| 現在の自動車業界では「自社が立案した計画に基づき行動」することが難しく、法規制に何もかもが左右される |
今後の展開は(テスラのように)政治と一体化しながら進めるよりほかはない
さて、ドナルド・トランプ氏は「就任同日に、EVの税控除を廃止する」とコメントしていますが、アメリカにおける「EVの税控除」とは、輸入EVに対抗するため、「アメリカ国内で生産されたEVに対し、購入時に割引を行う」というもの(車両価格や米国内での部品調達率によっても控除の割合が異なる)。
そして一部の自動車メーカーは、この控除を見込んで米国内でEVを生産できるよう準備を整えていて、つまりは多大な先行投資を行っているわけですが、そのため「EVの税控除」が廃止されると(アメリカ国内での価格優位性を失ってしまうので)競争力がなくなってしまい、この投資が無駄になる可能性が出てくるわけですね。
自動車メーカー各社は「EVの税控除を継続するよう」ドナルド・トランプへと嘆願
そこで今回報じられているのが「フォード、GM、ステランティス、トヨタ、フォルクスワーゲン(VW)などの自動車メーカーが、来年1月に発足する次期トランプ政権に対して、電気自動車(EV)向けの税控除を維持するよう要請した」ということ。
この要請は自動車業界団体「自動車イノベーション連盟」を通じて書簡にて行われ、その中では「バイデン大統領のインフレ削減法の一環として提供されたこのインセンティブが、アメリカの自動車産業を世界的に競争力のあるものにした」と主張しており、アメリカの自動車メーカーが中国の競合相手から受ける脅威を強く意識している時期において、非常に重要な支援策だと記されています。
一方、同じ書簡の中で各自動車メーカーは「カリフォルニア州やその関連州の排出ガス規制が現在の自動車市場の現実と乖離しており、消費者にとってコストを増加させることへの懸念」も表明していて、これは「無理やり排ガス規制に対応させると車両コストが高くなり、あるいは車両の選択肢がなくなる」という(先日トヨタが発言した)内容。
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参考までに、バイデン政権は2035年にカリフォルニア州が内燃機関車の販売を禁止する予定であることを受け、排出ガス規制を厳しく設定していますが、しかし各自動車メーカーは「消費者がまだ内燃機関車やハイブリッド車を好む中で」EVを多く販売することでこれを達成しなければならず、これについも「現実的ではない」とコメントしているわけですね。
なお、ドナルド・トランプ氏が「EVに対して既に厳しい立場」を取っていることを考慮すると、トランプ政権が自動車メーカーに排出ガス基準の緩和を与える可能性が非常に高く、実際のところ、以前の大統領就任期間中に(ドナルド・トランプ氏は)オバマ政権時代の排出ガス規制を緩和したことがあり、かつ現在ではバイデン政権が導入した厳しい排ガス規制に反対する姿勢を示しています。
こういった流れを考慮するに、自動車メーカーの要望は「一部」聞き入れられて排ガス規制が緩和される可能性は小さくはなく、しかしEV優遇政策の継続については「ナントモ」といったところです(ここはイーロン・マスク氏の影響が色濃く出るであろう部分かもしれないが、ドナルド・トランプ氏はアメリカ生産を強く推進しているので、EV優遇が継続される可能性も小さくはない)。
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