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よく名前の出て来るベルトーネ。そのデザインや「なぜ消滅したのか」を考えてみる

2017/06/24

| ぜひとも後世に残ってほしかったが |

自動車史において外すことができない存在、「ベルトーネ」。
1912年にイタリア・トリノで創業し、1930年創業のピニンファリーナ、1968年創業のイタルデザイン同様に「名門」に数えられるカロッツェリアです。
カロッツェリアとは「デザイン工房」のことで、これはイタリア特有の形態と言え、「ギア」「トゥーリング(スーパーレッジェーラで有名)」「ザガート」もカロッツェリアに分類されます。

なおベルトーネ正式名称は「カロッツェリア・ベルトーネ」。
ただしこれは2008年に倒産しており、その後に「ベルトーネ・デザイン」として再出発を図るも2015年にこちらも倒産し、現在自動車業界の歴史から「ベルトーネ」の名は消えた状態に。

ベルトーネはランボルギーニ・ミウラはじめ多くの名車をデザイン

ベルトーネは上述のように1912年に初代のジョバンニ・ベルトーネによって設立され、その後は息子のヌッチオ・ベルトーネにバトンタッチ。
1960年代にはジョルジェット・ジウジアーロ、マルチェロ・ガンディーニといった実力派デザイナーを擁し、ランボルギーニ・ミウラやカウンタックのデザインを行うなど最盛期を迎えますが、その後ジウジアーロやガンディーニの独立もあり、ベルトーネは没落してしまいます。

なおガンディーニのベルトーネ在籍時における最初の作品が「ランボルギーニ・ミウラ(1966)」。

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コンセプトカー「カラーボ」もベルトーネ時代のガンディーニの作品ですね。

なおガンディーニ氏のデザインで最も有名な車の一つは「ランボルギーニ・カウンタック(1974)」。

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こちらはその前の「ストラトス・ゼロ(1970)」。
ガンディーニのデザインの特徴として、極端なウェッジシェイプとガルウイングドア(シザースドア)、リアホイールハウスの「非円形」デザインが挙げられます。

近代のランボルギーニ・アヴェンタドールはガンディーニのデザインではありませんが、カウンタックの雰囲気を引き継いでいることもわかりますね(とくにアヴェンタドールSではその色が濃くなっている)。

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そのほかベルトーネのデザインとして有名なのは「ランチア・ストラトス」、

ランボルギーニ・マルツァル、

フェラーリ・ディーノ308GT4、

モントリオールなどがありますが、ほかにもマツダ・ファミリア/ルーチェ、オペル・アストラ、シトロエンBX/XM/エグザンティア、フィアット・プントなどもベルトーネがデザインを担当。

なお、これらはおおよそ二代目の「ヌッチオ・ベルトーネ」時代の作品となりますが、ヌッチオ・ベルトーネはデザイナーとしてではなくマネージャーとしての手腕に優れていたようで、フィアット、マセラティ、フェラーリのレーシングカーの他、アルファロメオやランボルギーニの市販車を製造するなど父の代の「デザイン工房」から規模の大きな「自動車メーカー」へと会社を成長させており、倒産間際には「年産7万台の生産能力を持っていた」とされるほど。

ただ、ピニンファリーナ/イタルデザインの身売りの経緯同様ではありますが、「自動車メーカーがデザインと製造を外部に委託する」時代が終焉を迎え、自動車メーカーが自社でデザインと製造全てを行うようになるに至り、ベルトーネはその存在意義を失っていった、と言えるでしょう(昔の自動車メーカーは車体の設計を行ったりエンジンを作ったりというのが主な業務であり、外装のデザインやボディの製造は外部に委託、というのが主な流れ。それが近代に入り自動車メーカーが自社ですべて行うようになってきた)。

これは自動車業界の構造変化が生んだ悲劇とも言えますが、現在イタルデザインはVWアウディグループへと吸収され、ピニンファリーナはインドのタタに買収されることで存続。
そこでなぜベルトーネはどこにも助けてもらえなかったのか?ということですが、これは半端に「ベルトーネがこの構造変化に対応したから」だと考えています。
どういうことかというと、ヌッチオ・ベルトーネはその先見の明から「デザインだけではこの先危ない」と考えて「デザイン会社」から「自動車メーカー」へと脱却を考えたものの、ピニンファリーナとイタルデザインは「デザイン会社であり続けた」ことが明暗を分けたのだ、ということですね。

自動車メーカーはどこもデザインの重要性を理解しているので、優れたデザインを生み出す「デザイン会社(イタルデザイン、ピニンファリーナ)」は自社に欠けているものとして認識しますが、ベルトーネのように「自動車メーカー化」してしまったデザイン会社に対しては「自分たちと同じ」立場であり、吸収する理由に乏しいのだと思われます。

よって、もしベルトーネが「脱デザイン会社」を行わずに「デザイン会社」であり続けたならば、おそらくはどこかの自動車メーカー(中国あたり)が購入した可能性はあったかもしれず、しかし現実はそうではなかった、ということに。

実際にベルトーネが会社を閉鎖するにあたりその保有していた車両をすべてオークションにて処分していますが、ランボルギーニやアルファロメオ名義でデザインした車、ジウジアーロやガンディーニがデザインした車は非常に高額で落札されたものの、ベルトーネ名義のコンセプトカーほぼ予想落札価格に届いておらず、「有名メーカーや有名デザイナー抜きでの」ベルトーネの評価はデザインにおいてもさほど高くなかった模様。
これも「もし」ではありますが、ベルトーネがデザイン会社であることを固持しデザイナーを育成してデザイン力を高めていたならば、また違った結果になっていたのかもしれません。

なお比較的新しいベルトーネの作品としては「アルファロメオGT」。
同世代のアルファロメオ「145/147/155/156/166」はワルター・デ・シルヴァの作品だったので、ラインアップの中においてGTは異彩を放つ存在ではありましたが、独自の存在感を持っていたと思います。

2010年のジュネーブにおいては「パンディオン」も発表していますね。
「ベルトーネ」の商標はヌッチオ・ベルトーネ婦人が所有しており、かつてはその商標を借り受けた新会社「ベルトーネ・デザイン」が始動。
モスクワ、ドーハ、アゼルバイジャン、日本にオフィスを構えていますが、現在も活動しているのかどうかは不明です。

こちらはベルトーネの足跡をまとめた動画。

関連投稿:ベルトーネ・ミュージアム閉鎖へ。これでベルトーネも消滅へ向かうのか

ベルトーネ・ミュージアムの所蔵車が売却される意向で、いよいよベルトーネも閉鎖へ。
ベルトーネは90車種をデザインしたと言われますがとりわけランボルギーニとのつながりが深く、350GTVプロトタイプに始まり(プロダクションモデルはカロッツェリア・ツーリング)、ミウラ、マルツァル、エスパーダ、シルエット、ウラッコ、ブラーヴォ、カウンタックやディアブロなど。

そのベルトーネも2014年に倒産の憂き目に遭い、現在はファミリーを中心に再建中ですが、事実上再建は難しそうですね。

なお重要なデザインハウスとしてはベルトーネのほかジウジアーロ、ピニンファリーナがありますが、ジウジアーロのみが買い手がつき、ほかは買い手がつかないという状況。
それぞれが非常に高いデザインレベル、そして実績を持っているのですが、それだけ現在ではインハウスデザイナーのスキルが向上しており、外部にデザインを求める必要がなくなってきているということなのでしょうね。

参照:Bertone、, Betone(Instagram)

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