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2026年以降に採用されるF1の新レギュレーションはこう変わる。サプライヤー、チーム、ファン、環境などすべてにとって最大の効果を提供できるように配慮がなされる【動画】

2026年以降に採用されるF1の新レギュレーションはこう変わる。サプライヤー、チーム、ファン、環境などすべてにとって最大の効果を提供できるように配慮がなされる【動画】

| F1にとって、リバティ・メディアによる買収は大きなプラスになったと考えていい |

2026年シーズン開幕当初は「どのチームが勝ってもおかしくはない」状況になりそうだ

さて、FIAが2026年から導入されるF1の新しいレギュレーションの概要を公開。

かねてより「2026年からは大きく規則が変わる」と伝えられていて、これは今まで(既存F1チームが)積みあげてきた実績が「ほぼチャラ」になってしまうという事実、そして”新規参入チームであっても競争力を発揮できる”という可能性を同時に意味しており、そして後者の「可能性」をもとめてポルシェやアウディ、キャデラック、フォード、アンドレッティなどが新規参入を(様々な形で)模索してきたわけですね。

新しいF1のレギュレーションはこうなっている

そこで今回FIAが発表した新しいF1のレギュレーションを見てみたいと思いますが、その目的につき、FIAの言葉を借りれば、「機敏で、競争力があり、より安全で、より持続可能であること」。

なお、現在F1の運営元はCVCキャピタルパートナーズからリバティ・メディアへと移っており、リバティ・メディア傘下では今までに見られなかったようなエンターテイメント性を重種したマルチな展開が行われていて、たとえばネットフリックスでのドキュメンタリー番組の放映、まるでゲームの世界を実現したかのようなサウジアラビアの新しいサーキット建設計画などはその典型かと思われます。

サウジアラビアが市街地に高低差107メートル、総工費5兆円の「未来的な」F1サーキット建設計画をアナウンス。2027年から実際にレースが行われるようだ【動画】
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つまりリバティ・メディアは「よりF1のゲーム(エンターテイメント)性を高める」ことを主眼に置いていると考えてよく、「各チームの戦闘力を接近させること」が今回の新レギュレーションの根底にあると考えてよいかと思います(その意味では、たしかに新参チームにもチャンスが見えてくる)。

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そして車体におけるもっとも大きな変化が「コンパクト化」。

これは既存車両が「大きすぎる」という観客そしてドライバーからの声を反映したものだと考えてよく、車両がコンパクトになればモナコやイモラなどの狭いサーキットでもより多くの追い越しを見ることができるかもしれません。

2026年の新規則では、最大ホイールベースが200mm短縮されて3,400mmとなり、幅は100mm縮小されて1,900mmとなっていて、動画を見ると数字以上にその「容積」が小さくなっているようにも。

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そして小さくなるのはシャシーのサイズだけではなくタイヤも同様で、ホイールの直径は18インチを維持したままフロントタイヤの幅は25mm、リアは30mm小さくなり、これらの総合的な結果として車両の最低重量は30kg削減されて768kgへ。

2026年のF1では「アクティブエアロ」がより広範に

新しいエアロ規則では、スポーツドラッグリダクションシステム(DRS)が廃止されますが、これは、リアウィングのフラップを可動させ、所定のゾーンと条件において”ストレートでのオーバーテイクを行いやすく”する機能であり、レースのダイナミズムを向上させるための試みです。

ただ、DRSの特定の要素はなくなるものの、アクティブエアロのコンセプトは大きく広く解釈されるようになり、新しい車両には可動式のフロントウィングとリアウィングが装備され、直線ではこれらの空気抵抗を低減するよう”開いて”スピードを上げ、ブレーキング時には”閉じて”ダウンフォースを増大させることに。

