| 日本の自動車業界はどんどん再編されている |
さて、スズキがかねてよりウワサされていたニューモデル、「アクロス(Across)」を欧州向けに投入。
このアクロスは、提携関係にあるトヨタから供給を受けるRAV4 PHVのOEM車ですが、競合を避けるため、もしくはスズキの戦略上の理由なのか、RAV4特有の「オフロード風味」を消し去り、都会的な印象へと変化しています。
現在スズキは欧州において、スイフト、ジムニー、ビターラ、S-CROSSを展開していますが、ジムニーという特殊な例を除くと、いずれのモデルも「都会的」なイメージを持っているので、今回の新型アクロスについても洗練された雰囲気を出したかったのかもしれませんね。
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ベースはトヨタRAV4 PHV
このアクロスについて、ベースとなるのは上述の通りトヨタRAV4 PHV。
つい先日、「発売一ヶ月で」売れすぎのために受注を停止したクルマがベースということになりますが、もちろんスズキ分について、トヨタはちゃんと生産枠を確保しているものと思われます。
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ドライブトレーンに変更はなく、エンジンは2.5リッター直4(177PS)、これに18.1kWhバッテリーを持つハイブリッドシステムを組み合わせ、フロントモーターが182PS、リヤモーターが54PS、システム合計では306PS。
駆動方式はもちろん4WDを採用し、フロントとリアとのトルク配分が100:0 ~ 20:80まで変化するのもRAV PHVと同じです。
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スズキ・アクロスのインテリアはこうなっている
インテリアもRAV4 PHVとは大きく変わらず、ステアリングホイールとその上のエンブレム、メーター表示が変更される程度。
レッドステッチもRAV4 PHV「そのまま」が採用されているように見えますね。
加えてインフォテイメントシステムにも変わりはなく、9インチサイズのタッチ式スクリーンを備え、アップルカープレイ、Android Auto、ミラーリンクにも対応。
トヨタRAV4とスズキ・アクロスとはどう違うのか
そしてこちらはトヨタRAV4とスズキ・アクロスとの比較。
こちらはRAV4。
フロントから見ると、アクロスのほうがボンネットが低く、かなりスマートに見えますね。
ボンネットやフェンダーといった、プレス機を使用して大きなコストの掛かる部分の変更は行わず、バンパーやヘッドライトという、まだ製造コストが抑えられる部分の変更にとどめていますが、それでも大きく印象を変えることに成功しているようです。
こちらはスズキ・アクロスのリア。
こちらはRAV4。
フロントに比較するとリアの変更は非常に小さく、見たところエンブレムの相違程度に収まっている模様。
スズキはラインアップ間でのデザイン的統一を行っていない
なお、現在各自動車メーカーが進めているのが「デザインの統一」。
日産であればVモーショングリルであったり、レクサスであればスピンドルグリルであったり、スバルであれば「ダイナミック×ソリッド」であったり、三菱であれば「ダイナミックシールド」であったり、ホンダだと「ウインググリル」といったように、主には「顔面」の統一を図ります。
欧州車であればBMWやメルセデス・ベンツ、アウディもフロントグリルやヘッドライトの形状/構造を統一してブランドとしてのプレゼンス向上を図っているものの、スズキはそういったことを行っておらず、この理由は明かされていないため真意を知ることはできず。
ただ、世界一の自動車メーカーであるトヨタもこういった「統一」を行っておらず、おそらく(ぼくが推測するに)これは「消費者の好みを尊重したため」。
ブランドとしてのデザインや統一性、アイデンティティを強調すると、どうしても「アク」の強いデザインとなってしまい(ブランドロゴのついたバッグや服と同じ)、しかしトヨタやスズキはブランドの主張よりも「買いやすい」デザインを心がけているんじゃないかということですね。
実際のところスズキはインド市場において「一人勝ち」を収めていますが(トヨタもインド市場でのシェア拡大を見込んでスズキと提携している)、この理由としては「現地の嗜好を反映したデザインを行ったから」だとされています。
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つまり、ブランドとして「押し付けがましい」デザインを行うのではなく、インド人の嗜好を調査し、「好まれる」デザインを採用することで、より買いやすい、買ってもらいやすいクルマをつくっている、ということになりますね。
そうなると「視覚上」のブランディングとしては弱くはなるものの、消費者には受け入れられやすくなるので販売は増加し、トヨタにせよインドでのスズキにせよ、結果的に「圧倒的」なシェアを獲得することで、”トヨタ””スズキ”というブランド名を轟かせることになり、これはまた他メーカーとは異なる方向からの「ブランディング」だとも言えそうですね。
参照:SUZUKI