
| テメラリオGT3にはハイブリッドは搭載されず、よってロードカーの「非ハイブリッド」を期待したいところだが |
ランボルギーニは「テメラリオ」のGT3カテゴリ向けのレーシングカー、テメラリオGT3を公開したところではありますが、このモデルでは(レギュレーションに従い)ハイブリッドシステムが完全に取り除かれており、純粋なガソリンエンジンのみで駆動されます。
しかし、ここで沸き起こる疑問が「市販モデル(ロードカー)でも、ハイブリッドを取り除いた仕様は実現可能なのか?」ということで、将来的にテメラリオのハードコアバージョンが登場するとなった際、「ハイブリッドレス」を期待してしまうわけですね。
ただ、残念なことに、この疑問に対してランボルギーニの最高技術責任者ルーヴェン・モール氏は明確に「非ハイブリッド仕様のテメラリオ市販仕様は、現実的ではない」と明確に答えぼくらの希望を打ち砕くことに。
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テメラリオGT3のハイブリッドは「おまけ」ではなく、性能の根幹
ランボルギーニ・テメラリオのパワートレインは、4.0リッターV8ツインターボに3基のエレクトリックモーター(エンジン直結1基+フロントに2基)を組み合わせたもの。
エンジン単体でも800馬力を発揮しますが、モーターとの合算では920馬力にも達し、レッドゾーンは驚異の10,000rpmに設定されています。
しかし、この高回転・高出力仕様のエンジンは、低回転域でのトルクが薄くターボラグも無視できない性格を持つといい(高回転域を重視したためだと思われる)、これをカバーするのが即時トルクと駆動力を発揮するエレクトリックモーターというわけですね。
実際のところ、ルーヴェン・モール氏は次のように語っています。
「これは“あると嬉しい”装備ではなく、“なくてはならない”構成要素だ」
テメラリオGT3はその証明
GT3クラスのレーシングカーでは、その規定によってハイブリッドシステム(4WDも)が使用できず、そのためテメラリオGT3のエンジンでは(ターボラグが小さく即時応答性の高い)小径ターボを採用し、レッドラインも9,000rpm以下に制限。
出力も550馬力に抑えられており、(興味深いことに)市販仕様と比較すると明らかにスペックダウンしています。
加えて前輪駆動は失われ、トルクベクタリング機能なども当然非搭載となり、その結果として、「テメラリオが持つ究極の性能は、ハイブリッドなしには成り立たない」ことが証明された形となっています。
ハイブリッドは“制約”ではなく“可能性”
近年、ハイブリッドや電動化は「環境対策のための妥協」と捉えられがちですが、テメラリオはその真逆の存在で、電動化によって内燃エンジンのポテンシャルを最大限引き出しているということになり、「1万回転」というほぼ前例のない高回転型画素離縁エンジンを搭載するためにエレクトリックモーターの「アシスト」を活用していて、このモーターの助けがなければ「1万回転が実現できなかった」ということに。
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なお、この考え方はフェラーリにおいても同様で、SF90ストラダーレに積まれる4リッターV8エンジンは720馬力を発生しますが、このユニットは「ガソリンエンジンのみ」で車体を駆動することを想定し設計されているために最大トルク発生回転数は3,250回転、許容回転数は7,000回転。
一方、テメラリオと同じく3モーターハイブリッドを採用するSF90ストラダーレではガソリンエンジン単体で780馬力を発生し、これは許容回転数を7,500回転に引き上げることによって成し遂げられていますが、このため低回転時のトルクが犠牲になっていて、このエンジンは6,000回転にてようやく最大トルクを発生させるわけですね。
そして低回転時の「扱いにくさ」をカバーするのがエレクトリックモーターということになり、よってフェラーリSF90においても「ハイブリッドありき」で設計されたことがわかりますが、こういった例を見ても「近代のスーパーカーでは、環境対策ではなく、ガソリンエンジンの楽しさを最大限に引き出し、かつドライバビリティを損なわないため」にハイブリッドシステムを導入しているということがわかります。
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ただしまだまだ「スポーツカーにハイブリッド」は理解されにくい
しかしながら今のところ「スポーツカーにハイブリッドパワートレーン」という組み合わせはなかなか理解がされにくく、というのも多くの人が「ハイブリッドスポーツ」を運転したことがなく、よってハイブリッドスポーツについて「環境規制のために、”不要”なものを背負わされている」と捉えているからだと思われます。
こういった「誤解」は時間をかけて解消されることを待つしかなさそうですが、テメラリオの納車が進み、様々な「ナマの声」が聞かれるようになれば、その状況もまた変わってくるのかもしれません。
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