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新型スープラ開発秘話。「4気筒のほうが重量配分に優れ、楽しい」「ATしかない理由」「ドリフト向きではない」「FRの理由」「2シーターになったワケ」

2019/01/18

さて、新型スープラが発表されて数日が経過してますが、どのメディアでも「スープラ一色」。

それだけスープラのインパクトが強かったということになり、かつ否定的な意見が殆ど見られないという傾向が見られ、つまりは「トヨタはスープラのリニューアルを成功させた」ということになりそうですね。

今に至るまで、新型スープラについて、国内外から様々な報道がなされていますが、その中からいくつかをピックアップしたいと思います。

新型スープラのマスタードライバーは豊田章男トヨタ社長

まず「ベストカー」。こちらは豊田章男トヨタ自動車社長、そして開発主任の多田哲哉氏のコメントを紹介しています。

豊田章男社長は新型スープラのマスタードライバーであることがすでに報じられていますが、その「マスタードライバー」となるために訓練を受け、その過程で80スープラにて相当な時間を走り込んだことに言及。

トヨタは現在世界でも1、2位を争う規模を持つ自動車メーカーではあるものの、その社長がひとつの車種を開発するために自らステアリングホイールを握るというのは「他に例を見ない」ことかもしれませんね。

現代において自動車のプロモーション手法には様々なものがあり、しかしその会社のトップが開発に関わって、そして実際に発表の場でプレゼンテーションを行うというのはある意味で「もっとも効果的」なプロモーションだと言えそうです。

新型スープラは「まずスープラありき」。そこからBMWと共有できるパーツや構造を模索

そして多田哲哉氏については、再度「BMW Z4とスープラとは異なる」ということを主張。

BMWとは開発チームやテストドライバーも完全に分けてそれぞれの開発を進めたと述べ、新型Z4とスープラとではサスペンションの取り付け方法などがまったく異なることについても言及。

開発スタンスとしては、「共通のクルマありき」で進めるのではなく、まずトヨタ側で「作りたいクルマ」を考え、そのクルマにおいてBMW Z4と共有できるものがないかを探していった、とのこと(このあたりはSUBARU BRZとトヨタ86、マツダ・ロードスターに対するアバルト124スパイダーとは全く異なるアプローチ)。

新型スープラはドライバビリティを重視。公道で楽しめることが大前提

そのほか、「ドライバーを裏切らない」ことを重要視し、アンダーステアが出ても切り足しにて曲がれること(トヨタはFRの操縦安定性を重要視しており、そそのためにレクサスLFAもミドシップが採用されなかった)、ドライバーに与えるインフォーメーションの観点から(営業からの猛反発に屈せず)2シーターとしたこと、燃費は一切気にせずパフォーマンスに集中したこと、軽量化にはとことんこだわったこと、一般道でも楽しめるよう、テストの90%は一般道で行ったことについても触れています。

「鼻先が軽く、下りで楽しいのは4気筒モデル」

そして「carview」では多田哲哉氏へのインタビューをメインに掲載。
まずはエンジンについて6気筒と4気筒があることについて、「6気筒はパワーやサウンドに優れ、ドライバーが乗った状態で前後重量配分が50:50」、「4気筒は空車状態で前後重量配分50:50、かつ鼻先が軽いのでワインディングの下りなどでは楽しめる」。

面白いのは「足回りやブレーキについて、6気筒と4気筒で区別していない」と語っていることで、どのエンジンを選んでも同様のパフォーマンスを提供できるように配慮されていること。

新型スープラにATしか存在しない理由とは

そしてATしか(現時点で)ラインアップされていない理由については、まず「軽いから」。
使用されるのはZF製の8段トルコン式AT(8HP51)で、これはBMW Z4に採用されるのと同じものですね。

ただし、スポーツ性を追求するにあたり、トヨタの「スポーツATチーム」がBMWと特別なワーキングチームを組織して制御ロジックを開発したといい、多田氏いわく「MT待望論があることは十分理解しているが、まずはこのATに乗ってほしい」。

そして多田氏によれば、スープラ開発当初(7年前)はマニュアル・トランスミッションもしくはDCT(デュアルクラッチ)をメインに考えていたものの、様々な可能性を模索すると「このATしかない」という考えに落ち着いたそう。

たしかにBMW側も「この8速ATは最高のトランスミッション」だと述べていますね。

86は練習機、スープラはジェット戦闘機

加えて多田氏は、トヨタ86が練習機だとすると、GRスープラは「ジェット戦闘機」だという表現を用いていて、その差の大きさを強調。

ただし「扱いにくい」ということではなく、あくまでもスープラは”ニュートラルな特性”を目指しており、”オンザレール”の感覚で気持ちよく走れるセッティングを持っていて、「ドリフトマシン」として開発したわけではないということについても言及しています(一方で、相当な腕前があれば自由自在にドリフト可能なポテンシャルを持つらしい)。

インタビューの最後では新型スープラのデザインについて触れ、「小さいながらも塊感がある」「ひと目でスープラだと分かる」ということを目指し、日本からデザイナーがドイツへと赴いて、2年半かけて作り上げたのが今回発表されたGRスープラの持つデザインである、とのこと。

気になる新型トヨタGRスープラの価格は?

気になるスープラの価格ですが、トヨタは「価格」についてかなり意識したと思われ、多田氏もこれまでのインタビューにて「この価格で販売したいという制約があり、コストの制限があった」と語っていることからもそれは明らか。

北米では「6気筒のみ」の展開ですが、もっとも安価なモデルで49,990ドル(547万円くらい)。

そして日本には「4気筒」モデルが投入されるため、もちろん価格はここから大きく下がると考えて良さそうです。

たとえばBMW 3シリーズの場合、4気筒エンジンを積む320i スポーツで543万円、6気筒エンジンで最も安価な「340iラグジュアリー」だと846万円。
価格差が300万円もあり、これをスープラにそのまま当てはめることができないものの、6気筒モデルの価格が4気筒モデルの「1.5倍くらい(6気筒高いな・・・)」と考えると、「6気筒のスープラの価格が547万円であれば、4気筒スープラの価格は360万円くらい」。

もしくは、北米仕様スープラ上位モデル「3.0プレミアム」の価格である53,990ドル(590万円)から同様に計算すると、4気筒スープラの価格は390万円あたりということに。

いずれにせよ、トヨタは「安価にスポーツカーを提供するのがトヨタの責務」だと考えているはずで、戦略的に「400万円を切る」価格に設定されるのではないかと考えています。

なお、日本仕様のスープラに搭載されるエンジンは「どこ製」なのか今のところ不明。
ただしトランスミッションとの接続を考えると、これも「BMW製」だと考えるのが妥当かもしれませんね。

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