レクサスRXに試乗しました。
結論からいうとSUV/オフローダーとしてではなく、背が高く見晴らしが良いサルーンとして開発されたという印象を受け、その観点から見ると非常に優れた車である、ということ。
試乗車のグレードはRX450h(AWD)、バージョンL。
サイズは長さ4890幅1895高さ1710ミリ。
相当に大きなモデルで、ほかのレクサス車と並んでいる姿を見てもかなり大きな印象です。
外観はNXに端を発するアグレッシブなもので、「価格帯を考えると相当に冒険的」と言えます。
NXとの大きな相違としてはリアサイドウインドウのグラフィックが異なることで、BMW i シリーズでいう「ストリームフローライン」のようなデザインに。
Cピラーをウインドウ(と連結するパーツで)で分割する、という最近の日産が好んで用いる流行のデザインでもありますね。
エンジンはV6/3500ccで出力は262馬力、フロントモーターは167馬力でリアモーターは68馬力。
基本はFFで、2リッターモデルAWDの場合はプロペラシャフトによって後輪が駆動されますが、ハイブリッドモデルのAWDだとエンジンの出力を後輪に伝える機構はなく、後輪はモーターのみによって駆動されます。
その場合フロント429馬力、リア68馬力というバランスなので後輪はアクティブに機能するというよりはアシスト的な役割にとどまる、と考えて良いでしょう。
機能面でのNXとの相違は「剛性」と「乗り心地」とのことで、サスペンションを柔らかい味付けにしながらもスタビライザーで姿勢を制御し、フラットな乗り心地を目指している、とのこと。
そして最近の車らしくエンジン、ブレーキ、ステアリングを統合制御するシステム、それを変化させるドライブモード制御(5つのモード。ブレーキはとくに変わらない)も搭載。
ノーマル、エコ、カスタマイズ、スポーツ、スポーツプラスがあり、スポーツ以上になるとメーター表示やアクセル開度に対する加速、ハンドリングが変化します。
安全性においてはプリクラッシュセーフティ、レーンキーピングアシスト、オートマチックハイビーム、レーダークルーズコントロール等が装備され、このあたりはレクサスだけあって最高のものが備わっていると考えられますね。
とりあえず車を見ていても始まらないのでさっそく試乗。
まずは車に乗り込みますが、シート位置はけっこう高め。全高1710ミリというサイズを考えても高めと言え、レンジローバー・イヴォーク(全高1605)、ポルシェ・マカン(同1624)と比べても数字の差以上に高いようです。
つまりはヘッドクリアランスが小さいということになりますが、まさにそのとおりで、これは視界を確保するためと考えられます(もしかすると欧米仕様は背の高い外国人向けにヘッドクリアランスが大きい=シートが低いのかもしれない)。
そのぶん視界は相当に良く、とくに前の見切りはハイエースかと思えるほどクリアですが、逆に慣れるまでは視点の高さに戸惑うことに。
エンジンを始動させても非常に静かで音や振動は「皆無」と表現しても良いでしょう。
先日乗ったロールス・ロイス・ファントムに比べてもこれは全く劣らないところで、これはちょっとした驚き。
シートの硬さもちょうどよく、レクサスNXで感じた座面の柔らかさ(柔らかすぎる)も気にならず、ぼくが今までに乗った車の中でも屈指の出来を誇るシートですね。
座面は低反発と高反発ウレタンをうまく組み合わせたような座り心地で、レンジローバーのシートに近いかもしれません。
正直これは「おっ」と驚きつつも感心したところで、レクサスRXの美点の一つ。
内装のデザインは一見地味ですが非常に高級感があり、液晶もつや消し仕上げとなっていて安っぽさは微塵もありません。
このあたりもスポーティーなNXと差別化を図ったところだと思われますね。
ディーラーから道路に出ますが、このディーラーの出口はちょっとした段差があり、車のサスペンション性能が試される最初の試練とも言えますが、これも難なくクリアし、素性の高さが感じられます。
