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【ブガッティ・トゥールビヨン】V16エンジンは空力を考慮し「斜めに」搭載、3DプリントとAIが生んだ究極のパッケージング

【ブガッティ・トゥールビヨン】V16エンジンは空力を考慮し「斜めに」搭載、3DプリントとAIが生んだ究極のパッケージング
Bugatti

| エンジニアリングと哲学が融合した、ブガッティ・トゥールビヨンの「構造美」 |

ブガッティほど「特殊」な設計を行うスポーツカーメーカーは他にない

ブガッティ・トゥールビヨンはV16エンジンを積むという唯一無二の存在ではありますが、ブガッティいわくトゥールビヨンは単なるハイパーカーではなく「それは、エンジニアリング、建築美、空力哲学の融合であり、1つひとつの構成要素が”全体の完成度”に寄与するよう緻密に設計された芸術作品」。

「クルマをゼロから開発する際、どんなパーツであっても単体ではなく、常にクルマ全体の文脈の中で考える必要がある。」

ブガッティ・リマックCEO メイト・リマック

新開発V16は「斜めに搭載」され、空力を劇的に改善

トゥールビヨンのパワートレインレイアウトは従来から大きく刷新されており、新たに採用されたV16エンジンは従来のW16よりも長く、スリムな形状で、しかも(横から見て水平ではなく、後ろ上がりの)斜めに搭載。

05 BUGATTI Tourbillon BTS Ep9

Image:Bugatti

この設計変更がもたらした最大の恩恵は、車体下部に超ロングなベンチュリートンネル(ディフューザー)を配置できたことで、キャビン下から車体後方にかけて広がるこのトンネルが”リアウイングなし”で十分なダウンフォースを生み出すことに成功しています。

さらにブガッティはこのベンチュリートンネルを「より長く」取るためにシートを「固定式」とし、かわりにステアリングコラムとペダルセットをスライドさせるという手法を採用していますが、これによって「シート位置を低く」設置でき、「シートを前後させるための」スライドスペースを廃止することができたため、1メートル近いV16エンジンを搭載しつつも車体をコンパクトに設計することが可能になった、とも。

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Image:Bugatti

こういったところを見るに、メイト・リマックCEOのいう「パーツはクルマ単体の文脈の中で」というくだりにも納得でき、これは「1車種のためだけにすべてのパーツが設計される(つまりほかモデルへの転用や汎用性を考慮しなくてもいい)ブガッティならではなのかもしれません。

加えて、ブガッティのエクステリア/インテリアデザイナーは「単にアピアランスをデザインする」のではなく、クルマの冷却やダウンフォース、重心、そもそもの構造までをも最適化するためにデザインを行わねばならず、エンジニアと同等の知識が要求されることを意味します。

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Image:Bugatti

エンジンとギアボックスの位置も一新

スーパーカーやハイパーカーでは、ギアボックスがエンジンの前に置かれることが少なくはなく(ランボルギーニ・アヴェンタドールはこの方式)、しかしトゥールビヨンではこれをエンジンの後方に配置しています。※一方、エンジンの前にはバッテリーパックの一部が収まる

さらに、前輪は2基の電動モーターで個別に駆動されるため、エンジンと前輪の間には物理的な接続が存在せず、この設計により、前後重量バランスとスペース効率が最適化されることとなったわけですね。

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Image:Bugatti

なお、この「フロントをエレクトリックモーターで駆動する」ということには様々なメリットがあり、フロア下をプロペラシャフトが貫通する必要がないので構造をシンプルにでき、かつ左右シートをより「寄せる」ことでキャビンの前面投影面積を最小化したり重心を最適化でき、もちろんそのぶんの重量を削ることが可能となるほか、機械部品や回転する部品が減るのでノイズやトラブル、摩耗や損耗も抑えることが可能です。

「ハイパーカーにとって、空気抵抗を抑えるには単にCd値(抗力係数)だけでなく、フロント面積をいかに小さくできるかが極めて重要です。」

メイト・リマック

フロントセクションも「美と機能」が融合

トゥールビヨンにおけるブガッティの象徴的な馬蹄型グリルは”差別化のための単なる意匠”にとどまらず、このグリルから取り込まれた空気はフロントアクスル、バッテリー、ブレーキシステムの冷却を担うこととなりますが、グリル左右には内燃エンジン用の冷却インテークが配置されることによってエアフローの導線が視覚的にも明確化され、まさにこれは「機能が外観を決定する」例にほかなりません。

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Image:Bugatti

リアディフューザーがクラッシュ構造を兼ねる

トゥールビヨンのリアセクションに目を移すと、従来の金属製クラッシュビームの代わりとして3Dプリントによるメタル構造体をディフューザー内に内蔵しており、これが衝突エネルギーを吸収しつつ空力性能にも寄与するといい、これも車両の構造とエアロダイナミクスが合体した部分ということになりそうです。

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Image:Bugatti

サスペンションも3Dプリント+AI設計で「構造美」

トゥールビヨンのサスペンションは、空気の流れを乱さないよう翼断面状に成形された構造を採用していますが、これはすでに紹介されているとおり「AIによるトポロジー最適化」によって原子レベルで不要な素材を削ぎ落とし、必要最小限の強度構造を実現したもの。

特にアッパーアームには有機的なマイクロストラクチャーが形成され、軽量化と強度の両立を可能にしています。

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Image:Bugatti

まとめ:ブガッティ・トゥールビヨンすべての構造が「全体最適」のために存在する

トゥールビヨンの設計思想は、パーツ単体の性能ではなく、すべてが連動し、1台のマシンとして「最適化」されていること。

それがブガッティの哲学そして伝統でもあり、やはりトゥールビヨンは「分業化が進み、一つのパーツを他車種でも使用する」ほか多くのスポーツカーメーカーでは体現し得ない”芸術作品”なのかもしれませんね。

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Image:Bugatti

「ブガッティ・トゥールビヨンは、個々の部品が全体とどう連動するかを徹底的に考え抜いて設計された。軽量性、空力、性能、パッケージング、そのすべてが融合した傑作だ。」

ブガッティCEO メイト・リマック

ブガッティがトゥールビヨンの革新的な「構造」について紹介する動画はこちら

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参照:Bugatti

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