
Image:AFEELA
| 発売前から約520億円の赤字、「AFEELA(アフィーラ)」に何が起きているのか? |
ここから先、販売すればするほど「赤字が膨らむ」のかもしれない
ホンダとソニーが共同で立ち上げた合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」。
このソニー・ホンダモビリティが開発する電動セダンが「AFEELA(アフィーラ)」ですが、同社はまだ1台も販売していないにもかかわらず、すでに約520億円(52億円)の営業赤字を計上したことが明らかに。
両社は2025年後半にこの高級EVを市場に投入する予定で、価格は89,900ドル(約1,400万円)からとされており、しかしその強気な価格設定とは裏腹に、利益を上げるにはかなりのハードルが存在すると分析されています。
ソニー・ホンダモビリティ、昨年の2倍超の赤字を計上
今回の赤字額は、前年(2023年度)の約205億円の赤字と比べても2.5倍以上。
開発中のEVにおいて赤字が出るのは当然とも言え、しかしこのスケールの損失は極めて異例です。
報告書によれば、単なる開発費だけでなく、ソフトウェア開発、プロトタイプ構築、設備投資などに巨額のコストがかかっているとされ、特にソニーが得意とする「車載エンターテインメント」や「高度なセンサー・UX領域」には膨大なリソースが注ぎ込まれているもよう。
高級EV市場は「ハイリスク・ハイコスト」
EVの世界、とくに高級セグメントにおいては、初期投資が極端にかさむことで知られていて、テスラのようなソフトウェア主導の企業であっても軌道に乗るまでには数千億円単位の出費が要求されています。
ブルームバーグのアナリスト、吉田達生氏は「アフィーラのような高級EVは開発費が非常に高額。価格を高く設定しても、回収は容易ではない」と分析しており、一般に「30万台くらい販売しないと開発コストを回収できない」と言われるこの業界において、そしてアフィーラ発表時に比較して遥かに競争が厳しくなった現在のEV市場において、この価格帯のクルマを30万台も販売することは容易ではないのかもしれません。※そもそもホンダは自社のEVの販売が「30万台には程遠い」状況
テスラやメルセデス・ベンツとの競争、そして中国勢の影
アフィーラが参入する高級EV市場には、すでにテスラ、メルセデス・ベンツ、BMWといった老舗メーカーがしっかりとポジションを築いおり、加えて、Xiaomi(シャオミ)やBYDといった中国EVメーカーも急成長中で、競争環境はかつてないほど厳しいというのが現在の状況です。
このような中で、知名度はあるものの自動車業界では実績の乏しい「ソニー・ホンダモビリティ」がどれだけインパクトを残せるかは未知数であり、消費者が「より安価な、確立された評判を持つ先行EVではなく、このアフィーラを選ぶかどうか」はもっとナゾ。
ホンダの技術 × ソニーのソフト、勝算はあるのか?
それでも(驚くべきことに)両社は楽観的な姿勢を見せており、ホンダはエンジニアリングと安全技術で定評があり、ソニーはイメージセンサーやエンタメ、UX開発で世界屈指の技術力を持つことがその「自信の源」であるようですが、実際、アフィーラはPS5のコントローラーで動かせるデモンストレーションを行うなど、話題性も低くはなく、「無名状態からのスタート」よりはずっといいのかもしれません。
もし現在のEV市場で成功すれば、アフィーラは「ポスト・テスラ」の一角として注目を集める存在になり得るかとは思うものの、しかし現状では、発売前にすでに巨額の損失を抱えた高級EVプロジェクトとして、やや危ういスタートを切ったというイメージが否めない、というのが正直なところです。
なお、この「アフィーラ」プロジェクトは「慎重な日本」と「アグレッシブな中国」との差を端的に表しているとも捉えていて、アフィーラが何年もかけてこの計画を進めるうちに中国では進行EVメーカーが数え切れないほど誕生しており、そしてその技術も「バカにされていたレベルから、テスラを脇に追いやってしまうまで」に成長していて、この状況の中でアフィーラは「相対的に」すっかり古くなってしまった、という印象も拭えません。
そう考えるならば、現時点でも「巨額赤字」を抱えているものの、今後この赤字が拡大する可能性のほうが高く、一方で投資額を回収できる見込みは低く、となるとこの時点で「潔く撤退」したほうが傷口が浅く済むんじゃないかとも考えています。
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