登り、下り、カーブ、ある程度速度の出るところ、と走らせますが、シフトショックは皆無、ノーズダイブやリフトっといった姿勢の変化も非常に少なく、ロールも最小限。
コーナリング初期はちょっと車体が傾き、視点の高さもあって怖いと感じることもありますが(ウラカンで試乗に行ったので、視点に差がありすぎたためと考えられる)、そこから沈み込んだり揺り戻しがあることはありません。
レクサスが目指した「フラットな乗り心地」は嘘偽りなし、ということですね。
外観こそはSUVですが、考え方としては「車高の高いサルーン」と捉えたほうがよさそうで、そう考えるとFFベース、というのも納得できます(オフローダーではない、ということ)。
SUV/オフローダーとしての性能はLXに委ね、RXでは快適性を追求したということなのかもしれませんね。
よくよく考えるとSUVオーナーのほとんどはオフロードを走りませんし、SUVルックだからといってオフロード性能を備えている必要性も無いわけです。
レクサスNXではちょっと足回りに不満があり、固く締め上げることでロールを抑えたものの突き上げが固くなってしまい、それをカバーするためにシートを柔らかくしている、という印象を受けました。
しかしレクサスRXでは基本構造をしっかりと見直し、よく動くサスペンション、それでいて安定する姿勢、適度な硬さを持つシート、という優れたバランスを持っているようです。
なお重量は2100キロとかなり重く、ジャガーF-PACEの1700キロと比較するとかなり重くなっています。
そのため加速に移るとちょっとモタつく印象もありますが、ドライブモードを「スポーツ」にするとかなり改善。
このスポーツモードではステアリングレスポンス、サスペンションの設定も変わるはずですが、これについてはいまひとつ違いがわからず。
なお排気音は変わらないようですね。
総合して考えると、全体的にジェントルなつくりとなっており、レクサスNXのスポーティーさとは内装の見た目からして差異があり、似たような外観ながらもNXとは完全に住み分けができていると、と考えられそうです。
ドライブモードにおける差が小さいのもそういった性格を反映したものかもしれず、とにかく快適きわまりなく上質な乗り味を持った車と言えるでしょう。
レクサスNXとの価格差が小さく、RXの存在意義については試乗前に疑問を感じていましたが、実際に乗るとその性格の差、乗り味の差は大きく、スポーティでコンパクトなNX、ラグジュアリーで上質な乗り心地のRX、と分類できそうで、両者は見た目以上に実際の個性が異なると考えています。
そのため積極的にレクサスNX、レクサスRXを選ぶ理由がそれぞれあり、ぼくは(価格とサイズを許容できるという前提で)RXに軍配をあげたいと思います。
さらにレクサスRXはレクサスブランドの集大成といえるものを持っており、さらにはライバルも非常によく研究されている、と思います。
たとえばシーケンシャルLEDウインカー(前後、これはインパクトがある)もその一つで、これからの流行となる装備をいち早く取り入れたと言えるでしょう。
LEDフォグ、LEDドライビングランプも同様で、欧州のライバルに負けないだけの装備を持っており、かつトランクルームから電動でシートを倒せる機能など「レクサスならでは」のものも備え、非常に高い競争力を持っていると考えられますね。
なお試乗車の価格は728万円ですが、エントリーモデルの2リッターターボFFモデルだと価格は495万円。
ジャガーFペースの本国価格を円換算すると2リッターターボモデルで500万円、V6スーパーチャージャーモデルで680万円となるので、ジャガーFペースとほぼ同価格ということになりますね。
そしてFペースはアルミ製のフレームを持っており重量がレクサスRXよりも400キロほど軽く、かつブランドバリューを考えるとジャガーFペースのほうがちょっと有利かもしれず、Fペースの試乗にてレクサスRXとの比較も再度行ってみたいと考えています。
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