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実はEVのバッテリーは車体よりも長持ち?予想されていたよりも劣化せず、日産リーフだと「今まで製造した個体のほとんどにはオリジナルのバッテリーが収まり、走っている」

2022/09/25

日産のキー

| 当初、EVのバッテリーは数年もすると性能が劣化し「使い物にならなくなる」とされていたが |

一方、十数年後には寿命を迎えたEV用バッテリーがどっと出てくる可能性も

さて、EVはまだまだ販売がはじまって歴史の浅い製品であり、その正確な寿命については図ることが難しいというのが現実です。

一般的には1年あたり3〜5%ほど性能が劣化し、よって10年もしないうちにその性能が半分くらいになると言われているものの、実際に10年乗ったケースも少なく、そこで残存率を測った報告も見られないので実際のところは「ナゾ」といったところ。

そして今回英国の日産にてマーケティング・ディレクターを務めるニック・トーマス氏が語ったところによると、「我々がこれまで製造した(EV)バッテリーのほぼすべてが、まだ車に搭載されている」。

日産はリーフのバッテリーの再利用計画を公表していたが

なお、日産はEVにいち早く取り組んだ会社としての社会的責務からかバッテリーのリサイクルに比較的早い時期から取り組んでおり、車体から取り外したバッテリーをスタジアムなどの施設や家庭用蓄電池として採用するという計画を公表したことも。

ただし実際にはこういった「再利用」は進んでいないということになり、その理由としては「意外とバッテリーが劣化しない(クルマから取り外す必要がない)」という事実にあるもよう。

その理由としては、EVには高度なバッテリー管理システム(BMS)が備わり、バッテリー寿命を最大化するように設計されていて、米国では、自動車のバッテリーパックは連邦法によって8年または10万マイル内の故障に対する保証が義務付けられ、ほとんどのバッテリーパックはそれよりもはるかに長持ちすると言われます(ただバッテリーの故障と劣化は別の問題であり、どのバッテリーも時間が経つと容量が減り、航続距離が徐々に短くなり、この残存率について保証を行うべしという法律はないようだ)。

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そしてニック・トーマス氏によると、「私たちは、交換用バッテリーを大量にストックしているわけではありません。EVを発売した当初は、バッテリーの寿命が短いのではと心配していましたが、実は全く逆でした。多くのEV用バッテリーは、自動車よりも長持ちし、定置用蓄電池で二度目の寿命を迎え、最終的にリサイクルされる。自動車の寿命が尽きる15年後、20年後、車からバッテリーを取り出してみると、まだ元気で、おそらく60〜70%の充電が可能な状態を保っているはずです」。

さらに同氏は「電気自動車からバッテリーを取り出して、新しいバッテリーを搭載することは現実的な提案ではありません。20年後に車からバッテリーパックを取り出して、車をリサイクルし、バッテリーを再利用する方が持続可能です。最も簡単なのは、車からバッテリー一式を取り出し、輸送用コンテナに載せてラックに入れ、それを太陽光発電所に接続することです」。

日産はこれまで、事故車などリーフのバッテリーをごく少数回収し、その一部を定置型蓄電池のプロバイダーへと供給していて、現在イギリスのサンダーランドに建設中の日産の新工場では、太陽光パネルや風力発電機からの電力をEVのバッテリーに蓄える予定だとしており、今後いっそうリサイクルに力を入れるようですが、バッテリーの需要が「クルマよりも長い」のであれば、こういったリサイクルが本格化するのはまだまだ先のことになるのかもしれません。

日産

中国はすでに「バッテリーリサイクル先進国」

ただし同氏は「中国では、すでに非常に強力な電池のリサイクル産業があります。私は中国で多くの工場を訪れましたが、そこではバッテリーをブラックマスと呼ばれるものまで粉砕し、すべての貴金属を抽出することが可能になっています」と述べ、中国がバッテリーの製造だけではなくリサイクルにおいても「先進国」となりつつあることも指摘。

なお、フォルクスワーゲングループはドイツのザルツギッターにバッテリー研究開発施設を開設し、最終的にはEVバッテリーのリサイクルを行う予定だとも発表し、テスラの共同創業者が経営しているバッテリーリサイクル企業「レッドウッド・マテリアル」では、投資家から7億ドルを調達してネバダ州カーソンシティーの事業を拡大しており、すでに採掘よりも低いコストで使用可能な量の金属を回収できるとコメントしているので、見えないところでバッテリーのリサイクル事業がどんどん拡大しているのもまた事実であるようですね。

参考までに、国際エネルギー機関(IEA)は、現在の世界の電池のリサイクル能力を年間約18万トンと推定していますが、2019年に販売されるEVだけでも、最終的に50万トンの電池廃棄物が発生するといい、このままではリサイクルが追いつかなる可能性もありますし、もしかすると想定しているよりもさらにバッテリーの寿命が長くなり、リサイクルが不要なレベルのバッテリーが登場するのかもしれません。

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参照:EVANNEX

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