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カルロス・ゴーン氏の報酬は「10億」ではなく実は「100億」!なぜこんなことになったのか、日産の戦略を考える

2018/11/20

| 日産はなぜこうなってしまったのか |

さて、けっこう衝撃の大きかった「カルロス・ゴーン不正行為問題」。
最初に報じられたのは「報酬の過少申告」ですが、報道が出た時点ではその金額が明らかにはなっておらず、「まあ数億円くらいだろ」と考えていたものの、追加の報道では「50億円の申告漏れ」。
さらに実際の報酬は(報じられる)10億円ではなく、なんと”99億9800万円”だったというから驚きです。

世界最大の販売台数を誇るフォルクスワーゲンCEOの報酬が14億円、メルセデス・ベンツ(ダイムラー)会長が12億円と言われるので、圧倒的な差がある、ということになりますね。

なお、カルロス・ゴーン氏は三菱自動車の会長、ルノーの会長兼CEOも努めているので、こちらからの収入を入れると「もっともっと」高い報酬になる、ということも意味します。

日産の中身はそんなに良くなっていない

なお、カルロス・ゴーン氏は日産の業績を立て直したことで「救世主」として扱われることが多いものの、その中身としてはあまり評価できるものではなく、つまり「いい車を発売して販売を伸ばし、利益を伸ばした」のではなく「コストを切り詰めて残るお金を確保した」ということに。

もちろん不要なコストをカットするのは重要ですが、自動車メーカーであるからには「いい車」をリリースすることで販売を伸ばすべきであり、コスト削減で数字は好転したものの、自動車メーカーとしての価値が向上したとはいいがたい、と考えています。

なお、コストカットには下請けへの締め付けも含まれ、多くのサプライヤーが日産から離れ、塗料メーカーも入れ替わったためにボディカラーが”刷新”された時期もあるようですね。

日産は「一点突破」型

なお、日産は上述のように「ビジネスライク」に展開を行っており、あまり自動車に対する情熱が感じられない、と認識しています。
たとえば、コンパクトカーだと「ノート」、SUVだと「エクストレイル」、ミニバンだと「セレナ」といった人気モデルがありますが、日産はそれぞれのカテゴリにおいてラインアップを絞り、そのかわり上述のような主力モデル「一点に」リソースを絞る戦略。

ちょっと前の数字ですが、6月の日本国内新車登録において、ミニバンのトップ20に入っているモデルだと日産は「セレナ(11,179台)」一台。
対してトヨタはシエンタ(9,178台)、ヴォクシー(6,412台)、ヴェルファイア(4,938台)、ノア(3,918台)の4台が入っています。

日産は1車種で11,179台、トヨタは4車種で24,446台を販売していることになりますが、これを「1車種あたり」に換算すると日産は11,179台そのまま、トヨタは1車種あたり6,111台という計算になり、日産は非常に「効率がいい」ということになります。

そして車種が少ないということはかかるコストも少なく、となると原価も下がり、結果的に「安く販売できる」ことでもありますね。

日産は販売重視

そのような感じで日産は「特定のモデルに集中し、モデル数を増やさない」ようにしていて、そのための免罪符が「GT-R」なんじゃないかとも考えています。
「日産はクルマに対して情熱を持たない」と言われないよう、その対策としてラインアップしているのがGT-R、ということなのかもしれません(しかしこちらも10年間モデルチェンジを行ってない)。

加えて、アメリカで最も安価に販売されるのは意外にも日産車で、つまり日産は「付加価値を付けて高く売る」のではなく、「コストを下げて安く売る」戦略。
しかしながらコストという面では韓国勢や、いずれアメリカにも入ってくるであろう中国勢に勝つことは難しく、将来の不安が指摘されていたのも事実です。

https://intensive911.com/japanese-car-brand/nissan-infiniti/86724/

加えて法人向けに大量に安く「フリート販売」を行っていたことも問題視されており、「目先の数字」のために将来を犠牲にしている、という指摘もありますね(そしてその免罪符がリーフはじめとする電気自動車なのかもしれない)。

EV nissan leaf

こんな感じでコストカットを行ってお金を残し、しかしそれを一般にはさとられないようにGT-Rやリーフ、自動運転技術などを対外的に示すことで「将来的な投資を行っている」「自動車に対して熱い情熱を持っている」ということをアピールしていたのが日産だと考えています。

