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フェラーリやポルシェ、フォードなどが採用するカーボンファイバー製ホイールとは?その製造元が危険性やメリット、その可能性について語る

フェラーリやポルシェ、フォードなどが採用するカーボンファイバー製ホイールとは?その製造元が危険性やメリット、その可能性について語る

| カーボンファイバー製というと一昔前には「とうてい手が出ない」シロモノではあったが |

最近だと普及してきたせいもあり「まだ求めやすい価格」へと下がってきた

さて、モータースポーツの世界にてカーボンファイバー製ホイールが登場したのは1984年(ホンダのバイク)だそうですが、量産車とくに四輪においてカーボン頬イールが一般化したのはこの数年です。

ただ、これら市販車に採用されるカーボンホイールのほとんどはオーストラリアの「カーボンレボリューション」社によって製造されたもので、例外としてはケーニグセグやポルシェ(ともに自社製造)、ヒョンデ(ダイマグ製)が見られ、しかしポルシェについてはこの数年「提供がなされていない」もよう。

加えてアウディとBMWもカーボンファイバー製ホイールの自社開発を行っていることが報じられており、しかし製品化したという話を聞かないため、なんらかのハードルを超えることができない可能性もありそうです。

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カーボンホイールは危険なのか?

そこで今回、そのカーボンホイール製造としては最大手であるカーボレボリューションの創設者兼 CTO、アシュリー・デンミード博士による(カーボンホイールに対する)見解が公開されており、ここでその内容を紹介してみたいと思います。

なお、同社はこれまでに80,000個以上ものカーボンホイールを市場に送り出したという実績を持ち、シボレー、フェラーリ、ランドローバー、フォードとの供給契約を結んでいます。

カーボンファイバーホイールの潜在的な利点は非常に大きいと考えて良いでしょう。カーボンファイバーは非常に軽くて非常に強いです。 自動車エンジニアなら誰でも軽量化を試みますが、一部の軽量化は他の軽量化よりも大きな影響を及ぼします。

私が皆さんに教えたい基本的な物理学の教訓は、ホイールはクルマの中で2番目に重要な重量であるということです(最も重要なのはシャーシです)。

クルマの車輪はばねのない回転質量です。 バネ下重量の軽減によりサスペンションの負担が減り、乗り心地が向上します。 回転質量の減少により慣性が低減され、加速、コーナリング、ブレーキング性能が若干向上します。 また、クルマのバネ下質量や回転質量と比較して、(クルマの性能を向上させるには)ホイールを軽量化するのが最も簡単です。

これが、当社がカーボンファイバーを採用している理由です。カーボンファイバーは高価ですが、重量削減によるメリットは一般に追加コストと引き換えるだけの価値があります。 現時点ではアルミニウム製のホイールよりもはるかに高価ではあるものの、カーボンファイバーホイールは軽量ホイールの利点をさらに広げることが期待されています。

実際のところ(正確な比較が難しいものの)カーボン製ホイールは一般に同サイズのホイールと比較して4輪で20kgくらい軽いと言われ、これはつまり「相当な軽量化を達成できる」ということを意味します。

その一方でときどき報じられるのが破損の問題で、アルミニウムホイールであれば(過剰な負荷がかかったとしても)「変形」する程度なので即座に走行不能になったり事故につながることは考えにくく、しかしカーボン製ホイールだと「粉砕してしまう」ため、そうなると車両が制御不能に陥るという問題が指摘されているわけですね。

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ただし、前出のアシュリー・デンミード博士によればそういった問題の指摘については「根拠がない」。

ソリッドカーボンファイバーに関して言えば、ホイールの一部の厚さは約2インチです。あれは、決して簡単に壊れたり、ちょっとやそっとのエネルギーでは壊れません。

ホイールの性能に関しては、自動車技術者協会 (SAE) と自動車メーカー自身の両方によって非常に高い基準が定められています。 フェラーリとモデナ大学がカーボン革命ホイールに関して行った研究では、ホイールテストの極端な指針を示しています。 SAEの基準は高く、フェラーリの基準はさらに高いです。 他の自動車メーカーも同様に高いベンチマークを持っています。

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さらにカーボンレボリューション社のCEO、ジェイク・ディングル氏によれば以下の通り。

ホイールはクルマにとって、安全上”非常に”重要なコンポーネントです。

たとえばフォードとの共同開発において、フォードは実際に、我々と提携する以前、カーボンレボリューション製のアフターマーケットホイールを購入し、デトロイトの穴だらけの道路で容赦なくホイールを酷使しています。

