さて、縁あってカルティエの新作ウォッチフェアへ。
「a new chapter in cartier style」と題されたイベントで、カルティエの新作(SIHHの新作中心)、しかも高価格帯商品ばかりに的を絞ったハイエンド展示会となります。
写真を残したかったのですが、来場者は紳士淑女ばかりで、スマホで撮影する人などはおらず(写真を撮ってSNSにシェアするような俗物的な客層ではない)、従ってカメラを出すのがはばかられたので画像はナシですが、ぼくは完全に場違いな雰囲気であったのは間違いのないところです(終始「なんでこんなところにいるんだろうな」と考えてた)。
展示されていたのはメンズだと主なものはドライブ・ドゥ・カルティエ、ロトンド・ドゥ・カルティエ、パンテール、サントス・デュモンの新作腕時計。
そのほかもちろんレディス、超高価格帯(ウラカンよりも高い)の宝飾腕時計がザクザク展示。
カルティエは「ジュエラー」ということで腕時計マニアからは軽く見られがちで、たしかにムーブメント他を「外注」していた次期も長く、しかし現在は「ほぼすべて内製(セイコーには及びませんが)。
ジュエラーだけあって加工や磨き、仕上げの技術は非常に高く、同じジュエラーであるブルガリと比較しても「数段上」の品質を持っていると考えています(面が美しく出ている。同じく磨きに優れるのはロレックスとセイコー)。
時計に使用される「針」についても酸化や劣化を防ぐために「焼き」を入れたりと長期に渡って使用することも考えており(カルティエウォッチの針が青いのは焼き色。ゴールド針は除く)、かなりの拘りが反映されています。
その割に中古価格が安いのも特徴で、中古でカルティエウォッチを手に入れるのはいい選択だとぼくは考えています。
会場では幾つか(というかけっこう)試着してきたので、それらの一部を紹介してみたいと思います。
まずは「ロトンド ドゥ カルティエ フライング トゥールビヨン リザーブド ダイアル ウォッチ(下の画像で右側)」、価格は1674万円。
ケース系は46.2ミリとかなり大きいのですがエッジが丸くなっていること、厚さがさほど無い(実際は12.75ミリなので薄くはないのですが、この12.75ミリは中央の「最も厚い」部分の数値であり、ケース外周はかなり「薄く」見えるようにデザインされている)ため非常にスタイリッシュ。
腕に巻いたときのバランスが良く、このあたりはさすが「美しく見せる」ことに長けたジュエラーならではですね。
秒針がないのはヨーロッパの上流階級を対象にしているからで(ヨーロッパのかしこまった場では服同様に時計にもドレスコードがある)、ローマンインデックスなのも同様ですね。
次いで同じロトンド「 ミステリアス アワー ウォッチ(上の画像で左側)」、696万円。
何がミステリアスかというと、文字盤左側にある時針と分針のある部分が「完全に透明」であること。
こんな感じで「完全に向こう側が見える」構造となっています。
一見「どうなっているの?」と思わせるもので、これはカルティエ独特のデザインですね。
この構造はなかなか面白いのですが、腕毛が透けて見えたり、汗をかいた腕に装着するとちょっとアレなので、汗をかかない環境で、手入れを行った腕に装着する必要があります(つまりは上流階級向け)。
次いで試着したのは「ドライブ ドゥ カルティエ ウォッチ(ステンレス、左)」69万円(ゼロが一個少ない!)、「ドライブ ドゥ カルティエ ウォッチ(ゴールド、真ん中)」213万円、「ドライブ ドゥ カルティエ フライング トゥールビヨン ウォッチ(右)」993万円。
「ドライブ」シリーズは「カリブル」に次ぐ男性専用ウォッチで(カリブルが出るまで、カルティエの腕時計は男女両方をラインアップ。しかし男性専用とすることでデザイン的自由度が拡大することに)、トノー型とラウンド型の中間のような八角形ケースが特徴。
これは実際に腕にはめてみると非常に収まりがよく、「ぴったりと」馴染む感じ。
カルティエの腕時計全般に言えることですが、フィット感は非常に高く(ラグのカーブが影響していると考える)、大きく重くとも違和感を感じさせないのがいいですね。
なお、ゴールドケースだとジュアケットやシャツの袖、ボタンが当たっただけでも傷がつく可能性があるのですが(金は柔らかいので)、その場合ケース側面がポリッシュだと思いっきり傷が目立つことに。
しかしながらカルティエの場合、ケース側面はブラシ(サテン)仕上げとなっており、傷つきにくい、もしくは傷が目立たない仕様となっています(参考までにロレックスのゴールドモデルはサイドがポリッシュ仕上げなので傷が目立ちやすい)。
