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ポルシェが3年以上かけて元F1ドライバーの所有する959をレストア!世界に29台しかない希少「スポーツ」グレード、「静止保管だとトラブルが出るので月に100キロは運転して」

2022/07/05

ポルシェが3年以上かけて元F1ドライバーの所有する959をレストア!世界に29台しかない希少「スポーツ」グレード、「静止保管だとトラブルが出るので月に100キロは運転して」

| ポルシェ959は構造やメカニズムが非常に複雑であり、そのため維持コストが非常に高額だと言われている |

もちろんニック・ハイドフェルドにとってコストは問題とはならない

1986年に登場したポルシェ959はその高額さだけではなく、トルクスプリット4WDなど革新的な装備を有し、当時世界で最も優れた加速と最高速を誇るクルマとしても知られていますが、その生産台数はわずか292台、そのうちスパルタンな「スポーツ」バージョンに至ってはわずか29台のみの生産にとどまります。

そしてその29台のうちの1台を所有するのが「クイック・ニック」として知られた元F1ドライバー、ニック・ハイドフェルド(ル・マン24時間レースやフォーミュラEにも参戦経験がある)で、今回は3年をかけてレストアを行った同氏所有のポルシェ959S(スポーツ)がポルシェよりじきじきに紹介されることに。

ポルシェ959はこんなクルマ

ポルシェ959は1986年に発表され、当時のポルシェにおける「技術の粋を集めた」とも言えるクルマ。

ブループBでの勝利を目的としてポルシェの持つテクノロジーが集結され、エンジンは2.85リッター・フラット6(ツインターボ)、その出力は450馬力、トランスミッションは6速MT、0-100キロ加速は3.7秒、最高速度は314キロを誇ります(1986年のパリ・ダカールラリーでは3台の959が出場してすべて完走し、1位、2位、6位でフィニッシュしている)。

同時期に発売されたフェラーリF40と比較されることも多い一台ですが、最高速度はフェラーリF40の「324キロ」に対してやや遅れをとる一方、加速タイムはポルシェ959の方が優れていた、とも言われていますね。

加えて、「そのままレースに出場できる」ことを目指して開発された簡素なフェラーリF40に対し、ポルシェ959は車速感応・調整式ショックアブソーバー、セルフレベリングサスペンション、ドライビングプログラム選択機能付き電子制御可変全輪駆動、ABS、タイヤ圧モニターシステム(いずれも現代では珍しくないが、当時としてはあまりに未来的だった)を持っていたというコンセプト上の大きな相違も興味深く、それでいてパフォーマンスが似ているところも面白いと思います。

生産台数は上述の通り292台(予定は200台だったものの、高い人気に対応して増産された)とされ、採用された数々の先進装備の中においても、そのトピックは「トルクスプリット4WD」であるのは間違いなく、これはのちに簡易版が「カレラ4」に転用されており(959の4WDシステムはあまりに高価だったので、そのまま転用できなかった)、日産GT-Rの採用する4WD(アテーサ)もこれを参考にしたものだとされています。

ボディは空力的に最適化され(Cd値は0.31)、この設計には航空機の設計技術が導入されたほか、ボディパネルはケブラー繊維とガラス繊維強化エポキシ樹脂とのハイブリッド構造、フロントスポイラーはポリウレタン一体発泡材、ドアとボンネットは特殊なアルミニウム合金製(ボディサイズは全長4260ミリ、全幅1840ミリ、全高1240ミリ、ホイールベースは2272ミリで、今では驚くほどコンパクトに感じる)。

搭載される2.85リッター・フラットシックスエンジンには「市販車初の」シーケンシャルツインターボを架装してターボラグを低減しているほか(フェラーリF40はドッカンターボであり、この差もやはり面白い)、チタン製コンロッド、ナトリウム封入といったパーツも採用されています(シリンダーは空冷、バルブヘッドは水冷)。

なお、ポルシェ959の総生産のうち(29台の”スポーツ”を除くと)ほとんどは快適装備を追加した”コンフォート”。

ポルシェ959を買い求めたオーナーのうち29人しか”スポーツ”を選ばなかったということになりますが、それもそのはずで、959スポーツにはパワーウインドウ、集中ドアロック、オートエアコン、リアシート、助手席側ドアミラー、セルフレベリングサスペンションが(軽量化のため)装備されず、そのため車体重量は959コンフォートに比べて100キロ軽い1350kgをマークしています(この内容を見ると、”スポーツ”というよりも”レーシング”のほうがふさわしい)。

加えて959コンフォートに比較してターボチャージャーの容量が大きくなり、これに伴って出力は515馬力/561Nmへと引き上げられ、その最高速は339km/hに達することになり、当時としては圧倒的な性能を誇ったスポーツカーだったわけですね。

加えて、959の開発や製造にて培われたテクノロジーの多くがのちのポルシェの市販車にフィードバックされていることもわかり、その意味でも959はエポックメイキングな存在だったと言えそうです。

最低でも月間100キロは運転することが望ましい

このニック・ハイドフェルドのポルシェ959Sは走行距離わずか4183kmだといい、そのライフのほとんどをガレージで過ごしてきたことが伺えます。

そしてニック・ハイドフェルドは2017年にこの959をポルシェのクラシックカー担当部門「ポルシェクラシック」にて預けレストアを開始したそうですが、その時点ではじめて「ECUが純正ではない」ことを知らされたのだそう(中古にて車両を入手したためだと思われる)。

ただしこのECUについては純正品へと入れ替えることで問題を無事に解決でき、その他モロモロの整備を行ってようやく完成したのが2021年末、そして今回ようやくこのポルシェ959Sがニック・ハイドフェルドへと引き渡されることとなったようですね(ニック・ハイドフェルドは996世代の911GT2やカレラGTも所有している)。

なお、ポルシェ・クラシックの工場修復責任者であるウーヴェ・マクルーツキー氏によれば「長い間運転されていなかったので、ドライブトレーンの油膜に問題が生じ保管上のダメージが見られ」、そのため大規模なオーバーホールが行われることになり、静止状態のダメージを回避するため、少なくとも月に100キロ程度は走行することが好ましいとも語っていますが、現実的にはなかなか難しいのかもしれません(走行距離が伸びることを嫌うオーナーもいる)。

ちなみにですが、ポルシェ959のメンテナンスは非常に(技術的に)複雑だといい、購入のハードルが高いことはもちろん、維持するための費用がずば抜けて高額であることも知られています。

自身のポルシェ959を受け取ったニック・ハイドフェルドは「ポルシェ959は当時からして非常に先進的なクルマであり、だからこそ今でも現代のクルマのように走らせることができる」と語り、数々のスポーツカー、クラシックカーを運転してきた中でも”ポルシェ959は特別な存在である”とも。

さすがは「F1参戦によって最初に得た報酬で」ポルシェ911GT2を購入した人物だけのことはある、といった感じですね。

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参照:Porsche

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