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「エンジンパワー」「駆動力」について考える。「駆動ロス」とはなんなのか

2017/06/24

先日、シビック・タイプRの「シャシダイ計測結果がカタログ値の馬力より8%劣る」という件がありましたが、それに関連し「エンジンパワーと駆動力」についてもうちょっと考えてみたいと思います。
シビック・タイプRのエンジンパワーにおけるメーカー公称値は「320馬力」ですが、実際にシャシダイで計測すると「295馬力」となっており、「駆動ロス」を考えるとこの数字はかなり優秀なんじゃないか、ということですね。

おおよそ「駆動ロス」に占められる大きな部分は”摩擦”になると考えられ、あまりメーカーは公表していないものの、この部分の低減については各メーカーとも相当に注意を払っている、と推測。
ぼくはかつて日本車(FR)に乗っていた頃、フロアのトンネル部分がやたらと熱くなることについて「(FRはプロペラシャフトが通るので)摩擦が大きいのが理由」という説明をメカニックから受け「そんなものか」と考えていましたが、その後同じFRレイアウトを採用する輸入車に乗り換えたところ、ほぼこの「摩擦による発熱」がなく、「ああやっぱり輸入車はこういったところの精度が違うんだ」と感じたことを思い出します。

摩擦が大きいということはそれだけエンジンパワーを「損失している」と置き換えることができ、同じエンジンパワーだと摩擦が少ないほうが駆動効率がいい、とも言えますね。
となるといかにチューニングしたとしても「ロス」がある限りは何割かその「向上した馬力」も喰われることになり、「効果が得にくい」ということにも。

そういった経験もあり、ぼくは「速く走るにはそれなりの精度の車でないと」と考えるようになり、車のチューニングは車の素性によって費用対効果が異なる、と考えるように(当然駆動ロスの少ない車のほうがチューニングにおける費用対効果が大きい)。
つまりは無理してでもそれなりの精度を持つ車を購入するのが一番安上がりである、という結論ですね。

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なお一般に、発生したエンジンが駆動輪に伝わるまでFFで10~15%、4WDで20~25%ほどの駆動ロスがあるということを考えると、「駆動力に換算できる馬力」については610馬力のウラカン(4WD)が457~488馬力、580馬力のウラカンRWD(2WD)が493~522ということにもなり、ぼくが「ウラカンRWDのほうが速いのでは」と実際乗って感じたのはこのためかもしれません。

ウラカン4WDについて、後輪は「エンジン→トランスミッション(とデフ)→ドライブシャフト→車輪」、前輪は「エンジン→トランスミッション(とデフ)→プロペラシャフト(フロントへ伸びている)→フロントデフ→ドライブシャフト→車輪」。
文字の数だけでも、後輪のみの場合と前輪をプラスした場合では大きな差があることがわかりますが、これが「4WD化によるロス」と言えそうですね。

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ウラカンに採用される4WDシステム「ハルデックス5」はフロント:リアの駆動力を0:100~50:50まで変化させることができ、これは物理的に「後輪駆動化」できるということにも。
その場合、ロスを考えると「トランスミッションから前輪に駆動力を送るプロペラシャフト」の動きをカットしたほうが「より後輪への駆動力が大きく伝わる」ことになりますが、このあたりの実際における制御は不明。
↓こちらは同じレイアウトを持つアウディR8の構造

ただし、最近の欧州車は「コースティング」の多用によって燃費を稼ぐ傾向にあり、そしてCO2排出については(規制もあって)かなりシビアなので、「エンジンが発生したパワーを余すところなく伝える」「不要な部分はカットする(これがコースティングの多用に繋がる)」「摩擦抵抗を低減する」ことにおいて自動車メーカーは多大なる注意を払っていると考えていて、これはフォルクスワーゲン・アウディグループではとくに顕著な傾向であり、ウラカンにもおそらくこの考え方が導入されているのでは、と推測しています。

そう考えると車というのは単に出力だけで語ることはできず、レイアウトや駆動方式など「物理的・視覚に判断できる差異」のほか、「摩擦」のように目に見えない部分も非常に重要である、と言えますね。
まず手に入りそうはありませんが、1.エンジンパワーのグロス値、2.エンジンパワーのネット値、3.駆動輪に伝わるパワー(シャシダイ計測)という3つのデータがあれば、その車/メーカーにおける精度や効率を判断することもできそうです。

ちなみにEVの場合、4WD化するには(最小で)前後に1個づつモーターを積めばよく、かつトランスミッションもいらないので「非常に伝達効率が良い」ということになり、さらにはロールセンターを考えなければ「インホイールモーター」がもっとも駆動ロスが少ない、と言ってもよさそうです。
この意味においてもモーターはガソリンエンジンに比べて優れていると言えますが、現時点ではまだ課題も多く、技術の進歩がこれを解決してくれる、とは考えています(1899年に製造されたポルシェ最初の車、”ローナーポルシェ”はインホイールモーターの電気自動車であり、この意味でもポルシェの思想は群を抜いていたといえる)。

なお「エンジン出力(Engine Horsepower)」と「駆動力(Wheel Horsepower)」との差については、こちらの動画が比較的わかりやすく解説してくれています。

こちらは「トルク」と「パワー」の差。

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