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一気に巻き返しを図るボルボの意欲作。ライバルを凌駕する勢いの「XC90」に試乗する

2016/05/27

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【ボルボXC90ってどんな車?】

先代の登場から12目にしてモデルチェンジを迎えたボルボのフラッグシップ。
巨額を投じた新開発の「スケーラブル プロダクト アーキテクチャー(SPA)」を使用した新しい時代のボルボと言えるもので、いわば「鳴り物入り」での登場です。

モデル構成は4つで、以下の通り。

XC90 T5 AWD モメンタム・・・774万円
XC90 T6 AWD Rデザイン・・・879万円※今回の試乗車はこのグレード
XC90 T6 AWD インスクリプション・・・909万円
XC90 T8ツインエンジンAWD インスクリプション(ハイブリッド)・・・1009万円

ボディサイズは全長4950、全幅1930ー1960、全高1775ミリとかなり巨大。
重量は2060キロからハイブリッドで2320キロ、エンジンは2リッターで254馬力。
※T6になるとターボに加えてスーパーチャージャーが追加され320馬力

登場時期や車格からしてライバルになると思われるアウディQ7が全長5070、全幅1970、全高1735ミリ、4気筒2リッター、252馬力、重量2000キロ、価格は2リッターモデルで804万円。
こうやって見るとアウディQ7とかなり近い性能と価格を持っていることがわかります。

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【外観について】

先代のXC90から大きく変わり、先代が「リフトアップしたステーションワゴン」という感じだったのに対してこ新型は「いかにもSUV」という厚みがあるもの。
スタイル的にもアウディQ7やレンジローバースポーツ、ポルシェ・カイエンのような重厚な印象があり、ターゲットをスイッチしてきたことがわかります。

細部の作りも素晴らしく、フロントグリルやドアパネル下の加飾、フロントバンパー下部の造形など「これがボルボか」と目を疑うほどの進化っぷり。
おそらくこれから登場するボルボはXC90同様の品質やデザインを持つと思われますが、今後が多いに期待できそうです。
正直「素晴らしい」と思えるレベルで、実際のところ大変なフィードバックがあるようで現在納車は半年待ち。

ヘッドライト内部には「T」を横にしたようなデイライトを持ちますが、これは「トールハンマー」と呼ばれ、今後のボルボはこのデザインを共通する特徴として持たされるようです。
なお「トール」は「ソー」、つまりアヴェンジャーズの「マイティ・ソー」のことであり、北欧の神でもありますね。

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【内装について】

さてドアを開けて乗り込みますが、意外とシート位置が低く(あくまでも外観から想像しての”意外と”)、乗降は容易。
今までのボルボ同様にシートは大柄でソファのように深く沈む快適な座り心地ですが、質感は大きくアップし、使用されるレザーの質も上がったんじゃないかと思えるほど柔らかです。
ドアを閉める音も高級感に溢れ、非常に柔らかく、しかし重厚な音を立てて閉まるのが良いですね。

キーも高級感に満ち満ちており、シートとおなじレザーで巻かれるというこだわりよう。
レザーで巻かれたキーというと他にブガッティ・シロンくらいのものと思いますが、このキーはかなり秀逸と言って良いでしょう(結構軽いのも高評価)。
センターコンソール上のスイッチはクリスタルのようなダイヤモンドカットが施され、これが光を反射してなんとも言えない豪華な雰囲気を演出しており、内装の高級感も飛躍的に向上。

物理スイッチが減った代わりに、エアコンなどの操作はセンターにあるタッチパネルで行うようになっており、メーターも液晶に(12.3インチとのことですが、サイズはランボルギーニ・ウラカン、アウディTTと同じなので、サプライヤーが同じなのかもしれない)。
そのため全体的にシンプルというボルボの美点を残したまま高級という要素が加わった、という印象が強くなっています。

エンジンの始動はプッシュボタンではなくセンターコンソールにあるスイッチを右に回して行うという、非常に珍しい方式(停止は逆に回す)。
エンジンは小排気量ということもあるかと思いますが振動や騒音がよく抑えられ、ほぼそれらを感じさせずに目覚めます。

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【運転した印象】

全長5メートル、幅1メートル95、重量2トンの巨体の割に2リッターという比較的小さめのエンジンを持っており、運転する前までは正直「大丈夫か」と考えていたのですが、それは全くの杞憂。※ボルボは今後2リッター以上は作らないとしている
アクセルを踏めば踏んだだけしっかりと加速し、走行性能に不満はまず無い、と言えますね。

ブレーキのタッチも申し分なく、重量級の車体をしっかりと減速・停止させることが可能。
ステアリングホイールの操作感はかなり軽く、しかしこの軽さが加速の軽さとマッチしておりボディの大きさを感じさせない軽快感を演出しているという印象を受けます。
若干ですが不整路を超えるとボディの前部分(バルクヘッドよりも前)がブルブルと震えるような印象があり(気になるほどではない)、22インチという大きなタイヤ/ホイールがオーバースペックなのかもしれません。

安全性に関しても近接車両接近警報など一般的になってきた装備に加え、サイクリストまでに対応したオートブレーキ、右折時対向車検知機能、道路逸脱事故時保護システム(ランオフ・ロード・プロテクション)、衝突時ブレーキペダルリリース機能などボルボならではの装備も満載。

とにかく安心感の強い車であり、心からくつろいで運転できる車と言えるでしょう。

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【総括】

かつてボルボは「世界で最も安全な車」として有名でしたが、その後他のメーカーでもボルボと同等の安全性を持つに至り、その存在感がちょっと希薄に。
しかし今回のXC90を見ると数々の安全性を備え、新たな世界標準を築くに十分な先進性を備えていることは明らかで、積極的に「ボルボXC90を選ぶ」理由を多数備えていると言えますね。

今までライバルに後れを取っていた分、満を持して放つニューモデルではライバル追いつき引き離すに十分な機能・性能を持つに至ったと考えてよく、納車待ちも頷ける素晴らしい車と考えています(ブランド性がライバルに劣ると考えられるので、そのぶん機能や性能でカバーする必要がある)。

ライバルとしては上述の通りアウディQ7、新しく2017年に登場するポルシェ・カイエン三代目、レンジローバースポーツ、BMW X5、メルセデス・ベンツGLEあたりになるかと思いますが、先進性の点を考えるとアウディQ7、新カイエンが直接競合するかもしれませんね(ただ、実際のところQ7には乗ったことがないのでQ7も近日中にチェック予定)。

試乗記について
ランボルギーニ、AMG、アルファロメオ、VW、ジャガー、ベントレー、ルノー、ミニ、フェラーリ、マクラーレン、テスラ、レンジローバー、スズキ、トヨタ、マツダ、スバル、ホンダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、BMWなどこれまで試乗してきた車のインプレッション、評価はこちらにまとめています。



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