| ガソリンエンジン禁止の流れは政治的利用もあって、想定よりも遥かに速く進んでいるようだ |
あまりに早すぎる流れに自動車メーカーも対応に苦慮
カナダ政府が「2050年までにCO2排出量ゼロ」を目指すという目標を掲げ、そのために2035年以降、ガソリン/ディーゼルエンジンを積むクルマの販売を禁止する、と発表。
この決定によって2035年以降はPHEVも「アウト」ということになり、ピュアEVもしくはFCVしか新車販売ができなくなります。
なお、ちょっと前までであれば、「ガソリンエンジン搭載であっても、PHEVであれば許容する」という国や地域があったものの、最近ではそれすらも認めないという風潮があり、一部自動車メーカーの「ハイブリッドを通り越してEVを発売する」という行動は正しかったということになりますね(ハイブリッドカー開発にかけたコストを吸収するだけの時間的猶予がない)。
乗用車だけではなくトラックも禁止
今回、カナダの決定において「ちょっと厳しい」のは、他国ではまだ見逃されているトラックなど商用車も規制の対象となること。
カーボンニュートラルを目指すのであればこれを放置できないのは当然ではありますが、カナダではこれを達成するため、2025年と2030年に暫定目標を設定する、ともコメントしています。※国としてカーボンニュートラルを目指すのであれば、すでに販売されたガソリン車も規制の対象にかる可能性も考えられる
参考までに、カナダは国土面積が世界で2番めであり、かねてより気候変動対策を広く支持。
ただし現在カナダで販売されている自動車のうち、電気自動車はわずか3.5%なので、政府はEV普及のために相当な努力をせねばならないということになりますが、ジョナサン・ウィルキンソン環境大臣は今回の声明の中で、「我々は、カナダのゼロエミッション車の販売目標を、最も野心的な北米の管轄区域の目標と一致させることを約束する」「米国と協力して燃費規制の調和を図り、消費者へのリベート、充電ステーション、企業への減税、業界の移行コストに投資する」とも述べており、この方針を強力に進めることを改めて表明しています。
現時点ではこういった国や地域がガソリン車の禁止を表明
今のところ、下記の国や地域がガソリン車の新車販売を禁止していますが、中には「PHEVはOK」としているところ、商用車は「ガソリンOK」とするところもあり、その基準は統一されていないようですね。
ちなみに現在世界で言われる「電動車」とはEV、PHEV(プラグインハイブリッド)を指し、HV(ハイブリッド)を含めないというのが一般的。
ただ、日本における電動車の影技については、2018年に経産省が自動車新時代戦略会議でまとめた「次世代車」に相当すると捉えられており、これによると次世代車とは「ハイブリッド、プラグインハイブリッド、BEV(バッテリーEV)、FCV(燃料電池車)」。
参考までに中国だと電動車に相当する区分は「NEV」となり、中国汽車工程学会(SAE=China Society of Automotive Engineers)が発表したところでは「PHEV、HV、EV、ECV」という定義です。
ガソリン車販売禁止国・地域一覧
- ノルウェー・・・2025年(HV、PHEVも禁止)
- オランダ・・・2030年(HV、PHEVも禁止)
- ドイツ・・・2030年(HV、PHEVも禁止)
- イスラエル・・・2030年(HV、PHEVも禁止)
- スロベニア・・・2030年(PHEVは規制対象外)
- アイルランド・・・2030年(HV、PHEVも禁止)
- アイスランド・・・2030年(HV、PHEVも禁止)
- スウェーデン・・・2030年(HV、PHEVも禁止)
- イギリス・・・2030年(PHEVは2035年から禁止)
- 米国カリフォルニア州・・・2035年(HV、PHEVも禁止)
- 香港・・・2035年(HV、PHEVも禁止)
- カナダ・・・2035年(HV、PHEVも禁止)
- 中国・・・2030年(HV、PHEVは規制対象外)
- フランス・・・2040年(HV、PHEVも禁止)
- スペイン・・・・・・2040年(HV、PHEVも禁止)
自動車販売市場の上位3カ国だと、3位の日本では「2030年代なかばにガソリン車を禁止する方向で協議中」、2位のアメリカは「国全体としては具体的な時期を明言していない」、最大市場の中国は「HVは規制なし」となるなど不透明な状況となっており、こういった状況が「トヨタがガソリンエンジンを残す」「フォルクスワーゲンがアメリカ、中国市場向けにはほかよりも長くガソリンエンジンを供給する」としている所以なのでしょうね。
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参照:Reuters