ぼくが最初に購入した機械式腕時計はオメガ・スピードマスターです。
当時18万円ほどで登場したばかりの自動巻き(スピードマスターはそれまで手巻きが主流だった。宇宙空間では重力差によるローターの回転=自動巻き上げができないので)でした。
のちにシューマッハーモデルが追加されたタイプですね。
そんなわけでぼくはオメガには思い入れがあり、先ごろ発売されたスピードマスターの限定モデル、「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」のブラックブラックには非常に惹かれます。
しかし、ここで当時の記憶がちょっと蘇ったりするわけです。
ぼくが購入した頃、オメガ・スピードマスターはさほど精度の高い腕時計とは言えませんでした。
(自分が)けっこう動いた日はよく進み、あまり動かなかった日は遅れ、ゼンマイのリザーブがなくなる頃はかなりの遅れが出たものです。
はじめての自動巻きだったので「こんなものか」と考えていたのですが、その後ぼくはロレックスGMTマスターIIを購入し(37万円だった)、オメガとロレックスの差に愕然とするのですね。
どこがどう違うかというと、オメガは上述の通り、動いたままの「誤差」が出ます。
進んだり遅れたりという感じですね。
一方ロレックスは、動いても動かなくても、リザーブが切れかけていても、同じ分しか狂いません(ぼくのは日差+3秒だった)。
どれだけ動いても、動かなくても、毎日キッチリ3秒だけ進むわけです。
要はゼンマイのトルクをコントロールできているかいないかということですが、当時はこれが非常に驚きで、オメガとロレックスとの間での「越えらえれない壁」を感じたわけです。
単にマシンで計測する日差と、実際に腕につけて動いた時の日差は全然違うということで、やはり自分のものとして身につけないとわからない差がある、ということですね(ロレックスが最高の実用時計、と言われるのはこのあたりかもしれない)。
今では技術が進み、オメガも当時のようなことはないのだと思いますが、この記憶があまりに鮮烈すぎ、そのためにいまでもなかなかオメガには(いかに安価だろうとも)手が出ません。