| カルティエは今後、エレガント&ラグジュアリーへと移行するようだ |
さて、今年からジュネーブサロン(SIHH)はウォッチ&ワンダース(WATCH & WONDERS)を名を変えて開催される予定であったものの、コロナウイルスの影響にて開催中止へと追い込まれ、代わりに行われたのがオンラインでの発表。
カルティエ、IWC、パネライ等多くのウォッチメゾンがここで新作を発表していますが、大きな話題を集めたのがカルティエ。
今回は手巻きムーブメントであるCal.430MCを持つ新たな”サントス・デュモン”が限定にて発表されています。
「サントス」は世界で最初の腕時計
なお、サントスといえばカルティエの腕時計の代名詞のような存在ですが、実は「世界初」の腕時計。
これは飛行家にして冒険家として知られたアルベルト・サントス・デュモンがカルティエに依頼して作らせたもので、当時は時計というと懐中時計しか存在せず、しかし飛行機の操縦をしているときに懐中時計を見ることが難しかったため(時計もまた飛行に必要な”計器”だった)腕に装着できるものを、という要望が具現化したもの。
アルベルト・サントス・デュモンはブラジル出身ですが、後にフランスに渡って飛行機の開発を行い、「ヨーロッパ初の飛行機による飛行」を実現した人物。
この飛行はアメリカのライト兄弟による「初飛行」から三年後であり、ライト兄弟は誰でも知っているものの、アルベルト・サントス・デュモンの名はほとんどの人が知らず、”一番”と”二番”の差がいかに大きいことがわかりますね。
ちなみに飛行機を開発したのは純粋に冒険心からだとされていますが、実用化された飛行機は「兵器」として用いられることになったため、平和主義のアルベルト・サントス・デュモンは(飛行機を開発したことによる)良心の呵責に苛まれたという文献も残ります。
そんな背景を持つのが腕時計「サントス」で、カルティエは当然ながらこれを重要資産として位置づけており、これまでにも様々なラインアップを展開。
現在は「サントス デュモン」「サントス ドゥ カルティエ」の二本立てとなっていて、今回の限定モデルは「サントス デュモン」シリーズからの登場です。
今回発表されたサントスは3種類
そして今回発表された限定モデルは3種類。
サントスの原点に立ち返ったモデルだとも言え、アルベルト・サントス・デュモンが設計した飛行船や飛行機にちなんだ仕様を持っていますが、まずはプラチナ製ケースを持つ「ル・ブレジル(2,178,000円)」。
モチーフとなった飛行船はアルベルト・サントス・デュモンによると「最も小さく、最も美しい」というもので、登場は1898年7月4日。
ケースバックにはル・ブレジルのシルエットが刻まれ、カボション(リュウズの飾り)は「ルビー」(ルビーのカボションははじめて見た)。
2つ目はイエローゴールドの「ラ・バラドゥーズ(1,676,400円)」。
こちらは1903年に飛行したエンジン付きの飛行船だそう。
最後は「N°14ビス(808,500円)」で、こちらはステンレススティールのケースにイエローゴールドのベゼル。
こちらは飛行船ではなく「飛行機」で、アルベルト・サントス・デュモンが正式に飛行を認められた最初の機体だとされています。
カルティエは名作「パシャ」もリニューアル
そして今回のもう一つのトピックが「パシャ」シリーズのリニューアル。
パシャはカルティエのスポーツウォッチ最大のヒットとも言えるシリーズ(1985年登場)であり、もともとは「中東の王族が、プールで泳ぐときに身につけることができるものを」というオーダーによって作られた腕時計。
当初は風防が割れないように(格子状の)ガードが取り付けられた仕様を持っていましたが、現代ではそのガードがなくなり、しかしパシャの特徴のひとつでもあったスクリューキャップは新シリーズでも健在。
これは竜頭とケースとの隙間から水が入らないように採用されたもので、このキャップが脱落しないように設けられたリンクが独特の印象を与えます。
スポーツウォッチでありながらもラグジュアリーさを合わせ持ち、やはり現代に至るまで多くのファンを持つ腕時計の新作はダテじゃない、といったところです。
今回の「新型パシャ」については、よりエレガントなドレスウォッチへと生まれ変わったという印象がありますが、カルティエは人気シリーズであったスポーツウォッチ「カリブル・ドゥ・カルティエ」を思い切って廃止しており、ブランド全体として”エレガントでラグジュアリー”へとシフトしつつあるのかもしれません。
VIA:Cartier