| 見た目の変化の小ささに騙されてはならない。この進化幅は極めて大きい |
さて、ランボルギーニ・ウラカンEVOに試乗。
ウラカンEVOは「ウラカン」のフェイスリフト(マイナーチェンジ)版にあたるクルマで、ウラカンに比較して数々の(ウラカン登場から5年分の隙間を埋める)機能や装備が追加されています。
最大のトピックはやはり「ウラカン・ペルフォルマンテ」と同じ640馬力のエンジンを搭載すること。
これによって0-100km/h加速は(ウラカンの3.2秒から)一気に2.9秒へと向上し、なんとこれはアヴェンタドールSと同じタイムです。
そのほかの主な変更点は下記の通り。
・新デザインの外装を採用 ・新デザインのホイール「Aesir(20インチ)」を採用 ・イメージカラーのArancio Xantoほか、新ボディカラー採用 ・インテリアには8.4インチタッチスクリーン「HMI」装備 ・ドライビングダイナミクス集中管理システム「LDVI」装備 ・ダウンフォースはウラカンの5倍 ・後輪ステアリング「LAWS」装備 |
ランボルギーニ・ウラカンEVOの外観はこう変わった
ウラカンEVOの、ウラカンに対するエクステリア上の変更は、簡単に言うと「複雑になった」「高級感が増した」。
変更されたのはフロントバンパー、サイドステップ、リアバンパー、リアディフューザー。
複雑になったという部分では、フロントだと「グリルレス」となり、エアを細かく分配するためのフィンが設けられ、独立した構成を持つブラックのパーツが追加。
サイドステップでは、下部にやはり別体のように見える(実際は一体構成?)パーツが付与され、エアインテーク部分もそれは同じ。
リアのデザインはウラカンに比較し大きく変わったところで、まずフードの隙間からは(これまでガラスに隠れていた)”V10”文字がイタリアンフラッグとともに顔を出しています。
そしてリアスポイラーは大型化し、「ウイング」のようにその上下をエアが抜ける構造に。
テールパイプは「ウラカン・ペルフォルマンテ」同様に車両中央、ナンバープレートの上部分から突出。
グリルはウラカンで採用されていた3D構造を持つものから、シンプルで極端に薄い、見るからに軽そうなハニカムメッシュへ。
そしてテールパイプが上方へと移動したことに伴い、リアディフューザーも大型化。
このディフューザーはオプションにて「マットブラック」や「ボディカラー同色」も選べます。
ちなみに用意されるボディカラーは(カーコンフィギュレーター上では)40色で、「ミウラ」に採用されていたボディカラー”ヴェルデ・スキャンダル”も選択可能。
その選択肢であっても不十分であれば、ランボルギーニの用意するパーソナリゼーション・プログラム、「アドペルソナム」にて自由にカラーをカスタムできるのも特筆すべき点です。
ウラカンEVOの外装、そしてウラカンとの比較、外装オプションについては下記にも記載しています。
ランボルギーニ・ウラカンEVOはこう変わった!ウラカンそしてウラカン・ペルフォルマンテと内外装を比較すると、ちょうどその「中間」のようなイメージだ
こちらはウラカンEVOの内外装を収めた動画。
ランボルギーニ・ウラカンEVOのインテリアはこう変わった
ウラカンEVOにおける最大の変更点はセンターコンソールに設置された8.4インチサイズのタッチ式ディスプレイ「HMI」。
ここに車両の情報など様々なデータが表示されるとともに、エアコンやオーディオの操作も受け持つことに。
これによって物理スイッチが減り、これまでのウラカンに比較すると、ずいぶんセンターコンソールが「すっきり」した印象となっていますね。
加えてメーター表示は「ウラカン・ペルフォルマンテ」と同様の「バーグラフ」表示が可能となり、通常表示時であっても「(立体的なヘキサゴンによって)奥行き」を感じさせるものへと変更されています。
ちなみにタコメーター(アナログ表示時)の目盛りの刻みが細かくなっており、表示そのものにさらに精緻さが感じられるように。
そのほか、アームレストもウラカン・ペルフォルマンテと同じものへ変更され、オプションも豊富に用意されることで多種多様な選択が可能となっています。
ランボルギーニ・ウラカンEVOの内装はこれだけ選択肢が広がった!ステッチやシートベルト、素材の選択肢がこれまでに比べて大きく増加
ランボルギーニ・ウラカンEVOに乗ってみよう
そこでさっそく試乗開始。
ドアの開閉方法やドア形状についてはこれまでのウラカンと同じ。
ただ、ドアが閉まるときの音はやや重厚になり、高級感が増したように思います。
シートについては背中(ランバーサポート)部分の張りが変わったようで、座ったときの反発力が高くなり、おそらくは長時間走行でも疲れにくくなっているようにも。
加えて座面もちょっと柔らかくなっているようですね(これは嬉しい)。
ランボルギーニ・ウラカンEVOのサウンドは?
