| FKP(フェルディナント・K・ピエヒ)なしには現在のランボルギーニは存在し得ない |
ランボルギーニが初の市販ハイブリッドカー「シアン」をフランクフルト・モーターショーにて一般公開。
そしてその正式名称を「シアン(Sián) FKP 37」としています。
先日の先行オフィシャルフォト公開時にはなかった「FKP37」ですが、これは2019年8月に亡くなった前フォルクスワーゲングループ会長、フェルディナンド・K・ピエヒ(Ferdinand K. Piëch)氏のイニシャル、そして誕生年である1937年から取ったもの。※ランボルギーニは年号の下2ケタを強調することが多い。創業年であり1963年の「63」を記念モデルに多用するなど
ランボルギーニ・シアンFKP37は「追悼モデル」?
こういったネーミングが採用されるあたり、シアンFKP37はフェルディナント・ピエヒ氏への追悼モデルとも言えそうですが、なんでランボルギーニが?と思う人も多いかもしれません。
これについては説明を要するところで、まずフェルディナント・ピエヒ氏はポルシェの女系一族で、ポルシェ創業者の孫。
ポルシェに入社するも「ポルシェ社における一族の影響の高まり」を薄めるためにポルシェを退社せざるを得なくなっています。
その後メルセデス・ベンツ、アウディを渡り歩き、アウディでは直5エンジン、クワトロ(4WDシステム)等、現代のアウディに不可欠な要素を次々と確立した人物。
その功績が認められ、アウディの親会社であるフォルクスワーゲングループ総帥にまで登りつめた人です。
その人柄は非常にエキセントリックで難しい人物であったと言われ、その一方で生粋のカーガイであったことも間違いなく、ブガッティやランボルギーニを買収し、フォルクスワーゲングループに併合したのもまさにフェルディナント・ピエヒ氏その人。
とにかくハイパワーそして速いクルマが大好きで、アウディでもアヴスやローゼマイヤーなどハイパーカーに近いコンセプトカーを発表し、その後にはブガッティにてシロンを実現(VWグループ内、とくにスポーツカーは、パーツの共有はなくとも概念としての共通項が多い)。
そういった経緯もあって、ランボルギーニはフェルディナント・ピエヒ氏の「庇護」を受けていたとも考えられ、つまり同氏なくしては現在のランボルギーニは存在しない、と言って良いかもしれませんね。
ランボルギーニは親会社のVWにとっては「方向性にマッチしない」ブランドだった
ランボルギーニは今回、シアンの発表にあたり「フェルディナント・ピエヒ氏はランボルギーニのポテンシャルを見抜き、いかにフォルクスワーゲングループにそれがマッチするかを知っていた。同氏はエンジニアであると同時に革新を目指した人物であり、ランボルギーニのV12エンジンを愛した人物だ。そしてランボルギーニ・シアンFKP37は全く新しいハイブリッドシステムを搭載し、同氏の認識が正しかったこと、ランボルギーニのフォルクスワーゲングループにおける役割を示すものだ」と発表。
現在、フォルクスワーゲングループの各ブランドは、ポルシェ然りアウディ然り、フォルクスワーゲン然り、「エレクトリック」重視の傾向が強くなっています。
▲これがそのスーパーキャパシタ、通称「スーパーキャップ(アメコミのヒーロみたい)」。
シート後方のバルクヘッド内に内蔵されている、と報道されている(位置的にちょっと恐ろしくはある)。
しかし一方で、現在のフォルクスワーゲングループを作り上げたフェルディナント・ピエヒ氏が愛した大排気量V12エンジンという存在があり、V12とエレクトリックとを組み合わせたシアンこそがフェルディナント・ピエヒ氏の目指した未来である、ということなのかもしれませんね。
なお、エレクトリック化を推進するフォルクスワーゲングループにとって、V12、V10という大排気量エンジンをブランドコアとするランボルギーニは「扱いに困る」ブランドであったと思われ、一時は売却の話も出たほど。
しかし今回、他社そして他ブランドとは異なる方向での「エレクトリック」を実現することになり、ブランド内でのイメージ的整合性も取れて、かつ役割も明確になったと考えて良さそう(エコとは異なる方向性のハイブリッドを示すことができ、ブランド全体としてのエレクトリック化における可能性が広がったことで他グループ、他社に対して優位性を持てる)。
ランボルギーニ・シアンFKP37は、アヴェンタドールをベースとし、ランボルギーニの未来を示すコンセプトカー「テルツォ・ミッレニオ」、そして現在のランボルギーニのイメージを決定づけた「カウンタック」のエッセンスを加えたモデル。
そして機能的には「スーパーキャパシタ」を使用し、「速く走るための」ハイブリッドシステムを有した「過去と現在、未来とを結ぶ」重要な一台でもありますね。
システム合計出力は819HP、0-100km/h加速は2.8秒、最高速度は350km/h以上を誇り、その価格は約3億円そして限定販売台数は63台。
▲リアウイングがポップアップすると、サイドのフィンとあわせて整流効果が高まる模様
ちょっと奇妙なのは、フェルディナント・ピエヒ氏の死去について、追悼のコメントを出したのは、グループ内ではアウディとフォルクスワーゲンのみ。
肝心のポルシェからはコメントが出されておらず(日本のサイトであっても、本国版の翻訳が通常は掲載されるが、それがない)、ポルシェを去った経緯、仲違いからVWグループの会長職を去ったと言われるだけあって、いろいろな確執があるのかもしれません。
それでは動画を見てみよう
すでにランボルギーニ・シアンを紹介する動画はたくさん公開されているものの、ここではすべてを紹介しきれないので、いくつかをピックアップ。
こちらはシアンのアン・ヴェール時の様子。
数年前に女性の起用方法が問題となりましたが、スカートではなく「パンツスーツ」での登場となっており、欧州のモーターショーではパンツスーツが一般化しそうです。
そしておなじみスーパーカーブロンディさん。
DP CARSからも紹介動画が登場。
VIA:lamborghini