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DRSとは異なって、この新しい可動式エアロは追い越しの際に役に立つというものではなく、「より速く」サーキットを走るための機能だと解釈でき、パワーユニットの出力特性、サスペンション、そしてこのアクティブエアロ、さらにはそれを使用するドライバーという様々な要素がうまく機能してはじめて「ライバルをリードすることができる」のだとも考えてよく、シーズン開幕当初は様々な試行錯誤やチームごとの解釈がみられるもしれません。

一方、フロントウィングは 100mm狭く設定され、リア ウィングは下部ビームが1つ減って簡素化されるほか、フロントホイールアーチは取り外され、フロアは部分的に平らになり、(緩やかな)ディフューザーが装備されます(グラウンド・エフェクトを利用した超剛性の低走行設定の必要性を一部回避するため)。

これらにより、(FIAによれば)2026年シーズン以降の新しいF1マシンのダウンフォースは30%向上、その反面でドラッグは55%減少する、とのこと。

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2026年シーズン以降のF1用パワーユニットはこうなる

2026年シーズンにおけるF1新レギュレーションの目玉の一つが「新パワーユニット」。

これによって(上述の通り)F1でのチャンスが今まで以上に大きくなり、結果として2026年シーズンのパワーユニットサプライヤーは記録的な数にのぼっています。

既存のフェラーリ、メルセデスAMG等が含まれるほか、ホンダ (アストン マーティンとの提携)の復帰や、アウディ(パワーユニットの供給にとどまらずフルワークスでの)参戦、フォード(のレッドブルとの提携)によるパワーユニット供給など様々なサプライヤーが混在することで勝敗を左右する要素が増えるわけですね(FIAのプレスリリースではキャデラックの名は記されていない)。

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このパワーユニット規定の変更については「簡素化」がひとつの、しかし大きな要素であり、つまり開発コストが下がっているということですが、これが(2026年以降のF1への参戦につき)多くのサプライヤーあるいは自動車メーカーを惹きつけた主要因だと考えられます。※参戦する企業が多くなればなるほど興味を持つ人が増えるので、これはFIAの狙い通りであるといえそうだ

具体的には、複雑怪奇であったMGU-Hユニットはなくなり、ハイブリッドシステムからの電気エネルギーは120kW(160馬力/163PS)から350kW(469馬力/475PS)に増加し、逆に(現行から継続される)1.6リッターV6内燃エンジンの出力は560kW(750hp/761PS)から400kW(536hp/544PS)に引き下げられることに。

この「エレクトリック領域の増加」については、FAIが「いまモータースポーツに求められているもの」を具現化した戦略だと考えてよく、この機能や思想を(F1に参加するサプライヤーやコンストラクターが)市販車およびそれに使用されるコンポーネントへとフィードバックすることを期待したものだと解釈できます。

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なお、「DRSにかわるオーバーテイク支援策」としてエレクトリックブーストを用いることも発表されており、こちらの詳細はまだ明かされていないものの、DRS同様に「一定条件下で」作動すると考えられ、現時点でわかっているのは「前方の車両は時速290kmを超えると電気エネルギーの供給が徐々に減少するものの、後続車には時速337kmまでの速度域において350kW (469hp / 476PS) を供給するオーバーライドが付与される」。

このほか、ドライバーを取り囲むセルと燃料電池エリアには、より厳格な保護が求められ、新しい2段階ノーズ設計によって”衝突後にもフロントセル構造の固定を維持できる”ようになる、と説明されています。

そして重要なのは、2026年以降のF1は「完全に持続可能な燃料」へと移行し、選択された燃料は100%「ドロップイン」、つまり、ICE(内燃機関)駆動のあらゆる車両で使用できるということを意味し、2030年までにカーボンフリーを達成するというFIAの目標を改めて示すことに。

今回の新レギュレーションにつき、参戦するサプライヤーやチーム、ファンや観客、そして環境などあらゆる要素の配慮したであろう意図を汲み取ることもでき、非常によく考えられた内容ではないかと考えています。

2026年以降のF1レギュレーション概説動画はこちら

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参照:FIA

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