| たかがエアコン、されどエアコン。エアコンはけっこう奥が深かった |
さて、ここ最近様々な情報を公開しているブガッティですが、今回は珍しく「エアコン」について触れています(ブガッティに限らず、エアコンについて語る自動車メーカーは少ない)。
今回ブガッティのエアコンについて語ったのは2013年に自動車業界に入り、2016年からブガッティにおいてエアコン関連の設計を行なっているジュリー・レムキさん。
エアコンは、その存在を感じさせてはならない
そして彼女によれば、「人(乗員)によって快適と思う温度は異なり、それぞれに快適さを提供せなばならない。エアコンはすぐに効き、かつ音を立ててはならず、あくまでもバックグラウンドで作動し、稼働していることを悟らせるべきではない」。※欧州人は一般に22-23度を快適だと感じ、北米だとそれよりもやや低い温度を好むそうなので、そういった事情も考慮しているようだ
これはブガッティという「クルマを芸術にまで昇華させた」ブランドならではの要件だと言えそうですが、静かで乗り心地の良い室内、かつ最高級の素材がふんだんに使用されたキャビンにおいて、エアコンやファンの作動音が響いたり、風が「ゴォォォ」と唸っているようではいけない、ということなのでしょうね。
そう考えると、おそらく送風パイプの取り回しや内部構造にも注意を払い、「風量を強くしても、送風時の音が聞こえないレベル」に調整しているのかもしれません。
さらにジュリー・レムキさんによれば、ブガッティが誇る「スピード」もエアコンの効きに影響があるといい、一般的な速度で走るクルマとはまったく異なるエアコンシステムが必要になる、とのこと(時速250キロ以上になると車内外の圧力差によって換気が難しくなるようだ)。
加えて、シロンやディーヴォのフロントウインドウの角度は21.5度と比較的緩く、一般的なコンパクトカーの「30度」に比較すると車内に(直射による)熱を入れやすく、とくにオプションのスカイビューになるとさらに室内温度の上昇を招きやすいとも語っています。
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こういった「(快適温度を保つための)悪条件」が揃うブガッティにおいて、ジュリー・レムキさんが採用したのは「ハイパワーなエアコン」で、その出力は10キロワット(13馬力)。
そう言われてもピンと来ないのですが、ブガッティによると一般的なマンションの部屋と同サイズの80m2(51.65畳)を冷やすだけのパワーがあるといい、そう考えるとそのエンジン同様に「とんでもないパワー」ですね。
なお、これだけのパワーをエアコンに与えたのは、その販売の多くが「中東」ということもあり、かの地で問題となる「直射日光による室内温度上昇」に対応したためなのかも。
さらには8リッターW16というとんでもない熱を発生するエンジンをドライバー背後に搭載しているということもあり、フレームを介して伝わってくる熱もバカにならないのかもしれません。
エアコンが乗員に与える印象は想像以上に大きい
「エアコン」というと走行性能に関わる部分ではないために軽視されがちですが、実際には乗員に与える影響はけっこう大きく、たとえばパイプの取り回しに問題があってパイプに水が溜まり、そこからカビが生じて臭くなるという例も(高級車といえど、エアコンが臭くなる例は多い。経験上はレンジローバーが該当)。
そして「送風」も意外と重要で、たとえばアウディTT(8S)に採用されていた「デラックスオートエアコンディショナー」は、送風口のフィンがタービンブレード形状を持っており、そこから出る風は乗員を直撃することなく車内を満遍なく暖め、また冷やすことになり、「スゴいエアコンだな・・・」と驚いた記憶があります(今後生涯にわたり、アウディTTは”エアコンがとんでもなくよく効いたクルマ”としてぼくの記憶の中で生き続けることだろう)。
ちなみにポルシェ・パナメーラのエアコンも非常によく効き、かつ風が直撃することもなく車内を快適温度に保つので、ポルシェといいアウディといい、そしてブガッティといい、フォルクスワーゲングループの各ブランドは「エアコンにこだわりアリ」なのかもしれませんね。
参照:Bugatti