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中国で「ピーク時には500社もあった」EVメーカーが今では100社へ。すでに市場は雌雄が決し、テスラとBYDでEV市場の半分、上位4社で66%を占める

2023/07/02

EV

| 中国のEV市場はすでに淘汰の時代を迎え、その勢力図がおおよそ決定されることに |

やはりもっとも強いのはBYD、2番手はテスラ

さて、現在中国は「最大のEV市場」となっており、すでに販売される新車の1/3以上がEVという状況であると報じられますが、これは政府がEVメーカーやEV購入者に対して出す補助金や様々な優遇による影響が大きいとされています。

そして新興EVメーカーは「EVを作ること」で政府からお金をもらえたり優遇措置を受けることができるため、売れる以上の数のEVを製造し、空(から)登録しているというニュースも報じられたばかり。

数千台のEVが打ち捨てられた「電気自動車の墓場」が報じられる。その様子はまさに衝撃的、中国のEVメーカーが補助金を受け取るため過剰に生産した成れの果て【動画】
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さらには。こういった恩恵にあずかろうと多くのEVメーカーが雨後のタケノコのようにニョキニョキ誕生しているのが中国の現状であると伝えられていたものの、直近ではその風潮がやや変わりつつあるようです。

BYD
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すでに中国のEVメーカーは大幅減少

上述の通り中国政府はEVの製造に対して多額の補助金を出していますが、これがはじまったのはおおよそ10年前。

そしてそののちには大量のEVメーカーが誕生し、2019年にはピークとなる500社ものEVメーカーが中国内に存在したものの、現在ではその多くが倒産し、いま残っているのはおよそ100社程度だと報じられています。

中国のEVメーカーは現在300社、さすがに中国政府も「多すぎ」と語る。しかし半年前には「400社」が存在し、6ヶ月で100社も倒産
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この状態は一時の「過密」から「集中」へと緩和されたとも言われ、この判定は(学者や規制当局が競争の評価や市場集中度の測定に用いる指標である)ハーフィンダール・ハーシュマン指数(Herfindahl-Hirschman Index)に基づき数学的に判断されているのだそう。

さらに上海を拠点とする86Researchの自動車アナリスト、王漢陽氏によると「最初の補助金以降の新エネルギー車新興企業をすべて数えると、80%が市場から撤退したか、撤退しつつある」。

さらに印象的なのは、この状況で「勝ち組」が決定しつつあるということで、その勝ち組はもちろんテスラ、そしてBY」。

そして「勝ち」「負け」の二極化をさらによくあらわしているのが上位4社のシェアが「2020年第1四半期の44%から、2023年第1四半期では60%に上昇した」ということで、つまりは群雄割拠状態から「天下が平定されつつある」という状況に向かっていることもわかります。※上位4社のうち残り2社は明かされていないが、広汽埃安新能源汽車(AION)、LI AUTO(理想汽車)だと思われる

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中国政府は「消費者は助けるが、企業は助けない」

なお、中国は、EVの販売が鈍化したことを受け、新エネルギー車(=NEV。これにはEV、PHEV、FCVが該当)を購入する消費者に対する減税措置を2027年まで延長したものの、一方で経営難に陥っている自動車メーカーを支え続けるつもりはないとも報じられ、つまり中国政府は生き残ったブランドが市場を支配し国際競争力を獲得すればいいと考えているとも報じられており、よって政府からの補助金を得られなくなったEVメーカーは今後さらにバタバタと倒産してゆくのかもしれません。

香港
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参考までに、NIOも政府からの多額の補助金を得て成長した企業の一つですが、直近では大きく販売が落ち込んで財政難に陥り、しかし中国政府からの補助金が得られなかったのか、アブダビ政府からの資本注入を受ける、という発表がなされたばかりです(アブダビ政府がNIOの発行済株式のうち7%を購入した)。

一方、政府の補助金なしでも成長できるようになったのが米億万長者ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが支援するBYDであり、現時点では中国で販売されている新エネルギー車の3台に1台以上がBYDの製品で、現在中国では最も売れているEVメーカーということになりますが、この存在感は年々強くなっており、その勢いは2位のテスラをも圧迫するほどだと言われます(そしてこの2社で新エネルギー車市場の半分近くのシェアを占める)。

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なぜ多くの新興EVメーカーが「EVレース」から脱落したのか?

