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フェラーリ288GTO / F40の生みの親、ニコラ・マテラッツィ氏が83歳で亡くなる。ランチア・ストラトス、ブガッティEB110の開発や生産にも関わった生粋のカーガイ

2022/08/26

フェラーリF40

| またひとつ、巨星墜つ |

思えば1970-1980年代は「大御所」が活躍した時代であり、またその土壌があった

フェラーリF40生みの親とも言われるイタリアのエンジニア、ニコラ・マテラッツィ氏が8月23日、83歳で死去したとの報道。

ニコラ・マテラッツィ氏は、ランチア、フェラーリ、ブガッティ(EB110を発売したイタリアのほう)等にて歴史に名を残すクルマの開発を行ってきたと報じられており、またひとつ巨星が堕ちたということになりますね。

同氏の略歴としては、1939年に南イタリアのサレルノ県で生まれ、ナポリ大学で工学を学び、その後1960-1970年代にはランチアに在籍しフラビア、フルビアといった乗用車のほか、ランチア・ストラトスの開発ではパワートレイン、シャシーセットアップ、エアロダイナミクスを担当することに。

その後フェラーリでは288GTOの開発も

その後同氏はフェラーリへと活躍の場を移し、1984年の288GTO、1987年のフェラーリF40の開発に参加することになりますが、(実際の状況は不明ではあるものの)ランチア・ストラトスの開発経験を買われ、グループBへと参加するための「288GTO」を製作するためのフェラーリが引き抜いたのかもしれません。

グループBは1980年代に人気を博したモータースポーツ上のカテゴリですが、恐ろしく改造された市販車たちが異常なスピードで駆け抜けることで人気を博しており、フェラーリとしてもこれに乗じる必要があると考えたのか、そこで開発されたのが(グループB参戦用車両のホモロゲーション取得のための市販車である)288GTO。

ただしグループBは事故多発のために(288GTOが発表された頃には)カテゴリごと閉じられてしまい、よって288GTOはその参戦の場を失ってしまうことになりますが、それでも「モータースポーツ用に開発された車両のロードゴーイングバージョンが販売される」ということで大きな人気を集め、結果的に(ホモロゲーションを満たすには200台で足りたものの)272台が販売されることとなっています。

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ただ、この「288GTOがフェラーリのエンスージアストに受け入れられたこと」はフェラーリにとって意外かつ重要な事実であったといい、ここから「スペシャルモデルは一つのビジネスとして成立する」と捉えられることになり、そこで登場したのがF40というわけですね(このスペシャルモデルのシリーズ化は現代に至るまで続いている)。

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フェラーリを辞した後にはブガッティへ

そして1990年代はじめに、ニコラ・マテラッツィ氏はロマーノ・アルティオーリ氏が復活させたアウトモビリ・ブガッティ(現在のフォルクスワーゲン傘下にあるブガッティとは別会社)へと移籍し、ここではかの有名なEB110GT、EB110SSの生産者における技術責任者を務めており、このアウトモビリ・ブガッティが倒産した後も自身の情熱を捨てきれず、ブガッティの廃工場からEB110のスペアパーツを引き取り「エドニス」の開発を引き受けたことも。

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このエドニスはBエンジニアリング名義にて開発され、21台が生産されると言われたものの、実際に生産されたのかどうかは一切不明。

基本構造はブガッティEB110を踏襲しますが、クワッドターボはツインターボへ、駆動方式は4WDから2WDへと変更され、よりスパルタンな性格、そして外観を持っています。

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ニコラ・マテラッツィ氏へのインタビュー動画はこちら

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参照:Davide Cironi, CARSCOOPS

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