらに、電池やリチウムのコスト低下、製造効率の向上などの要因を挙げ、「デフレ傾向」だとも。
ただ、このトレンドに乗れるかどうかは自動車メーカーによって大きく異なり、テスラがシェアを伸ばしたということは、逆にシェアがしぼんだメーカーやブランドもあるわけで、そしてそういった中には「値下げを行ったのに売れ行きが悪くなった」場合もあるかもしれません。
そしてコストリーダーであるテスラについて行くことができずに「売れないような(高い)価格でしかEVを提供できなかったり」「値下げを行うと同時に収益が悪化したり」というメーカーも少なくはないはずで、やはりテスラの値下げは強力な武器として機能しており、これからEV業界へと参入する会社にとっての「障壁」となる可能性も。
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なお、テスラはこの状況については随分前から予想していたようで、少なくとも2006年、イーロン・マスクCEOが最初のマスタープランを策定したときから「テスラの戦略の一部」となっており、この中では「まず高価な自動車を製造・販売し、その利益をもってより安い自動車を製造し、その利益でさらに安い自動車を製造する」といった計画を記しており、当時一般的であった「まずは安価なクルマを投入し、そこで認知度を高め、そこから上級移行する」といった鉄板戦略とは真逆の方向性を持っていたことが今となっては印象的。
こういった「セオリーを無視」するところが「人々にイーロン・マスクCEOの考えが理解されない」理由なのだと思われ、しかし現実としてはイーロン・マスクCEOの想定したとおりとなっているのがまた興味深いといころです。
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