カルティエというと「宝飾品」ブランドではあるものの、かなり実用性・日常性に配慮していることもわかります。
反面、自分や他人の目に触れることになる「正面」には美しいポリッシュ仕上げがなされており、まさにジュエラーの真骨頂と言えるでしょう。
ドライブ ドゥ カルティエ ウォッチはレザーストラップなので「ドレス系」のようには思うものの、ブラックの文字盤だとけっこうラフな格好に似合いそうであり、たとえばジーンズやTシャツを着ている時にこれを合わせると、「かなり知的に」見え、その人物自体をワンランクアップさせてくれるのでは、と感じさせる腕時計ですね。
そして次は「サントス ドゥ カルティエ サントス・デュモン」。
ぼくが最初に購入したカルティエ・ウォッチは「サントス」だったので、思い入れのあるシリーズでもありますね。
「サントス‐デュモン ウォッチ、カレンダー&パワーリザーブ(ゴールド、左)」280万円、「サントス-デュモン スケルトン ウォッチ(チタン、真ん中)」531万円、「サントス-デュモン スケルトン ウォッチ(ホワイトゴールド、右)」593万円の3つを今回は試着。
サントスそのものは「世界初」の腕時計とされており、カルティエのみならず腕時計の歴史を語る上でも外せないもの。
なお右二つはローマ数字状の構造物が「ケースの一部」を兼ねており、これにムーブメントのパーツを組み込むことで「向こう側か透けて見える」構造となっています(これはケースにムーブメントを組み込むのではなく、ケースに直接ムーブメントを構成するパーツを組み込む”スウォッチ”に似ているものの、カルティエの特許)。
そのため、使用する金属の質量が小さくて済むこともあり、見た目よりはずっと軽量。
実際は大きなサイズですが、スクエアなケースはリューズが手の甲に当たりにくく、かなり装着感は良好。
今回試着した中では真ん中のチタンモデルが(他のシリーズ含めて)一番いいんじゃないか、と感じます。
これもやはりドレッシーな装いでもカジュアルな服装のどちらでも対応できそうで、かつドライブ・ドゥ・カルティエよりもややスポーティー。
そして「パンテール」。
パンテールは80年代を代表する腕時計だと認識していますが、今回新たに復活した模様。
当時は「デジタル・ショック」のインパクトが大きく、機械式腕時計も小さく薄くなり、ジュエラーもクォーツ式ムーブメントを取り入れていたりした時期で、やはりパンテールも「軽く薄く、クォーツ」。
腕時計としての価値は低いかもしれませんが宝飾品、ステータスアピールとしての価値は高く、映画「ウォール街(オリジナル)」でもチャーリー・シーンが成功した後にゴールドのパンテールを身につけるようになるなど、ある種の象徴としても認知されていたと考えています(最初は安物のダイバーズウォッチだった)。
現代の腕時計からすると信じられないほど小さく軽く、手に取ると「え?」というほどの頼りなさですが、一旦腕に巻くとその破壊力は抜群。
多くの人が二度見するくらいのHPがある、と言って良いでしょう。
新品を購入すると高価ですが、80年代当時の中古を購入してポリッシュに出せば、けっこう安くで「イバリのきく」腕時計を入手することができそうですね。
ただし「人と服を選ぶ」のは間違いなく、そのあたり考慮して購入しないと「思ったような効果を得られない」可能性が大きい、「諸刃の刃」とも言えます。
そのほかは数千万円クラスの宝飾時計などを試着してみましたが(カタログモデルではない、エクセプショナル・クリエーション?とかいうシリーズ)、正直ぼくには全く似合わないものの、自分の腕に付けてみるとやはり「とんでもない衝撃」。
確実に周囲の(自分を見る)目が変わるであろうことは間違いだろう、と思います。
かなり前の話にはなるものの、現クロノス日本版の編集長を務める広田雅将氏が「お金がなくてキャバクラの客引きをやっていた頃」の話で、宝飾時計をなぜつけるのか、と客の一人に聞いたところ「モテるからに決まってるだろう」と即答されたというくだりを見たことがありますが、宝飾時計というのはその人の評価すら変えてしまうほどの存在なのかもしれません。
今回様々な腕時計を試着する機会に恵まれましたが、その総額を計算してみると「1億7000万円」にのぼっており、今後こういったことは二度と無いだろうな、と思った次第です。
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