| スズキ・ジムニーの生産能力は限られており、スズキは厳密に各地域ごとの割当を調整している |
スズキ・ジムニーがイギリスから撤退との報道。※英国で販売されていたのは日本での「ジムニーシエラ」
ただしこれは「販売不振」が理由ではなく「排ガス規制」がその原因であり、最新のレギュレーションにジムニーを適合させることが難しいという判断から。
正確に言うならば、欧州で導入され、さらに厳格化されるCAFE規制(メーカー全体のCO2排出量を、出荷台数で割った”1台あたり”のCO2排出量制限)を達成しようとなると、1km走行当たり154gを排出するジムニーを売れるがままに販売していては、スズキ全体でこの規制を達成することが難しくなるため、泣く泣くジムニーを販売終了に、ということですね。
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ジムニーは現状だと欧州の厳しい規制にマッチしない
このCAFE規制はまことに「やっかい」としか言いようがなく(環境のことを考えると仕方がありませんが)、つまり自動車メーカーが「燃費の良い」クルマを製造するように誘導する施策でもあります。
そしてこの規制のレベルは「ちょっとやそっとの改良で達成できるレベル」ではなく、極端な小排気量化やハイブリッド化でしか達成が難しく、よって各自動車メーカーは「作りたくなくても」ハイブリッドカー、そしてエレクトリックカー(これによってメーカー平均C2排出値を大きく下げることができる)を作らざるを得なくなる、ということに。
加えてこの規制は自動車メーカーに極端な開発費の増加をもたらすことになり、これによって収益を圧迫し、ひいては失業者が増加する可能性もあると考えているのですが(現時点では、EVは高くなりすぎて売れ行きが優れず、自動車メーカーを苦しめるだけとなっている)、それでもこの規制がゆるくなる気配はなく、よって今後も多くの車種が販売終了となる可能性を秘めています。
ちなみにマツダは、欧州において「CO2平均排出量を抑えるため」2リッター版ロードスターの販売を終了させるとも報道されていますね(英国ではロードスター/ロードスターRFともに1.5リッター/2リッターを選べた)。
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なお、この規制に違反すると非常に高額な「罰金」を支払う必要があり、反対の観点から見てみると「罰金を払えばCO2排出量が規制値以上のクルマを販売できる」。
よって、罰金を払うことを覚悟して大排気量スポーツカーを作り続けるメーカーもあり(アストンマーティン、フェラーリは罰金を払ったと報道されている)、これは「割に合わないエレクトリックカーに対する投資を行い、収益性を悪化させたり、ブランドイメージを阻害したり、在庫を抱えて従業員を露頭に迷わせたり、株価が下がって株主の期待に背くくらいであれば、罰金を払ったほうがまだ健全」ということなのかもしれません。
スズキにとってジムニーの人気は想定外
スズキに話を戻すと、現行ジムニー発売時、スズキは「ここまで売れるとは思っていなかった」とコメントしていて、その理由としては「ジムニーは一般受けしないマニアックなクルマであり、新型ジムニーも既存ユーザーの買い替え+アルファくらいだろう」と考えていたのだそう。
ただ、フタを開けてみるとジムニーは世界中にて広く一般に受け入れられることとなり、これが欧州における「スズキのCO2総排出量と平均値」を引き上げてしまうことになったわけですね。
ジムニーは上述の通り「売れることを想定していなかった」クルマであり、よってスズキとしてはジムニーに大きくコストを掛けることが出来ず、よってドライブトレーンはじめ車体など多くの部分について「(改良を加えての)キャリーオーバー」。
ここまで売れることが想定できていれば、もっとお金をかけて環境性能に優れる「新型ジムニー」を開発できたのだとも思われ、しかしそうなると現在の価格よりも高くなっていたのは間違いなく、結果として「売れなかった」可能性もあって、こういった例を考えると、本当に自動車会社の経営は難しいと認識させられます(燃費性能が良くても、売れなければ意味はない)。
イギリスにおいては間もなくジムニーの受注が打ち切られ、現在受けている受注に加え、今後4-5ヶ月分の受注分しかデリバリーしないと報道されていますが、現在スズキのサイト(英国)を見ると、すでに現行ラインナップからジムニーの姿が消えていて、販売されているのは全てハイブリッドモデル(ビターラ、スイフト、スイフトスポーツ、イグニス、S-CROSS)。
スズキはジムニーの販売よりも罰金を支払わなくて済む方法を選択したということになり、しかしこれは「頑張ればCAFE規制が達成できそうな水準にある」スズキにとっては論理的な判断なのかもしれません。※ジムニーのページ自体は残されている
なお、「商用車」はこのCAFE規制の影響を受けないとも報道されていて、よって今後ジムニーは多少の改修を受け、リアシートを取り除いた「商用車」として販売が行われる、という報道も見られます。
日本のジムニーはどうなる?
そこで気になるのが日本のジムニーですが、日本では欧州同様の規制を行っていないので、当然ながらそのまま継続するものと見られます。
ただ、「国内での流通量」については大きく変わるだろうと考えていて、実際のところ2020年6月におけるジムニーの国内販売台数は前年比329.8%、つまり3.3倍。
これだけ人気があるなら当然じゃないの?と思ってしまいがちですが、ジムニーはその構造からして増産が難しく、発売早々に大人気化し、長い納車待ち期間が生じたにもかかわらず生産数を増やしておらず、これまでずっと国内販売台数「1000台前後」で推移してきたわけですね。
たとえば2020年だと1月は1,206台、2月は1,220台、3月は1,134台、4月は616台、5月は827台、そして6月は2,028台といった水準です。※4-5月はコロナの影響で極端に減ったと考えられる
6月に急激に増えた理由としては、海外出荷が減って日本への割当が増えたと考えるのが妥当ですが、とくに同じ右ハンドル国であるイギリス向けの出荷(製造)が日本へと振り分けられた可能性もあり、だとすると今後、英国へのジムニー販売完全終了とともに日本への割当が増えてくるのかもしれません。
現段階だとこれは予想の範疇を出ませんが、来月以降のジムニー登録台数を見てゆくと、ある程度の裏付けが取れるかもしれませんね。
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参照:Autocar, 日本自動車販売協会連合会