| グリル形状変更とともに内部が発光するようになり、さらには各パーツのブラック化対応、ヘッドライトは”スターライト”に |
ハイエンドメーカーでは「顧客の要求したカスタム」がのちにオプションとして反映されることが少なくない
さて、ロールスロイスが第8世代のファントム・シリーズIIに対し、顧客の要望やフィードバックを反映した「ライトタッチ」ヴィジュアル追加、そして美観を向上させるための改良を行ったと発表。
さらには新機能「ロールス・ロイス・コネクテッド」により、車両と会員制プライベートアプリケーション「Whispers」とをシームレスに連携させることができるようになり、新しいビスポークのマスターピースとしてファントム・プラティーノ(Phantom Platino)を追加するとアナウンスしています。
今回のアップデートについて、ロールスロイス社CEO、トルステン・ミュラー・エトヴェッシュ氏は「ファントムは、ラグジュアリーの頂点に立つ、比類なき存在です。ロールスロイス最高峰のデザイン、エンジニアリング、クラフツマンシップを代表するモデルであり、ビジョン、創造性、最高級の素材、技術、忍耐力、精密さが完璧に融合した製品でもあり、我々は、この最高級のラグジュアリーアイテムがさらにお客様に愛されるよう、その魅力を維持し、慎重に守っています。ファントムは常に世界最高の車と見なされてきました。私たちのビスポーク(カスタム)の能力は、お客様にとって、その世界にとって最高の車にもなり得るということを証明します」とコメント。
変えるべきものは変えず、守るべきものは守る
ロールスロイスのクルマは時代を超越したエレガンスを持つ最高峰のモデルとして認識されていますが、現行ファントムは2017年に発表されており、(シリーズIからの)モデルチェンジに際しては「すでにアイコンとなっているファントムにに大きな変更を加えないように」という、ロールスロイスに寄せられたクライアントの要望を指針とし、実際にこれらクライアントの要望に応えるため、デザインのタッチ、装飾などの変更は「わずか」にとどめられています。
ただしそれからも時代はどんどん変化し、同時に顧客の要望も変化してゆくことになりますが、新たな要望に対応するために変更が加えられたのが2023年のファントム。
フロントだと、パンテオン・グリル上のデイタイム・ランニング・ライトの間に新たに設けられたポリッシュ仕上げの水平ラインによって「ドライバーを重視するファントムの性格を反映し、新しく主張のあるモダンさが生まれた」といいますが、パンテオン・グリルの幾何学的な形状が微妙に変化し、正面から見たときに「RR」バッジとスピリット・オブ・エクスタシーのマスコットがより目立つようになった、とのこと。
さらにはゴーストで採用され好評を博したグリル内イルミネーションも追加されています。
なお、ヘッドライトには、レーザーカットされたベゼル・スターライトを採用し、スターライトヘッドライナーと一体化させ、ファントムの夜間の存在感をさらに高めることに。
たしかにこうやって見ると、ヘッドライト内のスターライトと、ルーフ内張りのスターライトとが一致して見えることに気づきます。
このほか、ロールス・ロイスの特徴であるショートフロントオーバーハングとロングリアオーバーハング、ロングホイールベース、(乗員のプライバシーを確保するための)広いCピラーはこれまで同様。
フロントフェンダーからリアドアに向かって緩やかにカーブする「スプリットベルト」ラインは、そのプロポーションを強調し、リアランプに向かって緩やかにカーブしています。
なお、ホイールに新しいデザインが導入されたことも2023年モデルのファントムの特徴のひとつで、3D加工ホイール(上の車両に装着されているもの。素材はステンレススチールだとプレスリリースにて紹介されている)はフルポリッシュもしくはパートポリッシュを選択でき、さらには1920年代のロールスロイスをイメージさせるディスクホイールも用意されています(やはり素材はステンレススティールで、こちらはポリッシュもしくはブラックラッカーが選べる)。
ちなみにこの「ディスクホイール」は近年流行の兆しがあり、これから発売されるプレミアムカーに標準装着されたり、アフターパーツメーカーからもいくつか発売されることになるのかもしれません。
クロームグリル、ウィンドスクリーン、サイドフレームフィニッシャーなどは標準だと「ポリッシュ仕上げ」となり、しかしここをブラックにしたいという要望が多く寄せられていたため、ロールスロイスはこれに対応することにしたそうですが、これら部位の変更によって大きくその表情を変えることができ、これまで以上にカスタムの幅が広がりそうですね。
