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| 伝説の「HFインテグラーレ」再び |
ランチア、ブランド復活の象徴として伝説の名を選ぶ。対象は新型デルタ&ガンマ
長年にわたり、イタリア国外ではほぼ消滅状態だったランチア(そのイタリアでも1車種のみの展開にとどまっていた)。
しかしステランティス傘下でのブランド再構築が進む中、ついに“あの伝説”が復活することが明言され、その伝説とはもちろん、「HFインテグラーレ」の名です。
ブランド再建の象徴は、やはり“HF”
先日発表された新型イプシロンHFのローンチにあわせ、ランチアは小さなプレスリリースの中で「HFインテグラーレ」ブランドの復活を以下の通り宣言することに。
「HFは今後、ランチアのすべての高性能モデルの定義となります。現在はイプシロンで展開中ですが、2026年にはガンマとデルタでも『HFインテグラーレ』の名が冠される予定です」
ここではさらに「2026年よりHFグレードとして設定、電動パワートレインを採用」「ハイブリッド&EV両仕様が存在、登場は2026年を予定」「WRCの血統を引き継ぎつつ、“次世代型”として再定義」と公式にコメントされ、HFは単なるグレード名ではなく、ランチアがパフォーマンスブランドとして再定義されるための象徴となるようですね。
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新型デルタHFは「EVインテグラーレ」に?
特に注目されるのが新型デルタHFインテグラーレですが、これは往年のラリーカーとはかなり趣が異なるモデルになりそうで、これまでの報道によれば新型デルタはCMPプラットフォームを使用すとされ、これはこれはオペル・モッカやプジョーe-208と共有される電動対応アーキテクチャ。
イプシロンHFが搭載する電動パワートレインは、最大出力280ps/最大トルク333Nm(245lb-ft)を誇り、同じユニットがデルタHFにも搭載される可能性が高いと見られています。
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ガンマHFはPHEV or EV仕様?
もう一つのHFモデルとなる予定の「ガンマHF」に関しては、まだ公式に姿を見せていないので「ナントモ」ではありますが、標準仕様のガンマ自体が2026年登場予定であること、ハイブリッドとEVの両方を設定することがすでに確認されています。
このため、HFインテグラーレ仕様についてもPHEV(高出力ハイブリッド)かEVの2通りの可能性が考えられ、そしてもちろん「よりスポーティな味付け」が期待されているわけですね。
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「昔のインテグラーレ」とは違うが…それでも期待される理由
1980〜90年代のデルタHFインテグラーレは、WRCにおいて6年連続マニュファクチャラーズタイトルを獲得するという伝説を築いており、その後継をEVで…というと肩透かしを感じるかも。
しかしWRCもいまやハイブリッドの時代に突入しており、「現代のインテグラーレ=電動AWDハッチバック」という形も、ある意味で時代に即した解釈であるとも考えられ、単なる懐古趣味にとどまらない、「未来のHFインテグラーレ」を期待してしまいます。
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さらに、ランチアは内外装ともに極めて洗練されたミニマルデザインを打ち出しており、同じステランティスグループのアルファロメオやプジョーとは明確に差別化されているため、新しいHFインテグラーレが、“単なる電動ホットハッチ”以上の存在になる可能性は十分に考えられるわけですね(ただ、最大の懸念はそれが日本で販売されるかどうかである)。
「HF」「インテグラーレ」とはなんぞや
HF (High Fidelity)
「HF」は「High Fidelity(ハイフィデリティ)」の略で、「高い忠誠心」を意味しており、元々は1960年に、熱心なランチア車のオーナーたちが設立した「ランチア Hi-Fi」クラブに由来しています。
このクラブは、ランチアの新車を6台以上購入したオーナーのためのものだったとされ、文字通り「高い忠誠心」がないと入会資格がなかったということもわかりますね。
その後、「HF」のロゴは、ランチアのレーシング部門や、特にラリー用の高性能モデルに与えられる称号として使われるようになり、勝利を追求するランチアのモータースポーツへの情熱と、それに対する高い信頼性を象徴するマークとして認知されるようになったという経緯を持っています。
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インテグラーレ (Integrale)
「インテグラーレ」はイタリア語で「完全」を意味しており、ランチア デルタのモデル名に「インテグラーレ」が付く場合、それはそのクルマがフルタイム4WD(四輪駆動)システムを搭載していることを示します。
ランチア デルタは、もともとジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたコンパクトなハッチバックのファミリーカーで、しかし世界ラリー選手権(WRC)での勝利を目指して高性能化されたという背景も。
その過程において強力なターボエンジンと組み合わせたフルタイム4WDシステムが採用され、この4WDシステムを搭載したモデルが「インテグラーレ」と呼ばれるようになったわけですね。
ランチア デルタ HF インテグラーレ
この2つの名称が組み合わされたクルマが伝説の「ランチア デルタ HF インテグラーレ」で、これはまさにランチアのラリーにおける黄金期を築いた象徴的な存在です。
1987年から1992年にかけ、ランチア デルタ HF インテグラーレは世界ラリー選手権で6年連続マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得するという前人未到の偉業を達成しましたが、参戦に際してはホモロゲーションモデルが市販され、多くのラリーファンやクルマ好きを魅了したのは御存知の通り。
「HFインテグラーレ」には、年式や改良によって「HF 4WD」「HFインテグラーレ」「HFインテグラーレ16V」「HFインテグラーレ エボルツィオーネ(通称:エボ1)」「HFインテグラーレ エボルツィオーネII(通称:エボ2)」といった様々なバリエーションが存在し、それぞれが固有のファンを持っています。
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まとめると、「HF」はランチアの高性能モデルに与えられる称号であり、「インテグラーレ」はフルタイム4WDシステムを搭載したモデルであるということに。
そして、「ランチア デルタ HF インテグラーレ」は、これらの要素が組み合わさって生まれた「ラリー史に名を刻む伝説的な高性能車」でもあり、こうやって見ると今回の「HF インテグラーレ」の復活がいかに”大事件”であるかがわかろうというものですね。
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