| 加えて、テスラは中国市場での販売平均単価が非常に低く、つまり価格競争の渦中にあるとも考えられる |
そしておそらく、EVの覇権争いは今後熾烈を極めるだろう
さて、テスラが単月にて「中国での納車台数」記録を更新したことが明らかに。
これは中国乗用車協会(CPCA)が発表した報告書によって確認されたもので、これまでの最高だった6月から4,000台以上を増やして83,135台が納車されています。
なお、テスラは今年に入ってから上海工場のロックダウン、そしてサプライヤーからの供給網の混乱によって中国での生産が大きく減ってしまい、それまで上海工場がテスラにとってもっとも大きな生産規模を持っていただけに大きなダメージとなっていたわけですね。
そこでテスラは「それまでの」メインだったカリフォルニア州フリーモント工場の稼働率を上げ、なんとか全体での生産を落とさないように努めてきたものの、上海での生産欠落期間を補うことができず、第3四半期の生産台数がアナリストの予想を下回ってしまい、そこで株価が大きく下がっています。
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ただしテスラは常に状況を好転させてきた
しかしながら今回の数字を見るに、これはロックダウン、サプライチェーンのボトルネック、そのほかの様々な状況に対してテスラは手際よく対処してきたということを意味しており、これを報じたロイターも「中国製テスラ車の過去最高の売上高は、電気自動車がモビリティのトレンドをリードしてきたことを示している」とコメントしています。
なお、今回の「中国での過去最高の納車」については、明るい材料のようには見えるものの、実際には懸念がないわけでもなく、同じ9月に%の成長を見せて200,973台を販売したBYDに大きく差をつけられているため。
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加えて、テスラは販売を促進するために9月から保険インセンティブを強化しており、さらには「(テスラからテスラへの)買い替え促進」のために割引を提示するというオーナーシップ・ロイヤリティ・プログラム実施の影響も大きいと言われます。
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さらに言えば、テスラが中国で販売しているモデルの平均価格は(下の表の通り)米国、欧州に比較して半分以下~60%くらいとなっていて、これはポルシェやメルセデス・ベンツといったプレミアムカーメーカーとは逆の傾向です(それらは中国での平均販売価格が他地域よりも高い。ポルシェの場合はすべて輸入車扱いになるので税金等で自動的に高くはなってしまうが)。
つまりテスラは中国にて「現地のほかEVメーカーとの価格競争に巻き込まれつつある」という見方もでき、状況によっては他の中国のEVメーカーに押されてしまう可能性がないとも言えません。
中国(元) | 米国(ドル) | 欧州(ユーロ) | |
ポルシェ | 1,397,302 | 113,345 | 129,848 |
メルセデス・ベンツ | 772,733 | 60,087 | 68,852 |
テスラ | 335,875 | 91,196 | 60,757 |
テスラは最後の競争までは「耐え抜く」ことができるだろうと考えている
一方で価格競争真っ只中なのは中国のEVメーカーも同じでことで、実際に中国のEVメーカーのほとんどは利益を出せていないという報道もあり、そうなると勝手にそれらが撤退する可能性も否定できず、残ったテスラ(とわずかな中国のEVメーカー)に注文が集中するということも起こりえます(そして、テスラはこの状況でも利益を十分に出せているので競争力も残されている)。
要は「テスラが中国で生き残れるかどうかはわからない」という状況ですが、ひとつぼくが確信しているのは「テスラは最後まで生き残る自動車メーカーの一つ」になるだろうということで、しかしそこからの勝負は予測がつかないということに。
そしてもちろん、イーロン・マスクCEOはそういった「先」まで見ているはずで、だからこそ「生産効率」「生産コスト」を非常に重要視しているのだと思われます(この先、タフな競争になることを予見している)。
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参照:Reuters