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「テスラをまた買う」比率はほかメーカーに比較し圧倒的に高いものの、モデルYオーナーのみが他社製品に流出するケースが多く、「モデルYはテスラの終着駅である」

テスラ

| こういった数字を見るに、テスラやほか自動車メーカーの「穴」「チャンス」が見えてくる |

そしてテスラはこういったデータには興味を示さずに「わが道を行く」だろう

さて、様々な調査会社が発表している統計では「テスラのオーナーはまたテスラを購入することが多い」「テスラは既存自動車メーカーから顧客を奪っている」ことが明らかになっていますが、今回S&Pグローバル・モビリティが発表した「ロイヤルティ(忠誠心)調査」においても同様の結果がさらに鮮明に表れることに。

今回の調査では、テスラが新規購入者に強い訴求力を示しただけでなく、既存購入者を引き留める魅力的な能力も実証していますが、テスラのライバルが多数登場したことで「テスラのオーナーは次のクルマを購入する際、どのブランドのクルマを買うのか」という新たな”流出経路”も登場しています。

テスラオーナーの「非常に多く」がまたテスラを購入している

2023年6月までの12ヶ月間の最新データに基づくと、テスラ・モデルSオーナーのなんと59.9%が別のテスラに買い換えているといい、コンパクトなモデル3になると、その数字はさらに高くなって驚きの72.8%へ。

モデル3オーナーの40.3%はモデルYへと買い替えており、26.1%が改めてモデル3を購入しているそうですが、S&Pグローバル・モビリティのコンサルティング・サービス部門にてアソシエイト・ディレクターを務めるケント・チウ氏によれば「テスラは、モデル3からモデルYへの乗り換えを成功させており、それが高いロイヤルティにつながっている。テスラは、業界のCUV(SUV)シフトをうまく利用している。モデル3を最初に市場に投入し、その直後にモデルYを投入することで、顧客にポートフォリオを移行する道を与えたのです」。

テスラはまた、モデル3購入者を電気自動車全般の支持者に変えることにも成功していて、モデル3オーナーの78.9%がその次にもBEVを購入していることも明らかになっており、上述のとおり最も大きな移行先は「モデルY」。

そしてこのモデルYについては、小型乗用車の中ではもっとも高いロイヤルティ率(もう一度同じクルマを購入している)を持っており、その数字は37.3%にも達します(その次にロイヤルティ率の高いフォード・マスタング・マッハEでは18.5%にとどまる)。

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一方、テスラのモデルラインアップには「空白」も

上述の通り、モデル3のオーナーは「次にモデルY」を購入するものの、モデルYを購入したオーナーの70.5%が別のEVを購入しているという統計もあるそうで、つまりモデル3は顧客をテスラブランドの中で回遊させているが、モデルYはそのオーナーをテスラブランドの中に引き止めることにあまり成功していないという見方も可能です。

この理由としては、(S&Pグローバルによると)「本来はテスラブランド内にて、モデルXへと上級移行するはずなのに、モデルYとモデルXとの価格差が大きく、モデルYの顧客がモデルXの価格帯について行けてない」という仮説が示されており、モデルYはテスラオーナーにとっての終着駅であり、テスラはここを改善せねば(モデルYがもっとも売れているクルマであるだけに)ブランドロイヤルティを落とすことになりかねない、とも。

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ただ、モデルYオーナーが別のクルマへと乗り換える際、ガソリンやディーゼルなど内燃機関を積む”トラックやSUV”の購入を検討するという傾向も見られるそうで(テスラ/ほかメーカーに関わらず、モデルYとモデルXとの間を受けるEVがないからかもしれない)、となるとサイバートラックが「モデルYとモデルXとのギャップを多少なりとも埋めることができれば」あるいはテスラのブランドロイヤルティはさらに向上するのかもしれません(ただしサイバートラックには数年分の予約が入っており、今から予約を入れてもすぐには購入できないため、ロイヤルティが改善するのは数年後だと思われる)。

参考までに、モデルSオーナーの21.7%が再びモデルSを購入し、18.6%がモデルYを購入するという「ダウンサイジング」も。

一方でモデルSオーナーの11.7%がモデルX、7.9%がモデル3を購入しており、モデルSのロイヤルティは全体で59.9%という数字(かなり高い数値である)を持っていることからも、高い満足度を誇っているであろうこともわかります。

逆にモデルSからの流出先だと、ルーシッド・エアの3.4%、リヴィアン・R1Tの1.8%、メルセデス・ベンツEQSの1.6%、リヴィアン・R1Sの1.2%という並びとなっており、とくにリビアンR1Tはモデル3からの買い替え先として人気があるという統計も(1.3%)。

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それぞれのEVメーカーにはそれぞれの「勝機」も

こういった数字を見ると、テスラが獲得した「EVオーナー」のいくばくかがほかブランドへと流出するものの、大半(もしくはそれ以上)がテスラに残留しているように見え、今後「テスラが持たない選択肢」がどんどん市場に出てくることを考慮すると、テスラからの流出も拡大してゆくのかもしれません。

よってテスラとしては「モデルラインアップを増加させ、モデル間のギャップを埋めなければ」他社にシェアを奪われ続けることにもなりかねませんが、テスラの場合は「失うよりも新しく獲得するオーナー」を重視する可能性があり、細かい消費者の需要を拾うよりも、生産効率を最適化するためにインドなど新しい市場で「最大公約数を狙う」可能性が大きそう(テスラの目的は自社であろうと他社製品であろうとEVを普及させ、モビリティのクリーン化を行うことでもある)。

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そうなると「テスラが新しいEVオーナーを獲得する→テスラにてEVの良さを知った消費者は(A)またテスラを買う、もしくは(B)テスラにない魅力と特徴を持つ他社のEVを購入する」という図式が成り立ちますが、ほかの自動車メーカーにとってもっとも勝算の高い戦略は「テスラにない魅力と特徴を持つEV」「テスラの各モデル間のギャップを狙う」ということになるのかもしれませんね。

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参照:S&P Global

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