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今中国で何が起きているのか?テスラが中国市場に全力投球、他地域への供給を後回しにしても中国での納車を強化、さらに値引きも

2022/10/26

テスラ

| おそらくはかつてないレベルで競争が激化、そしてここで覇権を取らねば二度と失地回復ができないのかもしれない |

テスラにとって中国は最大の市場、そして中国におけるEVシェアでは3番手

さて、ここ最近では納車待ち期間の短縮や中国の値下げなど様々な報道がなされているテスラ。

一般的に考えると「納車期間の短縮」「値下げ」は需要の軟化を示すもので、つまり人気のピークが過ぎたと考えるのが妥当です。

ただ、ここ最近の自動車生産そして販売についてはサプライチェーンを中心とした混乱が多く、一概にこれまでと同じような判断ができないというのが実情ではありますが、今回テスラの生産や受注、販売動向を追っているツイッターアカウント、@Teslikeが興味深いデータを公表しており、それを見てみたいと思います。

テスラ
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推定受注残は今年始めて30万台を割る

なお、Teslikeの公表している数値はあくまでも予測値とはなるものの(それでもかなり正確だと言われている)、最新のデーターを見ると7月に(ワールドワイドでの)受注残が50万台、そして直近だと28万台程度に下がっています。※この受注残は、単純に全工場の生産能力で割ると70日分くらいになる

これについては「納車が進む一方、受注が入っていない」というよりは、生産能力が強化されたからだと考えるのが妥当かもしれません。

実際のところ、上海工場は過去最高の生産効率を記録し、カリフォルニアのフリーモント工場でも過去に例を見ない台数を生産したと報じられているので、この「受注残の減少」は主に生産能力の増強によって達成されたとも受け取ることができます(ただ、本当にそうなのかどうかについては、受注残と生産能力の推移をもう少し長い期間で見なければわからない)。

そして注目に値するのは、下の図において「中国(ピンク)のみ」の受注残が減っていること。

そのほかアメリカやカナダ、欧州での受注残はさほど変わらずに中国だけが激減しているわけですね。

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これをどう受け取るべきかは難しい

現在テスラの工場はカリフォルニア、テキサス、中国、ベルリンの4箇所にあり、基本的に北米市場向けの車両はカリフォルニアとテキサス工場にて生産していて(アメリカの場合、アメリカ生産のEVしか減税措置を受けることができない)、上海工場で作られた車両は欧州や日本、東南アジアなどに輸出しており、ベルリン工場で製造した車両は欧州と中東に振り分けられていると言われます(ベルリン工場が本格稼働すれば、上海から欧州への輸出はなくなるものと思われる)。

そしてもうひとつTeslikeによって公開された数値が工場ごとの生産能力と受注残。

これを見ると、中国向け車両で、かつ中国(上海)で生産する車両の納車待ちは7日もしくは21日ということがわかりますが、たとえば欧州だとモデル3で132日、モデルYだと78-113日、北米だとモデル3で27-172日、モデルYでは27-131となっていて、つまり中国以外の地域は「中国の何倍も」待たねば納車を受けることができないという状況です。

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さらに、欧州における(上海からの)モデル3、モデルYの納車待ちも82-132日とかなり長く、これを見ると、テスラは「中国生産したモデル3とモデルYを、他地域に回さずに、中国国内で販売している」ということもわかります。

この理由は不明ではあるものの、おそらくは現在中国において多くのEVが登場しており、とくにBYDはすでにテスラの販売台数を抜いたうえ、シャオペンやNIOもテスラを「追う」立場。

そういった状況を鑑みて、中国市場において「納車を待たせる」ということは、即「他社に顧客を奪われてしまう」ということを意味するのだと思われ、よって現在は中国優先となっているのだと思われます(逆に、欧米ではテスラ・モデル3やモデルYと直接競合するEVはほぼ存在しない)。

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そしてテスラは今回「最大で9%」の値下げを行っているので、これによってテスラの中国内での需要がさらに刺激されることは間違いなく、つまりテスラは「中国の受注残を解消した後、その生産余力分をもって欧州に輸出する」のではなく、「さらに中国での販売を加速させる(欧州はそのままにしておく)」という判断を行ったと考えられ、とにかく中国での販売を最大化させる方向に動いているということもわかります。

テスラ
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一方、モデルSとモデルXの納期は依然として長いままで、これは87-267日という数字。

そしてモデルSとモデルXはフリーモント工場のみでしか生産されておらず、よって中国にとっては「輸入車」扱いとなり、現時点では両方合わせて(中国で)3,006台の受注残があるものの、テスラはモデルS/モデルXの生産を加速させたり、中国へと(他地域分の)モデルS/モデルXを回す傾向も見られないため、正確に言うならば、同じ中国市場でも、モデルS/モデルXを注文した顧客は267日待たせておいても構わないと考えているものの、モデル3/モデルYの顧客は1日も待たせてはならないと考えているようですね(これは、モデルS/モデルXの競合が中国に存在しないためだと思われる)。※さらにはモデルS/Xよりもモデル3/Yの生産を重視している

要は、地域ごと、モデルごとの動向を見つつ、「優先するもの」と「そうでないもの」をしっかり切り分けているということになりますが、最優先は「中国市場」そして「モデル3/モデルY」ということを読み取ることができ、そのぶん中国市場における同クラスの競争が激化しているということもわかりますね。

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参照:Troy Teslike

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