そこで気になるのが「なぜ80%もの新興EVメーカーが脱落したのか」。

これについては、そもそも新興EVメーカーの多くが主に補助金の受給資格や規制要件を満たすためだけに設立されていたといい、シンガポールの自動車コンサルティング会社、JSCオートモーティブのヨッヘン・シーバート氏によれば「これらは補助金を受け取るためだけに設計されたEVを製造・販売していただけで、質の高いデザインや性能を提供できないことが多かったために競争から脱落した」。

こういったクルマは「レギュレーションカー」と呼ばれ、主にフリート(法人需要)向けに販売され、燃費規制を満たし、新エネルギークレジットやその他の補助金を獲得するためだけに設計・製造されたEVであり、デザインや性能は二の次(以下)で、「唯一重要なのは、EVであることだけだった」とのこと。

ただしその後規制が強化され、競合他社が出現し、フリート市場が飽和状態になると、こうしたクルマへの需要は衰え始め、それに伴って新興EVメーカーの多くが姿を消すこととなったようですね。

China-EV (3)

なお、今回の報道では「最近の犠牲となった企業のひとつ」としてハイテク大手バイドゥが支援する上海の電気自動車メーカー、WM モーター・テクノロジー・グループが挙げられており、同社が1月にSPAC上場すると発表してから間もない約1カ月半後、減給とレイオフを実施するとの報道が出ることに。

同社は中国のクリーンカー市場において、取引額でベンチャーキャピタル投資の上位5社のうち2社を獲得しており、つまりは非常に高く評価されながらも短期間で「没落」してしまっていて、中国におけるEV市場の競争がいかに熾烈であったかもわかります。

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参考までに、前出のヨッヘン・シーバート氏によれば、初期のEVに見られた自律走行機能、大型スクリーン、さらにはカラオケシステムといった機能は「じきに飽きられ」、それに代わって安全性、性能、耐久性という自動車本来の性能を重視する方向に(消費者の志向が)移るとも予測しており、そうなれば「フォルクスワーゲンのような、伝統のある自動車メーカーが優位に立てるかもしれない」とも述べ、「今後5年以内にその傾向は鮮明になるでしょう」とも語っています。

アメリカでも新興EVメーカーがまた一つ破綻する

そして海をまたいだアメリカでも新興EVメーカーが破綻しており、今回ローズタウン(Lordstown)が連邦破産法第11章を申請し、さらには製造契約を結んでいた鴻海テクノロジーグループとフォックスコン(Foxconn)に対して訴訟を起こしたと報じられています。

ローズタウンによれば、フォックスコンが同社に回復不可能かつ重大な損害を与えたとのことで、ローズタウンの最高経営責任者兼社長であるエドワード・ハイタワー氏によると「EV業界への早期参入組の一社として、当社は、商業および小売に大きな可能性を秘めた革新的で高い能力を持つEVであるエンデュランスを提供し、その後、この専門知識をより広範なEV開発プラットフォームに活用するため、意図的かつ戦略的なパートナーシップをフォックスコンと結んでいました。この内容は”当社の最善の努力とパートナーシップへの真摯なコミットメント”であったにもかかわらず、フォックスコンは合意した戦略を故意に実行しませんでした。当社は、フォックスコンに対する訴訟請求を精力的に追求します」とのこと。

ただしこの訴訟の行方にかかわらず”ローズタウン”という名がEV市場から消え去るのは間違いなく、そしてローズタウンとしては「ローズタウンの施設や、自社のEVであるエンデュランスに関する資産を買い取り、それをベースにEVを発売しようという買い手が見つかる」と自信を見せていて、破産したといえども自社製品に対しては誇りを失っていないようですね。

創業1年で上場し「10万台の受注を集めた」ことで株価が高騰したローズタウンの受注がウソだった
米でバブル化しつつある新興EVメーカーの株式公開。創業1年で上場し「10万台の受注を集めた」ことで株価が高騰したローズタウンの受注がウソだった模様。今後こういった例が多数出そうだ

| 上場直後の値上がりだけを目的に会社を作り、上場させるEV関連企業がいっぱい出てきそう | さて、現在アメリカにて盛んなのが特別買収目的会社上場によるEV(電気自動車)関連会社の株式公開。これによっ ...

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参照:THE STRAITS TIME

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