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「ボクがBMW史上最高のM」と考える新型M2に試乗してきた。M3ともM4とも異なる新世代の制御や思想を盛り込み、ライバル不在のオンリーワンなスポーツカー

「ボクがBMW史上最高のM」と考える新型M2に試乗してきた。M3ともM4とも異なる新世代の制御や思想を盛り込み、ライバル不在のオンリーワンなスポーツカー

| これほどまでに「先ゆくクルマが道を譲ってくれる」クルマには乗ったことがない |

新型BMW M2はポルシェよりもフェラーリに近いフィーリングを持っている

さて、BMW M2(G87)に試乗。

現在ぼくはクルマの買い増しもしくは買い替えを検討していますが、その中で候補に入ってくるのがBMW M2です(ぼくの中ではアルピーヌA110と真っ向から競合している)。

EV(テスラ・モデル3やBMW i4)やPHEVも購入候補となっているものの、純粋なガソリン車に乗ることができるのもそろそろ最後なんじゃないかとも考えていて、であれば今PHEVやEVを選ぶ必要はないんじゃないかとも考えているわけですね(一方で経済性を理由としてEVやPHEVという選択肢も残る)。

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BMW M2はこんなクルマ

そこでなぜM3でもM4でもなくM2かというと、「程よいサイズを持っており、(ぼくにとって)行き過ぎの性能ではなく、価格とのバランスがいいから」、そしてM3やM4に比較して「デザインが個性的だから」。

加えて、どこへ乗って行っても気後れすることなく、さらには「おっ、M2」といった感じで一目置かれるんじゃないかとも考えています(注目されたい訳では無いが、軽んじられたくはない)。

そこでまずスペックから見てみると、全長4,580ミリ、全幅1,885ミリ、1,410ミリ、ホイールベースは2,745ミリ、車体重量は1,730kg。

搭載されるエンジンは3リッター直6”Mツインパワー”ターボ(S58B30A)で最高出力460馬力、最大トルクは550Nmを誇ることに(試乗車は8速AT)。

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車体デザインはBMWの中においても非常に独特であり、ベースとなる2シリーズはもちろん、M3ともM4とも関連性が薄い外観を持っていて、文字通りM2固有のデザインを持つという認識です。

とくにフロントバンパーの大きなインテークやフレームレスグリルなどにそういった特異性を見出すことが出来ますが、ぼくとしてはMファミリーの中でもっともこのM2のデザインを気に入っています。

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ちなみにこの「Mミラー」は室内から見た時に独特の景観を与えてくれ、「Mモデルを運転している」という強烈なインパクトが感じられるデザイン。

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このブリスターフェンダーは車外から見ても、そしてミラー越しに見てもまさに「圧巻」。

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BMW M2で走ってみよう

そこでさっそくBMW M2の試乗を開始することになりますが、座席に腰を下ろして感じるのはシートの柔らかさ。

スポーツモデルとしては異例のクッション性を誇るように感じられ、しかしけっこういいぐあいに体が沈み込み、落ち着いたドライブが出来そうです。

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その後はエンジンを始動させてミラー類そしてシートポジションなどをあわせ「いざスタート」となりますが、トランスミッションが8速のトルコン式ATになったといえど扱い方は先代までのDCTと変わるところはなく、ブレーキペダルを離したのみではクリープは発生せず、しかしアクセルペダルをチョンと踏めばクリープとともにクルマが進み出します。

各種ペダルやステアリングホイールの操作感は軽く(正確に言えば軽いと感じるほど極端に軽いわけではなく、しかし重さや抵抗を感じさせない適度な軽さ)、そして狭い路地でもけっこう小さく曲がるようですね(最小回転半径は5.2メートル)。

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試乗ルートは一般道~高速道~ワインディングといった感じで結構な距離と時間を走らせていただいていますが、まず加速については460馬力「以上」のパワーとトルクが感じられ、ほぼターボラグは感じられないという印象(皆無に近い)。

なお、エンジン音の(室内への)侵入は程よく抑えられ、振動についてはほぼ皆無です(内装のビビリ音も完璧に抑えられている)。

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ただしシフトアップ時に一瞬発生する「ボッ」という音(エキゾーストサウンド)の音圧がすごく、これが鼓膜を圧迫することで「いかにもガソリン車に乗っている」という印象を与えてくれ、もちろんシフトダウン時にはブリッピング、そしてアクセルオフではバブリングが発生することに。

ただし、一部のクルマにありがちな過剰な演出がないことは非常に好ましく、まさに気負いなく走れるといった印象も。

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足回りについてはM3やM4での「硬さ」に比較してM2では「しなやかさ」が強調され、これは今までのKW製ショックアブソーバーから「ビルシュタイン+アイバッハ」へと変更されたことに起因するのかもしれません。

そしてその姿勢は常に「フラット」で、ほぼロールやピッチを感じさせず、文字通り「狙ったラインを外さず、そのままトレースする」という表現がマッチしており、「これはちょっと切り足しが必要かも」と思えるきついカーブでも難なく旋回してしまい、とんでもなく高いコーナーリング性能を持つクルマでもありますね(ぼくの腕ではとうてい限界に到達できない)。

