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VWのCEO電撃解任劇はまるでドラマのようだった!本人出張中に他役員が密かに集まって解任を決定、本人が出張から戻った数時間後にその事実を伝える

2022/07/29

フォルクスワーゲン

| その前には権限を剥奪されて閑職へと追いやられ、着々と解任の準備が進められていたようだ |

退任を呑むまでの猶予はわずか24時間

さて、数日前のフォルクスワーゲンCEO、ヘルベルト・ディース氏の解任劇は非常にショックな出来事ではありましたが、なんとヘルベルト・ディース氏が自身の解任を知ったのはその数時間前だった、とのこと。

その数時間前までヘルベルト・ディース氏はアメリカに出張しており、その「出張にて留守にしている間」にほかのフォルクスワーゲングループの役員がドイツに集合し、どうやってヘルベルト・ディース氏を失脚させるかの策略を練っていたのだそう。

そして出張から戻った数時間後に「クビ」が言い渡されたということになりますが、まるでドラマのような展開だと言えるのかもしれません。

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フォルクスワーゲンのトップを務めたのはわずか数年

ヘルベルト・ディース氏は2015年にBMWからフォルクスワーゲンのトップへと移ってきた人物ですが、その当初の段階ではフォルクスワーゲンの最大株主であるポルシェ創業者一族、ピエヒ家の支持を得ており、大胆な改革を推し進めることで各部署と生じた摩擦もピエヒ家によって吸収されてきたといいます。

ただし組合との対立(雇用を脅かすような発言を度々行ってきた)、ほか役員との不仲が表面化するにあたってピエヒ家もついにはヘルベルト・ディースをかばうことが難しくなり、ついに同氏は四面楚歌状態に。

そこで昨年12月に経営委員会が再編されてヘルベルト・ディース氏からいくつかの権限が剥奪されることになったわけですが、これについてフォルクスワーゲンに近いアナリストは「ヘルベルト・ディース氏の退任は、彼がここ数ヶ月でいかに疎外されていたかを考えれば、驚くべきことではない。このタイミングは不幸なことであり、VWの機能不全を示す一つの例でもる」とコメントしており、フォルクスワーゲンにも問題があるということを指摘しています。

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あえて失脚するように仕向けられたようにも

そして昨年12月にはもうひとつの出来事があって、それはヘルベルト・ディース氏から権限が奪われると同時に「新ソフトウェア部門であるCARIAD(キャリアッド)の責任者に任命されたこと」。

このキャリアッドは、フォルクスワーゲングループの新型車に搭載するソフトウエアの開発を内製化する目的で設立されていますが、おそらくヘルベルト・ディース氏はその方面に対して明るくはなく、しかしその仕事を押し付けられることで案の定業務に遅れが生じ、ポルシェ、ベントレー、アウディに搭載するソフトウエアの開発が遅延したためにこれら3ブランドからのEV発売も遅れてしまったわけですね(これらのブランドはVWグループの中ではもっとも利益率が高い部類である)。

とくにマカンEVについては、すでに車両(ハード)の準備ができていたもののソフトウエアが間に合わず、それによって発売が1年後ろ倒しされ、フォルクスワーゲンブランドが強力に推し進めていたEV戦略が遅延するによって、ついにピエヒ家からの信頼も完全に失ってしまい、誰も味方をしてくれなくなってしまったという背景があるもよう。

さらにIDシリーズにおいては、本来「オンラインアップデートで」改良できるはずだった問題もオンラインで解決できず、顧客がディーラーに車両を預けなくてはならなくなり、国によってはオンラインアップデートを前提にディーラー数を絞ったり、「直販」体制を敷いていただけに(VWに)大きな負担が生じた、とも。

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ただ、これは「ヘルベルト・ディース氏が力を発揮できない分野での仕事を押し付け」責任を取らせて解任に追い込むための準備を行ったようなものだとも考えられ、そして実際に同氏が出張にて留守にしている間に「欠席裁判」を行って解任を決めたということになりそうです。※こういった例を見ると、フェラーリのように、エレクトロニクス業界からトップを連れてくるということの意味が理解できる

そしてヘルベルト・ディース氏はいくつかの選択肢を迫られるとともに24時間の猶予を与えられ、結局退任を受け入れたそうですが、本来の任期であった2025年10月までの報酬を受け取る権利も提示されているといい、その額は3000万ユーロ(約41億円)にものぼる、と報じられています。

なお、フォルクスワーゲングループはこれまでにも強硬な人事が度々報じられており、それを懸念してか大量に人材が流出することでも知られます。

とくにデザイナーだと、ベントレーやランボルギーニにてチーフデザイナーを努めたルク・ドンカーヴォルケ氏がヒョンデに、ブガッティ・シロンをデザインしたサシャ・セリパノフ氏がヒョンデ経由でケーニグセグに、アウディTTをデザインしたペーター・シュライヤー氏はキアに、ランボルギーニ・アヴェンタドールをデザインしたフィリッポ・ペリーニ氏はヒョンデに、買収したイタルデザインの創業者とその息子であるジョルジエット・ジウジアーロとファブリッツォ・ジウジアーロは退社して自身のデザイン事務所を設立し、VWグループのチーフデザイナーであったワルター・デ・シルヴァ氏は中国紅旗に。

そのほかにも多くのトップクラスの人材が他の自動車メーカーへと移籍していて、「VWグループはかなり仕事がやりづらいんだろうな・・・」という印象を持っています。

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参照:Bloomberg

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