そして大きくウラカンと異なるのがウラカンEVOのエンジン(エキゾースト)サウンド。
エンジンとエキゾーストシステムが「ペルフォルマンテ・スペック」なのでその音が大きくなっているのはもちろんですが、その音質は低く深く。
ウラカンのサウンドはやや機械的なエンジンと補機類の作動音が交じるように感じますが、ウラカンEVOでは純粋に「(シリンダー内で燃焼が発生した結果の)排気音」という印象です。
このあたり、外装と同様です「質が向上した」と感じる部分でもあり、カドが取れて上質さが増しているように思います。
なおドライブモードは「ストラーダ」「スポルト」「コルサ」の3つ。
ストラーダだとフラップが閉じていて、スポルトだと半開、コルサだと全開、というイメージで、走行中にスロットルを戻すと「バリバリバリバリ」という例のバブリングも盛大に発生し、気分を盛り上げてくれます。
ちなみにこちらはウラカンEVOとウラカンとのエンジン始動音比較。
前半がウラカンEVO、後半がぼくのウラカン。
実際に聞いた印象ではウラカンEVOのほうが「ディープ」といった感じです。
ランボルギーニ・ウラカンEVOの加速は?
ウラカンEVOの出力は640馬力なので不足などあろうはずはなく、アクセルを踏み込むと、大排気量自然吸気エンジンならではのリニアなトルクにて矢のように加速(すんごい速い)。
加速感もさることながら、エンジン回転数にあわせて高まるサウンドも素晴らしく、「さすが自然吸気V10エンジン」と感心するとともに、ついついニヤけてしまいます。
フェラーリ488GTB、マクラーレン720Sはターボパワーにモノを言わせて強烈な加速を見せますが、「リニアな加速」というところ、自然吸気エンジンならでは「澄んだサウンド」という点ではやはりウラカンEVOのほうが上かもしれません。
なお、ターボエンジンは「Jカーブを描いて」一定のところ(加給がかかったところ)から強烈な加速を見せるものの、NAエンジンは「回転数に比例して」まっすぐ加速を行うという性質の違いがあって、加速感だとターボエンジンに軍配が上がるのは間違いありませんが、気持ちよさだとやはり自然吸気エンジンに軍配をあげたいところ。
ウラカンEVOの加速について、一言でいうと「ヒャッハー」ですが、おそらくこのクルマに乗ってアクセルを踏み、「ヒャッハー」にならない人はまずいないだろう、と確信しています。
加えて言うならば、速いクルマを表現する際に、よく「免許がいくつあっても足りない」と言われるものの、このクルマほどそれを如実に感じさせるクルマもまた他にないのかもしれません。
ランボルギーニ・ウラカンEVOの足回り(乗り心地)は?
そして今回驚かされたのがウラカンEVOの乗り心地。
望外に優れるということですが、これは数あるスーパーカーの中では異例に快適で、これと同様のレベルにあるのは(ぼくの知る範囲で)マクラーレン720Sくらい。
ウラカンEVOはノイズ、バイブレーション、ハーシュネスをうまく抑えており、ぼくが日常的に乗っているポルシェ718ケイマンよりも快適なのは間違いのないところ。
これはかなり意外かもしれませんが、ウラカンEVOの前身、「ウラカン」の時点でも相当に乗り心地が良く、ここはランボルギーニのルーツが「フェラーリよりも乗り心地の良いクルマを作ろうと思った」というところに起因しているのかもしれません。
印象としてはバネレートを低くして初期のアタリを柔らかくし、しかしダンパーのダンピングレートを高めたといった感じ。
ストロークは相当に短く、ここは「意外とストロークする」フェラーリとはかなり異なる設定です。
そして「しなやかで粘る」という印象が強く、これはフォルクスワーゲンの各ブランド(ポルシェ、VW、アウディ、ベントレー)に共通した傾向でもありますね。
ウラカンとの比較だと「よりしなやかに、よりメカニカルグリップが増した」という印象。
ランボルギーニ・ウラカンEVOのハンドリングは?