参考までに、ロールスロイスの細部までを「真っ黒」に塗るよう最初にオーダーしたのはジョン・レノンだとされ、その要望に対しロールスロイスは「グリル内部はシルバーのままにする」ことを条件に応えることに。
そして現代の「ブラック化」においてもグリル内にはシルバーが残されているので、ここだけはどうしても譲れないということなのでしょうね。
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ちなみにこの画像では、装着されるスピリット・オブ・エクスタシーが「金」。
この形状については(一部例外を除き)変更できないものの、素材については純銀やカーボンなど、これまでには様々なものが採用されているようですね。
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一方、2023年モデルのロールスロイス・ファントムのインテリアは「ほぼ変更なし」
エクステリアに数々の変更が加えられたのに対し、新型ファントムのインテリアは「ほぼこれまでと変わらず」、ステアリングホイールがわずかに太くなったのみとアナウンスされていますが、これはそもそも「変える必要がないくらいの高みにすでに到達している」ということを表しているのかもしれません。
ロールスロイスによれば、その顧客は「世界中のエリート」だといい、その分野においてトップに位置し、世間の注目を浴び続ける人たち、さらには確固たる意志を持ち、要求の高い人たちだとも。
そしてこういった人々がロールスロイスを選び、ロールスロイスに対して高いカスタムレベルを要求するのは決して偶然ではないとも主張しており、よってファントムはその誕生以来、常にクライアントが望むもの、つまり「世界最高のクルマ」であるだけでなく、その人とその世界にとって最高のクルマであり続けている、と紹介されています。
さらにファントムの顧客には「典型的な」顧客は存在せず、若い人から年配の人、現代的な人、伝統的な人、自営業、テクノロジー産業もしくは老舗産業に携わる人など、「ラグジュアリーの両極」にまたがる人たちだとされ、そのために依頼内容は多岐にわたり、「破壊的で反抗的な性格を帯びている」とも。
現代において成功を維持することは難しく、長期にわたり成功している人はなんらかの挑戦を続けている場合が大半であり、いわば「過去を破壊しながら」前に進む人々であって、「過去の成功体験にとらわれている」人ではないかもしれません。
そしてそういった人々が前衛的なカスタムを求めるのは至極当然のことなのでしょうね。
その意味では、8代目となる現行ファントムは「白紙のキャンバス」だといい、そこに顧客が望むスタイルと個性を反映することになるわけですが、そのため納車時の価格(乗り出し価格)はロールスロイスの掲げる車両本体価格を遥かに超えることになり、これまでに見られた個体では「その数倍」という例も珍しくはないもよう。
ロールスロイス・ファントム・プラティノは「シルクのインテリア」
そして今回、2023年モデルのファントムとともに発表されたのが「ファントム・プラティノ」。
これはロールスロイスの(レザーではない)ファブリック・インテリアへ追求を表現したクルマで、2015年に発表された、ハンドペイントと手刺繍が施されたシルクのインテリアを持つ「ファントム・セレニティ」の延長線上にある一台。
ファントム・プラティノのフロントシートこそはロールスロイスの上質なレザーで仕上げらるものの、リアシートは「非レザー」のファブリック。
イタリアの工場で作られた丈夫で高級感のあるファブリックと、竹繊維から作られた光沢のあるファブリックの2種類を組み合わせることで、美しいトーン・オン・トーンに仕上げられ、いずれの素材も「スピリット・オブ・エクスタシー」を抽象的に解釈したオリジナルの文様を採用しています。
シルクのテキスタイルでは、柄を小さくして生地へと立体的に織り込み、竹ベースのファブリックには大きめのアイコンが刺繍され、家具にてよく見られるタフト(房)模様のような仕上がりに。
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トルステン・ミュラー・エトヴェッシュCEOは「私たちは、お客様がファントムに敬意を払い、愛着を持っていることを心から感じています。もちろんその意見を尊重することは当然ですが、完璧を追求するために、さらに上を目指すことを常に心がけ、実際にそれが必要であると信じています」と語っており、ロールスロイス設立者であるヘンリー・ロイス卿が言ったように、「小さなことが完璧を生むが、完璧は小さなことではない」のでしょうね。
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参照:Rolls-Royce