| もっとも大きな影響はレッドブルとの提携関係 |
アストンマーティンにつき、少し前に「レーシング・ポイントF1チームのオーナーであるローレンス・ストロール氏に買収される」というウワサが流れましたが、今回そのウワサが現実に。
英国Autocarが報じたところでは、アストンマーティンは16.7%の株式をローレンス・ストール氏に1億8200万ポンドで売却し、かつ3億1800万ポンドの追加融資を受け入れた(追加融資分に新規発行株式が割り当てられるかどうかは不明。そうであれば同氏の株式保有比率は相当なものに)とされ、これによってアストンマーティンが手にするのは合計6億5700万ポンド、つまり邦貨換算で9億4000万円ということになります。
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会長は入れ替え、CEOは続投
なお、これによってアストンマーティンは中国の吉利汽車(ボルボ、ロータスの親会社)による買収を避けることができたわけですが、アストンマーティンの会長はペニー・ヒューズ氏へと置き換えられる、と報じられています。
CEOについてはアンディ・パーマー氏が続投するようですね。
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現在アストンマーティンの株主構成がわからないのでナントモですが、今回の人事を見るに、ローレンス・ストール氏はおそらく最大株主となった可能性が高く、会社の経営権を事実上掌握したと考えて良さそう。
これから見られるであろう変化については予想ができないものの、少なくとも現在の「レッドブルと提携関係」は見直されることになるはずで、提携先がレッドブルからレーシングポイントF1へと置き換えられる可能性も。
現在アストンマーティン各モデル(とくにヴァルキリー)にはレッドブルの技術が注入されていますが、レッドブルとしてもレーシングポイントに技術を知られることは避けたいと思われ、ローレンス・ストロール氏が望んだとしてもレッドブルの方から「去る」のかも。
現時点だと「ヴァルキリーのデリバリーまでは」レッドブルとの関係は継続されると報じられており、ただしそれ以降は不透明。
今年後半を予定しているヴァルキリーの納車以降にレッドブルとの関係が打ち切られるとなると、2022年以降の発売となるヴァルハラ、新型ヴァンキッシュについてはレッドブルの「血」が薄くなるということにっもなりそうです。
すでに公表された内容を見ると、「超高級EVブランドとして2022年に再出発」を予定していたラゴンダブランドは2025年までそのスタートを押し戻されることになるそうですが、「ハイエンドEVブランド」というコンセプトは変わらないようですね。
そのほか再建プランとして年間1000万ポンドの運営費用削減を掲げており、これには従業員の解雇も含まれるものと思われます。
ローレンス・ストール氏とは
今回アストンマーティンに資金を提供した氏はラルフローレン、トミー・ヒルフィガー、ピエール・カルダン、マイケル・コースなどのファッションブランドに投資を行い財を成した人物で、つまりは「ビジネスマン」(よって今後のアストンマーティンより”ビジネス”としての効率を高められることになるのかも)。
そしてローレンス・ストロール氏は「スポルペーザ・レーシングポイントF1チーム」のオーナーであり、これは旧フォース・インディアを買収して体制変更を行ったもの。
ちなみに同チームのドライバー、ランス・ストロール選手は、今回話題となったローレンス・ストロール氏の実子ですが、デビューは2017年にウィリアムズF1チームから(2017年はランキング12位、2018年は18位)、そして2019年以降は父親が買収したレーシングポイントF1チームからF1グランプリへと参戦しています(2019年はランキング15位)。
ウィリアムズ時代には「史上最高額」を支払ったペイドライバー、そして史上最高規模のバックアップ体制でテストを行ったドライバーとしても知られ、さらにランス・ストール選手の力量を批判する者はチームから追い出されるという始末で、つまりローレンス・ストール氏は「息子のランス・ストロールをF1で走らせるため」にフォース・インディアを買収して「レーシングポイントF1」を作ったとも受け取れます。
なお、ローレンス・ストロール氏は世界有数のカーコレクターとも言われ、とくにフェラーリでは「もっとも価値の高いコレクションを持つコレクターの一人」だとして知られているようですね。