ウラカンEVOのハンドリングについては、「LDVI(ドライビングダイナミクス集中管理システム)」搭載、そしてリアアクスルステアリングによって劇的に向上。
感覚的には、後輪に振り分けられる駆動力が増加したように思われ、動きがFR的であるという印象です。
ウラカンだと、高速コーナリング時には「前輪の駆動力で引っ張る」というイメージがあったものの、ウラカンEVOでは「後輪の駆動力でクルマを押し出す」感覚が強く、より”自分でクルマをコントロールしている”というフィードバックが得られます。
なお、走行中にはセンターコンソールにLDVIの作動状況を示す表示を出すことが可能ですが、これは前輪と後輪それぞれの舵角、そして車輪ごとの駆動力分配を視覚的に表示することが可能。
これを見ると、加速時や減速時、旋回時のトルク配分を知ることが出来て「こうなっていたのか・・・」と関心させられます。
ちなみに後輪操舵の威力は絶大で、低速時の旋回(小回り)はもちろん、高速時の車線変更においてもその安定感の高さに驚かされることに。
ウラカンはけっこう幅の大きなクルマで、ときには取り回しに苦労することもありますが、ウラカンEVOだとそういった心配もなさそうです(ランボルギーニは、後輪操舵がこれまでの概念を覆したとまで発言している)。
ぼくは試乗の際、比較が容易にできるよう、試乗するクルマに近い性格のクルマに乗って試乗に行くようにしていますが、もちろん今回もウラカンに乗ってウラカンEVOの試乗へ。
そして試乗を終えた後には、乗っていたクルマで「試乗したのと同じコースを」走ってその印象を再確認するわけですね。
今回、ウラカンEVOの試乗後に、同じコースを自分のウラカンで走って感じたのは、「ウラカンEVOは、ウラカンに対し、すべての質が向上している」。
メーターの表示(目盛りが増えている・・・)や足回り、エキゾーストサウンド等すべてにおいて緻密さ・精密さが増していて、それは「モニタ解像度が2Kから4Kになった」というイメージ。※ウラカンEVOに乗った後にウラカンに乗ると、あれだけスムーズに感じられたウラカンがガサツに感じられるほど
ウラカンEVOでは、すべてにおいてギクシャクしたところ、硬いところがなくなり、デジタル制御における”0と1”との隙間が埋まったという印象。
うまく伝えることは難しいのですが、単純に「ウラカンのいいところをそのまま磨き上げた(ザラザラがツルツルになった)」と言ってよく、精密さ・緻密さが増したという点ではボディデザインも同じだと考えています。
ちなみに、低速時の旋回において、リアアクスルステアリングは「車線半分くらい小回りがきく」という印象。
ランボルギーニ・ウラカンEVOは「買い」?
結論から言うと、間違いなく「買い」。
ウラカンEVOは、かつて「ニュルブルクリンク最速」を誇ったウラカン・ペルフォルマンテと同じパワートレインを持ち、しかも4輪操舵やドライビングダイナミクス集中管理システム「LDVI」を装備。
逆にアクティブエアロ「ALA」、フォージドコンポジット(カーボン)パーツは装備されませんが、そのぶん価格上昇も抑えられており、優れたコストパフォーマンスを持っている、と思います。
なお、ランボルギーニのV10モデルは今後(ウラカン以後)ハイブリッド化すると明言されているため、予定通りに進めば「ウラカンEVOが最後のV10エンジンのみで走るベイビー・ランボ」ということになるため、今後に渡って高い価値を発揮するのは間違いなさそう。
当然ながら「ウラカンEVOに買い換えるか」とも考えていて、もうじき発表されるであろうウラカンEVOの後輪駆動モデル(ちょっと安い)を待つか、それとももうちょっと頑張ってアヴェンタドールS(中古)を買うか、という具体的なところでも悩み中。
なお、ウラカンEVOの後輪駆動モデルを狙うにしても、カーボンセラミックブレーキと鍛造ホイール(両方ともウラカンEVO後輪駆動モデルに対し、標準装備はないと思われる)を装着すると4WDモデルとの価格差が小さくなり、売るときのことを考えるに「4WDモデルのほうがいいだろう」とも考えています。
試乗したのはランボルギーニ大阪さんにて
今回、ウラカンEVOを試乗させていただいたのは「ランボルギーニ大阪」さん。
ぼくがガヤルド/ウラカンを購入したディーラーですが、今回あらたにショールームを豊中に移転しています。
ヒストリックモデルや、あの「ミウラ・イオタSVR」の整備も行い、現在のところ最新の設備を持つピットを備え、安心してクルマを任せることができる、心強いディーラーさん。
いつもながら試乗に呼んでいただき、大変感謝です。
ランボルギーニ大阪 561-0843 大阪府 豊中市庄内栄町2-21-10 地図はこちら |