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日産が電動化パワートレーンに対する新しいアプローチ「X-in-1」を公開!「開発・製造コストを30%削減する」。中国製の安価なEVに対抗か

日産が電動化パワートレーンに対する新しいアプローチ「X-in-1」を公開!「開発・製造コストを30%削減する」。中国製の安価なEVに対抗か

| まさかの「中国」という伏兵の出現によって、多くの自動車メーカーの計画が狂ってきているものと思われる |

このままだと普及価格帯のEVは中国製電気自動車に飲まれてしまうだろう

さて、トヨタは「このままでは他の自動車メーカーのつくるEVのコストに太刀打ちできない」としていったん電動化計画を白紙に戻し、競争力のある電気自動車を新しく開発する計画に移行すると言われていますが、今回は日産が電動化パワートレインに対する新しいアプローチについて発表し、開発・製造コストを30%削減すると同時に、e-PowerモデルとICE(ガソリンはじめ内燃機関)モデルの価格同等性を実現するという計画を明らかにしています。

もちろんこのe-Powerとは、小型ガソリンエンジンを使用してバッテリーを充電する日産独自のパワートレインのことを指していますが、この技術は現在アメリカでは利用できない、とのこと。

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日産の新しいアプローチは「X-in-1」

この日産の新しいパワートレイン開発アプローチは「X-in-1」と名付けられ、さらに3-in-1と5-in-1のアプリケーションに分けることができます。

3-in-1アプローチでは、モーター、インバーター、減速機をモジュール化してEVに使用(これは主にアメリカで用いられることになるものと思われる)。

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一方で5-in-1は、発電機と増速機をモジュール化したもので、e-Power技術を搭載した日産車に適用されるもの。

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X-in-1アプローチでは、これらのコアコンポーネントを同じ生産ラインにて製造することで製造効率を向上させコストを下げることができるといい、パワートレイン全体の小型・軽量化や、重希土類元素の使用量を磁石の質量の1%以下に抑えるなど、さまざまなメリットを挙げています。

パワートレインとEVの技術開発を統括する役員によると、今回の計画には「10年以上にわたって日産が電動化技術の開発・生産で培ってきたノウハウが活かされている」。

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さらには「電動化パワートレイン開発の革新を通じて、お客様に新しい価値を創造し、100%モーター駆動のクルマであるBEVや、e-POWER搭載車を可能な限り広くお届けする予定です」とも語っているので、日産は今後さらに電動化姿勢を強めてゆくことになりそうですね。

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現在、EVは「コスト競争」へと突入

なお、現在のところEVに対する考え方は様々で、トヨタやBMWのように「EVのみに注力しない」グループ、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンのように「EVに特化しようとする」グループが存在し、しかしEVに関しては中国製電気自動車、そしてテスラの製造コストが非常に安いため、日米欧の自動車メーカーが作るEVはこれらに対応することが困難で、特に中国市場ではメルセデス・ベンツやフォードが値下げを強いられている状況です。

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この「中国製EVに対抗できない」傾向はとくに普及価格帯のクルマに顕著であり、ステランティスのカルロス・タバレスCEOはこの状態について大きな懸念を示していて、もしかすると今後この価格帯のEVは中国の自動車メーカーに占拠されてしまい、日米欧の自動車メーカーは「それ以外」しか生き残る道がなくなるのかも。

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たとえばメルセデス・ベンツのように「高級路線」にシフトして台数ではなく利益を追求するのか、それともトヨタのようにEV以外の選択肢を提供するかということになりそうですが、この状況においてEVのみにシフトしてしまうと中国の自動車メーカーに淘汰されてしまう可能性もありそうですね。

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もちろん日産も同様の懸念を抱いていて、よって今回、電動車化車両を可能な限り効率的に生産する方法を見出しそうとしたことにも納得がゆきますが、日産のほかだと、フォードではマスタング・マッハEなどのEVに対し、現行のバッテリーより40%も安い新しいリン酸鉄リチウムバッテリーを導入するといった対策も。

つまり将来の成功は「いかにコストを下げるか」にかかっていると考えてよく、さらに日産にとって、今回のX-in-1のアプローチは、インフレ抑制法の要件を満たす計画と密接に関係しており、2026年までに7,500ドルの税額控除をフルに受けることができるEVをアメリカで4車種製造する計画を実現できるかどうかがここに依存しています。

そしてこのX-in-1のアプローチが奏功したならば、3年後、日産の新型EVは価格競争に勝利しているものと思われます。

Nissan

日産が公表した「X-in-1」計画の概要はこちら

参照:Nissan

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