| テスラとアップルとは多くの点で共通している |
もはやテスラはクルマの粋を超えてブランド品に近いポジションを獲得している
さて、日本国内にて発売されたばかりのテスラ・モデルYを見てきたのでざっと紹介したいと思います。
モデルYを見てきたのはテスラ心斎橋ショールームですが、ここ最近の新型車においてはもっとも多くの人が訪れていたんじゃないかと思えるほどの賑わいで、テスラに対する関心の高さを感じずにはいられません(テスラはなんら広報活動を行っていないにもかかわらず)。
新型テスラ・モデルYはこんなクルマ
テスラ・モデルYは「ミッドサイズSUV」に分類されるクルマで、グレード展開は「Model Y(619万円)」「Model Y Performance(809万円)」の二種類(納車予定は8〜9月)。
前者はシングルモーター後輪駆動、一回の満充電当たり航続可能距離は507km、最高速は217km/h、1−100km/h加速は6.9秒というスペックを誇り、令和3年度補正予算および令和4年度「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象車両に認定済み。
モデルY パフォーマンスの方は現在補助金対象申請準備中とのことで、デュアルモーターそしてAWDとなり航続可能距離は595km、最高速は250km/h、1−100km/h加速は3.7秒という高性能ぶりを発揮します。
モデルYにつき、簡単に言うとモデル3のSUV版ということになりますが、実際両者がに並んでいる姿を見ると「けっこう雰囲気が違うな」という印象があり、むしろモデルYのほうがアクティブでスポーティというイメージも。
ちなみにリアスポイラーはモデルYのほうがシャープ、かつ突き出ているように見えます。
ヘッドライトはモデル3と共通のものを使用しているように見えますね。
やはりこの「グリルレス」はけっこうなインパクトがあり、私見ではありますが「非常に知的」という印象があって、一部の「巨大で無意味な」装飾過多のグリルを持つ一部国産車に比較して「対極」という感じです。
ちなみにホイールは20インチのインダクション「(マットブラック仕上げ)」。
自動運転に寄与するサイドカメラ。
ウインドウは「サッシュレス」。
グリルレスといいサッシュレスといい、アメリカ市場そして中国市場の好みを抑えていて、こういったところを見ると、テスラは「マーケティングなんぞやらない」といいつつ、実はほかのどの自動車メーカーよりも真剣に市場調査を行っているんじゃないかという印象も。
充電ポートはここを押せば開きます。
リアアンダーはディフューザー形状。
テールゲートの開口部はけっこう大きく、荷室は相当な容量を持つようですね。
ちなみにテスラ・モデルYのボディサイズは全長4751ミリ、全幅1921ミリ、全高1624ミリというもので、ポルシェ・マカンよりもちょっとだけ小さいという数字です(テスラ・モデル3だと全長4694ミリ、全幅1849ミリ、全高1443ミリ)。
テスラ・モデルYのインテリアはこうなっている
そしてここからはテスラ・モデルYのインテリア。
ドアハンドルはフラッシュマウントされ(ちょっと前のフェイスリフト=マイナーチェンジにて、クロームからマットブラックになった)、幅が太い部分(後ろの方)を押すとハンドルの前部分がポップアップし、それを引いてドアを開けることになります。
ちなみに降車時はドア内張りに設けられたボタンを押すとドアが閻くイージーオープン仕様。
シートは非常にやわらかく、まるでソファのような座り心地(このあたりもメインマーケットである北米と中国の嗜好をよく捉えている)。
さらにルーフも広い面積を持つグラストップであり、これもまた多くの市場にて求められる要件だと言えそうです。
ダッシュボードとステアリングホイールは極めてシンプル。
センターには大きなディスプレイが鎮座していますが、このミニマルなデザインについては現在多くのEVが採用することになり、つまりはテスラがひとつの基準となっているということがわかります。
センターコンソールも究極のシンプルさ。
テスラについては内外装各部の作りについて組み立て品質がよろしくないなど言われているものの、展示車のボディパネル、ランプ類の組付け、パネルどうしのギャップやチリ、そして内装だと各部の組み立て精度、ステッチ等を見るに、「非常に高い品質を持っている」という印象すら受けます。
とくにインテリアについては、これだけ簡素なのに全然安っぽく見えない」ということには驚かされ、これは他の自動車メーカーではなかなか真似できないことかもしれません。
やはり「テスラは強い」と思う
なお、今回のモデルYを見て改めて感じたのが「テスラはやはり強い」ということ。
ショールームへの来場者の熱気、そして幅広い年齢層、属性を見るにアップル製品の購買層との共通性も感じられ、その意味ではテスラはEVメーカーという会社を通り越してひとつのブランドになったとも捉えることが可能です。
たとえばスマートフォンだと、いまやiPhoneを超えるコストパフォーマンスを持つ製品も多々あり、しかしそれでもiPhoneが選ばれるのは盤石のブランド力の賜物だと思われ、そして現在のEV業界においてはテスラの価格性能比に優位性があるものの、いずれは中国製品に迫られることになり、しかしそのときにモノを言うのはブランド力。
トヨタやホンダ、フォルクスワーゲンなどのEVは中国の自動車メーカーの安価なEVにシェアを奪われることになるかもしれませんが、それでもテスラはそのポジションを脅かされることなく王座に君臨するのかもしれません。
そしてこれからのビジネスにおいて、もっとも重要な要素もまたブランド力になると考えていて、それは「現在の工業製品においては、発売するメーカーによる内製率が下がっており、サプライヤーからの仕入れが増えているため」。
そういった状況ではほかメーカーとの差別化を行いにくく(ほかメーカーも自社と同じサプライヤーから仕入れている可能性があるので)、つまり製品の性能による差別化や競争力の強化を行うことが難しくなってしまい、しかしそのときに他社をリードできるのは「ブランド力」だと考えられます。
自動車業界だと、たとえばスーパーカーというセグメントにおいてはマクラーレンが「最速・最強」だと考えていますが、それでも多くの人がマクラーレンではなくフェラーリやランボルギーニを選ぶのは「ブランド力」のなせるワザであり、そしてブランド力とは一朝一夕にして手に入るものではなく、小さなことの積み重ねなのかもしれません。
その意味において、テスラは「まだ誰も手を付けていない頃から」EVの開発や販売を行っており、それによって「テスラはEVのパイオニアである」「どんな逆境にも負けずに大手自動車メーカーと肩を並べるまでになった」「多くのEVは結局のところ、テスラがやってきたことをなぞっているにすぎない」といった印象を多くの人々に与えているものと思われ、これがテスラが短期間でブランド力を身につけてきた秘訣なのかもしれません(ブランド力とは、絶え間ないチャレンジによって構築されるものであり、模倣によって獲得できるものではない)。