まったく新しい種類の材料を、安全性が重要な製品に導入しようと考えた場合、彼らはそれを現実の世界に導入して何が起こるかを確認する必要があると判断しました。 それで、数カ月かけてこれらのことを叩きのめそうとしたのですが、彼らはその結果に納得し、その結果として我々の製品と技術に信頼を置いています。

私たちはニンジンとセロリの例えを使っていますが、これは興味深いものです。 ニンジンのスティックとセロリのスティックを持っていたと想像してみてください」とデンミードは言います。 セロリはむしろ繊維状の複合材料に似ています。 より均質で等方性の金属と比較して。 では、アルミニウム片とカーボンファイバー片を持っていて、ニンジンやセロリを折るのと同じように、それらを折ろうとしたと想像してみてください。 手ではできないかもしれませんが、無理にやると、アルミニウムはニンジンのように折れる傾向がありますが、カーボンファイバーはセロリと同じように(繊維が結合しているので)ポッキリとは折れません。

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つまり、ジェイク・ディングル氏が主張するのは「カーボンファイバー製ホイールの場合、破断したとしてもホイールが耐荷重能力を失うことはない」ということで、さらには「重量をあまり追加せずに非常に強度の高いホイールを製造できるのがカーボンファイバーの特徴である」とも。

具体的にはわずか10パーセントの重量増加のみで衝撃強度が50パーセントも向上するといい、こういった事実がベントレー・ベンテイガやレンジローバーといった重量級SUVにカーボンファイバー製ホイールが採用される理由のひとつとなっているのかもしれません(これらのホイールサイズは非常に大きいため、カーボンファイバー製ホイール採用のメリットは大きい。強いアルミホイールを作るよりも、はるかに軽い重量で強いカーボンホイールを作ることができる)。

アルミホイール製造における大きな制約の1つは、液体の溶融アルミニウムを固化する前に金型に流し込み、キャビティ全体を満たさなければならないことです。そう、あなたはよく知っていますね。 薄い部分を作ることはできません。

しかしカーボンファイバー製ホイールでは事情が異なります。これはカーボンファイバーの独特な製造方法による利点です。 必要に応じて、レイアップと呼ばれる織物素材の層を追加または削除できます。 したがって、多くの強度が必要な領域ではレイアップを厚くし、他の領域ではレイアップを薄くすることができます。 これはアルミホイールに比べて大きな利点です。

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今後、カーボンファイバー製ホイールはさらなる拡大の可能性も

現在、カーボンレボリューションはハイパフォーマンスカー向けのホイールのみを供給しているものの、同社によればこの現状は「すぐに変わるでしょう」。

その意図としては「重量を減らし、効率を高めるための新たな方法を模索しているEVメーカー」がカーボンファイバー製ホイールに対する注目を高めているためで、「たとえばフェラーリは常に頂点に存在し、テクノロジーがもたらす1.5秒のラップタイムの向上を常に望んでいることは容易に想像できます。しかし、今日の業界で本当の問題を抱えている顧客は別にあります。彼らはEVドライブトレインで(後続距離を伸長するという)目標をどのように達成するかについて真剣に頭を悩ませています。そして、カーボンファイバー製ホイールは大きく重量を削減できるひとつの選択肢なのです」。※EVはとくにホイールサイズが大きい傾向があるため、より高価が出やすいものと思われる

さらにカーボンファイバー製ホイールは(上述の通り)成形の自由度が高く、さらに別体パーツを取り付けるとなるとさらに別次元の可能性が広がることになり、実際のところカーボンレボリューションは「カーボンファイバーを使用してユニークな空力特性を生み出す方法」について検討しているそうですが、こちらについてはまだ研究途上なのだそう。

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さらにカーボンレボリューションは近年高まる需要に応えるため、母国オーストラリアと北米での生産拡大を目指しているといい、「今日の私たちは、1970年代初頭のアルミホイールとほとんど同じです。業界を本当に破壊する可能性を秘めた新技術であり、ホイールのあり方を変えてゆくでしょう」。

参考までにですが、カーボンホイールといっても様々な種類があり、たとえば「ディスクとリム(バレル)すべてがカーボンファイバー」でできているホイールもあれば、「ディスクのみがカーボンファイバー、リムがアルミニウム」、あるいは「リムがカーボンファイバー、ディスクがアルミ」というパターンなど様々であり、今後はそのクルマの特性や価格帯にあわせて様々なカーボンホイールが登場することになりそうですね。

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参照:Motor1

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