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なお、面白いのは車載カメラが道路のカーブを検知して適切なシフトを自動的に選択することで、気がつけば勝手にシフトダウンしていることも多く(トランスミッション、カメラシステムともZFが製造しており、両者が連動している)、いつでも適切なギアが自動的に選択されていることには驚かされます。

さらに特筆すべきは「ブレーキ」であり、スチールローターということもあって非常に扱いやすく、かつ前後のブレーキバランスやサスペンションとの連携もあってか、強くブレーキペダルを踏み込んだとしてもノーズダイブを見せずにすっと減速し停車することが可能です。

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BMW M2は新世代のMである

しばらく走ってみて思うのは、このM2はこれまでの、そしてほかのMモデルとは全く異なるクルマであるということ。

それは「新世代のM」だと言ってよく、ドライバーに負担をかけずに速く走れるように設計されているように感じます。

たとえば、ステアリングホイール、各種ペダルやパドルの操作感が非常にライトであり、操作に際して力を入れる必要がなく(体の特定部位に力を入れると姿勢が狂うことがあるが、その心配がない)、サスペンションは上述のように柔らかく、しかし超フラット。

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さらにブレーキも踏んだら踏んだだけ速度が落ち、アクセルを踏んだら踏んだだけ加速し、さらには勝手にギアも選んでくれているので、ぼくらドライバーが主に注意を払うのはステアリングホイールの操作だけ。

つまり、ブレーキペダル調節しながら踏んで減速しつつ荷重を移動させ、アクセルペダルを繊細にコントロールしながら駆動力でもって車体を曲げてゆくということを考える必要はなく、ただステアリングホイールを切れば(常識的な速度の範囲であれば)どんなカーブでも曲がってしまうのがこのM2です。

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振動はなく、ピッチもヨーもほとんどなく、ただただ「なにごともなく」加速したり減速したり曲がったりするということですが、これは(アクチュエーターの付いていない)レーシングシミュレーターに座ってクルマを運転しているような感覚だと言い換えていいかもしれません。

ただ、ぼくはこれに対して否定的な見解を持っておらず、というのも現在フェラーリもその方向へと動いているように思われ、「目は路上に、手はステアリングホイールに」というモットーを追求すべく、そのほかのことに関してドライバーが何も考えなくていいように変化しているからで、この方向はひとつの大きなトレンドであると捉えることが可能です。

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そしてこれはもちろん、パワフルでリニアな出力を持つエンジン、シームレスに動作するトランスミッション、さらには優れた電子制御(ABSやトルクベクタリング/電制デフなど)によって可能となった新しい方向性であり、ドライバーにとっての「新しいスポーツカーの楽しみ方」であるともぼくは考えているわけですね。

その意味において、これまでのスポーツカーではドライバーが「はしる、まがる、とまる」をコントロールしていたものの、これからのスポーツカーだと「はしる」と「とまる」はクルマに任せ、ドライバーは「まがる」のみに注力するようになるのかもしれません。

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そして、これまでのMモデル、そして現行M3やM4が「はしる、まがる、とまる」という動作をドライバーが楽しむものだとすれば、このM2は「まがる」ことだけをドライバーが考えていればいいという新世代のクルマであり、「アマチュアとプロフェッショナル」とのタイム差が(これまでのMに比べ)大きく開きにくいクルマだと考えています。

つまりは乗りやすく、誰でもで速く、そして安全に走らせることができるようになったクルマだとも捉えており、スポーツカーにありがちな「苦行」を要しないハイパフォーマンスカーがこのM2ということに。

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もちろんこれをヨシとしない人、そしてアナログなタッチを好む人も少なくないことも理解していますが、ぼくはそういった「苦行」を理解し愛する一方、テクノロジー愛好家でもあるので、こういった新世代のクルマに対しても強い魅力を感じています。

そしてぼくの判断としては、このM2は史上最高のMモデルであり、とんでもなく楽しく、そして快適で、これまでのM2やM3、M4が「ポルシェ的(あるいはポルシェのライバル)」であるとすれば、新型M2は「フェラーリ的」。

もしくはBMW M2独自の「スポーツカーに対する回答」を体現したクルマだと言ってよく、比較対象が存在しない「オンリーワン」のスポーツカーだと思います。

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参考までにですが、高速道路の追い越し車線を走っていると(もちろん法定速度で)、トラックでも乗用車でもどんどん道を譲ってくれるという経験が印象的であり、このM2がミラーに映った姿はさぞかしコワモテだったのかもしれません。

そしてもう一つ参考までに、かつてのBMW「2002ターボ」のフロントスポイラーに貼られた「Turbo」ステッカーは表裏反転しており、これは「ミラーに映った時に正転して見えるから」。

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BMWはこれによって先行車にプレッシャーを与えることを意図しており、さらに4シリーズのジャンボキドニーについても「ミラーに映る姿を意識している」とそのデザイナーが語っているので、M2に関しても同様に、先行車のミラーに映る姿を想像しながらデザインがなされたのかもしれません。

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今回BMW M2を試乗させていただいたのはBMW箕面さんにて。

大変お世話になり、お礼申し上げます。

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