| 今後、新型コロナウイルスの影響でさらに販売は落ち込みそう |
CarsDirect によると、北米市場においてトヨタディーラーがGRスープラの値引きを開始した、とのこと。
北米では「インセンティブ」と呼ばれる販売報奨金をメーカーが出すことが一般的で、あるクルマが売れなくなると、ディーラーに対して「そのクルマを売ったら、一台あたりいくらのインセンティブを払う」といった具合です。
そうすると、ディーラーはそのクルマをうる「意欲」が湧いてくることになり、たとえば値引きせずにそのクルマを売れば「インセンティブ分はまるまる儲け」になりますし、値引きして売ったとしても「メーカーの負担にてクルマが販売しやすい状況になり、かつ損はしない」状態に。
やはりGRスープラは「思ったように売れていない」?
そして今回のスープラについては、ディーラー側からの「値引き広告」は打たれていないものの、全米のディーラーだと、どこでもポンと1000ドルの値引きが得られる状況だといい、つまりトヨタ(メーカー)がスープラの販売のテコ入れに動いたということになりそう。
なお、GRスープラは昨年の発売時には異常とまで言える盛り上がりを見せていて、北米ならず日本でも転売組が多数登場。
北米ではユーチューバーが再生回数を稼ぐためにこぞってGRスープラを購入しており、昨年のSEMAにおいては「スープラだらけ」だったと言われるほど多くのチューナーが参入しています。
ただ、その後の販売状況はあまり芳しくなかったようで、欧州、続いて北米でも当初は「無い」とされていた4気筒版のスープラを投入。
これはもちろん「割高」な6気筒スープラに対し、求めやすいモデルを投入することで販売状況を活性化しようとしたものだと思われ、同時に6気筒モデルについても大幅パワーアップを行うことでコストパフォーマンスを改善しています。
北米仕様のトヨタGRスープラが340馬力から387馬力へパワーアップ!ボディ補強、足回りも再調整されて戦闘力が向上。気になる日本仕様は?
さらには日本において「半年、グレードによっては1年待つ」と言われた生産状況がぐっと短縮され、現在だと注文してから1~2ヶ月で生産が完了する模様。
つまり工場の生産ラインには余裕ができていると考えてもよく、全世界的にスープラの販売が落ちているのかも。
「納期がいつになるかわからない」と言われたGRスープラ。なんと今注文すれば1~2ヶ月で出荷が可能に。おそらくはさほど売れておらず、転売組も苦しそう
ちなみにスープラの販売不振について、その理由は「価格」にあると言われていて、北米でのGRスープラの価格はV8エンジンを積むフォード・マスタングやシボレー・カマロに比較して15,000ドルほど高く、それらのエントリーグレードに比較すると25,000ドルほど高価(これらに対して、GRスープラの価格はまさに”倍”)。
現在のGRスープラの販売状況は?
そこで気になるのが現在のスープラがどれくらい売れているのか、ということ。
今年1月の数字だとスープラは北米市場にて342台が売れていますが、その他の車(スポーツカーもしくはクーペ)だとトヨタ86が222台、スバルBRZが112台、マツダMX-5(ロードスター)が396台、レクサスLCが98台、レクサスRCが289台。
アメ車、欧州車については2020年の数字がまだなく、参考までに2019年1月だとポルシェ911が1,011台、シボレー・コルベットが1,297台、フィアット124スパイダーが160台、日産フェアレディZが173台、日産GT-Rが19台、アキュラ(ホンダ)NSXが31台。
これらの数字を見ると、アメ車やポルシェ911に比較するとGRスープラが特別に「少ない」わけではないと感じられ、それでも「トヨタの想定には届かなかった」ということなのかもしれません。
トヨタGRスープラはどれだけ売れているのか?単月だと514台ペース、そして「マスタング5,091台、BMW Z4は247台、マツダ・ロードスター512台、GT-Rは31台、NSXはわずか16台」
なお、トヨタとしてはスープラをひとつの「柱」にしたいと考えているはずで、それは数々のレースに投入していることからも判断可能。
そして、今後は様々なバリエーションモデルを追加してゆくことで「スープラファミリー」を形成し、セールス的にも、ブランドイメージ的にもスープラを最大限に活用したいという意向を持っているのは間違いなさそう。
よって、トヨタに対しては、ここで諦めること無く、継続的なテコ入れにてスープラの販売を押し上げる、もしくは維持し、ホンダNSXや日産GT-R/フェアレディZのように「ジリ貧」な状況にだけはなってほしくない、とも思います(なぜか日本のスポーツカーは、最初だけ人気が出るものの、その後販売がどんどん下がってゆく傾向にある)。
割引を始めたのはトヨタだけではない
なお、北米においては「スポーツカーが厳しい」状況が顕著となっているようで、アウディはフェイスリフト後のR8において初めて割引を開始した、という報道も。
具体的には7,500ドルのインセンティブが出されたと報道されており、2019年には(フェイスリフトにもかかわらず)38%も販売が減少してしまったことへの対策だと言えそう。
アウディR8はランボルギーニ・ウラカン/ウラカンEVOと車体やエンジンを共有し、パフォーマンス自体は「ほぼ同じ」。
一方で価格はウラカンよりも低めに抑えられているものの、ランボルギーニ・ウラカンの販売の伸びに対してR8はいまひとつパっとせず、中古市場でも比較的割安に推移しています。
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こういった事実を見るに、スポーツカーやスーパーカーというのは「性能」や「コストパフォーマンス」のみによって選ばれるのではなく、そのヘリテージやブランド価値といった付加価値が重要だということもわかりますね(よって、現代の自動車メーカーは、スポーツカーセグメントにおいて、性能やコストパフォーマンスを追求するよりも、ブランド価値を向上させることに主眼を置くべきなのかも)。
VIA: CarsDirect, Goodcarbadcar.net