| 文化の盗用、民族への配慮は年々重要視され、無視できない問題に |
さて、ちょっと前に報じられた「ジープ・チェロキーの名称問題」。
そもそも発端は、チェロキー族の首長であるチャック・ホスキンJr.氏が「ジープは、クルマを売るためにチェロキー族の名を使用しており、これは適切な使い方ではなく、この名称を使用しないでほしい」と語ったこと。
なお、チェロキー族はアメリカの先住民(ネイティブ・アメリカン)で、現在も部族共同体を形成して生活を行っています。
最近話題となる文化の盗用?
これは最近大きく報道されるようになった「文化の盗用」に類する問題だと思われ、たとえばアメリカのセレブ、キム・カーダシアンが発表した下着ブランド「キモノ(KIMONO)」論争とよく似ているのかもしれません。
法的には、その商標を所有していれば「使用に問題はない」ということになるものの、簡単に法だけで片付く問題ではなく、場合によっては関係者全てにダメージを負わせる可能性もあるナーバスな問題でもあります(この問題による勝者はない)。
ジープ側は対話の姿勢を見せるが
なお、今回のチェロキー族首長からの要望に対し、当初ジープ側(親会社であるステランティスのカルロス・タバレスCEO)は「問題があれば、それを修正したいが、現時点では本当に問題かどうかの把握ができていない」とコメント。
加えて「ネイティブアメリカンの勇気や誇りをたたえて命名した車名」だと主張しており、チェロキー族を利用したり名誉を傷つける意図はない、とも主張しています。※ジープは「チェロキー族の戦士」をイメージした「チェロキー・ウォーリアー」なる特別仕様車を発売したこともある
ただ、その後ちょっとした進展があり、ステランティス側からチャック・ホスキンJr.首長へとコンタクトがあって、「チェロキーの名を使用しない」という申し入れがあった模様。
しかしながら、この申し入れについてチャック・ホスキンJr.首長は「儀礼的なものであって、実際にチェロキーの名称を取り下げるかどうかは疑わしい」とも懸念を示し、まだまだその成り行きは不透明といったところです。
しかしながら現実的に対話のドアが開かれたのは喜ぶべきことでもあり、もしかすると「チェロキー」の名がドロップすることになるかもしれませんね。
ほかにはこんな例も
ちなみに、同じような「部族」の名を持つクルマとしてはフォルクスワーゲン「トゥアレグ」。
これはアフリカを中心に活動する遊牧民「トゥアレグ族」をイメージしたもので、高価な(染料が高い)青い衣装を着用していることが特徴。
よってフォルクスワーゲンは「アフリカという、エキゾチックな旅へのあこがれを感じさせる地の裕福な遊牧民」をイメージしてトゥアレグという名を与えたわけですが、トゥアレグ族は奴隷売買を行うこともあったため、「奴隷商人のイメージがある」として当時批判されたことも。
兄弟車として登場したポルシェ「カイエン」もアフリカ原産の「カイエンペッパー」にちなんだ命名なので、両社は「オフローダーにはアフリカに関係するネーミング」を与えたかったのでしょうね(欧州にとって、アフリカはとくに旅情を感じさせる地であるようだ)。
そして「指摘を受けて名称変更を行う」例もあり、(インディアンをマスコットとする)ワシントン・レッドスキンズは暫定として「ワシントン・フットボールチーム」へと名称変更を行い、クリーブランド・インディアンスも名称変更を行うという声明を出しています。
こういった流れを見ても、やはりジープ「チェロキー」がその名を変更するという流れは不可避であるようにも思えます。