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EUの「2035年から内燃機関禁止」法案にドイツ、フランスが「待った」。ただしメルセデス・ベンツ、VWはむしろ賛成の意向を示す

2022/06/16

メルセデス・ベンツ

| すでに大量の投資を行ったメルセデス・ベンツ、VWはこの法案可決によって有利に立てる可能性がある |

ただし可決にはEU27カ国すべての署名が必要であり、容易なことではない

さて、先週EU(欧州連合)は「2035年から、EU内にて、ガソリン/ディーゼルエンジンを積んだクルマの販売を禁止する法案を支持する」決定を下しており、今後加盟国間で詳細が協議されることになるものの、これは事実上の「内燃機関に対する死刑宣告」といえそうです。※プラグインハイブリッドや、レンジエクステンダーであっても販売不可

ちなみにEUは「合成燃料の使用もNG」としており、いかにカーボンニュートラルを実現できたとしても内燃機関を締め出したいと考えているようで、つまりはCO2削減よりも「EVへの移行」を目的としているのかもしれません。

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対応は国や自動車メーカーによって異なる

なお、このEUの決定について、ドイツ政府とフランス政府は「この計画はあまりにも野心的でコストが高く、業界に大きな悪影響を及ぼす」という懸念を示していますが、これはもちろんEV化に際して多額の研究開発費やEV生産のための設備投資が必要になることや、ガソリン/ディーゼルエンジンの製造を廃止することで多くの人が雇用を失うであろうことを心配しており、企業の体力消耗、失業率の上昇といった国力の低下を案じているわけですね。

ただ、自動車メーカー単位ではまた違った見解を持つようで、メルセデス・ベンツとフォルクスワーゲンはこの「2035年にガソリン/ディーゼル禁止」についてウエルカムな姿勢を見せており、たとえばメルセデス・ベンツはこの法案を支持するどころか2035年以前にこの目標を達成できるという姿勢を見せていて、メルセデス・ベンツの渉外部長であるエカート・フォン・クレーデン氏によれば「2030年までに、市場の状況が許す限り、完全に電気自動車に移行する準備が整っている」とコメント。

そして「市場が許す限り」というのはインフラの問題を指し、むしろ政府に対して迅速な行動を促しているようですね。

一方フォルクスワーゲンだと「電動モビリティへのシフトは 不可逆的 であり、可能な限り早く内燃機関を廃止するため、この法案は環境的にも技術的にも経済的にも唯一賢明な方法である」いう見解を示しており、こちらも「達成可能」という認識です。

フォルクスワーゲン

メルセデス・ベンツとフォルクスワーゲン以外にも、「2035年までにガソリン/ディーゼル車の販売終了」を支持しているメーカーはいくつかあり、その一例だとフォード、ステランティス、ジャガーといったところ。

実際に「2035年まで内燃機関禁止」は難しい?

そしてこの法案が可決されるかどうかについては、EUに加盟している27カ国すべての署名が必要であり、しかし上述の通りドイツ、フランス、そしてイタリアといった大国(つまりは自動車メーカーを持つ国)はこれに反対していて、この法案が施行されるかどうかは今のところ不透明。

ちなみにイタリアは「フェラーリやランボルギーニなど、イタリアが誇る、しかし生産台数が少ないメーカーはこの法案の対象外にしてほしい」といった意見を出しており、しかしポルシェはこれに反対して「いずれの自動車メーカーも平等であるべきで、例外はあってはならない」とも。

ポルシェ
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参考までに、(今やラインアップ9台のうち4台、つまりほぼ半数が電動化されるに至った)フェラーリもガソリン/ディーゼル禁止に対しては「望むところだ」という姿勢を打ち出しています。

その一方、ランボルギーニやブガッティは合成燃料に可能性を見出しており(しかし電動化にネガティブなわけではない)、国や自動車メーカーによって様々な見解が示されているのが面白いところですね。

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参照:Automotive News

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