つまり、車種構成同様、「一点だけ」強みを作っておけば世間を納得させることができる、というのが日産の取っていた戦略だということですね。

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日産は社員に厳しい

加えて日産は社員に対して厳しい会社だと考えていて、そもそもゴーン氏自体が「首切りゴーン」として知られるだけに、クルマの製造コスト同様、人的コストもバンバン削減。

そしてルノーにおいては「自殺者が多く」、フランス警察が調査に入るという報道がなされたこともあって、とにかくルノー・日産・三菱アライアンスは「働くのがキツいんだろうな」という印象がありますね。

ちなみに今回のカルロス・ゴーン氏不正事件については「内部告発」だとされ、告発者は司法取引(警察に協力する代わりに罪を軽減してもらう)に応じて情報提供を行ったとされています。
告発を行った時点で、告発者は捜査の対象ではなかったと考えられますが、リスクを背負ってでも「告発した」ということは、それだけ「耐え難い」思いをしていたのかもしれません。

ちなみに、日産とは裏腹に「人を切らない」のがトヨタで、車種構成にしても「無駄はたくさんある」ものの、より多くの人びとの用途や要望にマッチするように取り揃えており、その意味でも「トヨタはいい企業なんじゃないか」とぼくは考えています。

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加えてトヨタはリコール率が低く、生産や管理体制についても「しっかりしている」という印象がありますね。

ただし戦略的に間違っているわけではない

色々と記載したものの、無駄を省いて強みを活かすというのは企業の生き残り戦略としては間違っているわけではなく、しかし今回の問題は「安全面など、カットしてはならないところのコストをカットした」こと、余ったお金を還元せず、クルマの開発でも社員に対してでも株主に対してでもなく、「自分に対して」だけ還元した、ということにありそう。

なお、元日産副社長にして現アストンマーティンCEOのアンディ・パーマー氏はこの逆で、時期日産CEO最有力と見られながらも「万年赤字」のアストンマーティンへと転身。

そこで「いいクルマを作れば必ず買ってくれる人がいる」という信念のもとに次々と魅力的な新型車を送り出してアストンマーティンの業績を回復させた人物です。

つまりは日産出身ながらも、日産とは逆に、コストをカットするのではなく、積極的に投資を行って「いいクルマ」をつくり、それを買ってもらうことで業績を立て直したということになり、そしてこれは「未来に繋がる道」をつくった、とも言えそう。

「12年に一台しか新型車が出なかった」会社を「1年にいくつも新型車を出すメーカー」へと変貌させたのがアンディ・パーマー氏であり、これこそが自動車メーカーの本来あるべき姿なんじゃないか、とも考えています。

他の例を引き合いに出すならば、中東の国々において、ドバイやアブダビのように「資源を活用して」国を発展させることができる指導者もいれば、その資源を独り占めしようとして争いばかりを行っている国々もあり、いかに大きな企業や国といえど、たった一人の指導者によって「こんなに変わる」ということを如実に示した事例なのかもしれません。

なお、今回の件に関して日産が発表したプレスリリースは下記の通り。

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:西川 廣人)は、内部通報を受けて、数カ月間にわたり、当社代表取締役会長カルロス・ゴーン及び代表取締役グレッグ・ケリーを巡る不正行為について内部調査を行ってまいりました。
その結果、両名は、開示されるカルロス・ゴーンの報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたことが判明いたしました。
そのほか、カルロス・ゴーンについては、当社の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為が認められ、グレッグ・ケリーがそれらに深く関与していることも判明しております。

当社は、これまで検察当局に情報を提供するとともに、当局の捜査に全面的に協力してまいりましたし、引き続き今後も協力してまいる所存です。

内部調査によって判明した重大な不正行為は、明らかに両名の取締役としての善管注意義務に違反するものでありますので、最高経営責任者において、カルロス・ゴーンの会長及び代表取締役の職を速やかに解くことを取締役会に提案いたします。また、グレッグ・ケリーについても、同様に、代表取締役の職を解くことを提案いたします。

このような事態に至り、株主の皆様をはじめとする関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを、深くお詫び申し上げます。早急にガバナンス、企業統治上の問題点の洗い出し、対策を進めてまいる所存であります。

VIA:NISSAN

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