| 自分の名を持つクルマが愛され、そして世界中で走っているという気持ちを理解できるのは彼女のみだろう |
エリーザ・アルティオーリさんは4歳の頃から自分のエリーゼを持っていた
さて、ロータスはエリーゼの生産を終了させていますが、今回その「最後の顧客向けエリーゼ」が、車名の由来となった女性、つまりエリーザ・アルティオーリさんに納車された、とのこと。
これはロータス公式Twitter、そしてエリーザ・アルティオーリさんの公式インスタグラム(アカウント名が「アイアムロータスエリーゼ」!)にて公開されたもので、とくにエリーザ・アルティオーリさんのインスタグラム上では様々な画像がアップされています。
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なぜロータス・エリーゼは「エリーゼ」に?
ロータスの車名は「E」で始まることで知られ、このエリーゼももちろんEではじまる「Elise」。
ロータス自体は1952年にコリン・チャップマンによって創業されていますが、コリン・チャップマンの死後1982年にはデビッド・ウィッケンス氏へ、そして1993年にはロマーノ・アルティオーリ氏へと経営権が移っています。
そしてこの「E」で始まるネーミングは1956年の「イレブン(Eleven)」に始まり、しかし複数オーナーの手を経ても続いてきた伝統ということになりますね。
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ロータス・エリーゼは1995年、ロマーノ・アルティオーリ氏が経営権を持っていた時代に発売されたクルマで、その直前の「エリート」「エクラ」「エスプリ」といった高級路線から「軽量シンプルな」本来のロータスへと回帰したことで大きな人気を得ています。
アルミの押出材を接着して組み立て、これにローバーもしくはトヨタ製のエンジンをミドシップマウントするというパッケージングを持ちますが、現代まで基本設計を変えずに3万5000台以上も作られたことからも、その思想がいかに優れていたかもわかります。
なお、このロータス・エリーゼは、ロマーノ・アルティオーリ氏が孫娘の誕生(1993年)を記念して名付けたもので、発表されたのは孫娘であるエリーザ・アルティオーリさんが2歳のとき。
そしてロマーノ・アルティオーリ氏はエリーザさんが4歳のときに初代エリーゼ(S1)をプレゼントしています(つまり彼女は4歳にしてロータス・エリーゼのオーナーとなった)。
その後、ロータスはやむなくプロトンへと売却
ただ、ロマーノ・アルティオーリ氏にとっての幸福な時代は長くは続かず、同時期に経営していたブガッティ・アウトモビリが経営破綻してしまい、資金繰りのための同氏はロータスをマレーシアのプロトンへと売却せざるを得なくなってしまいますが、のちのヒットとなるエリーゼを発売した翌年にロータスを手放すしかなかったという心情は「想像にあまりある」。
逆に、プロトンとしては「非常にいい買い物をした」ということになるのかもしれません。
そしてもうひとつここで触れておかねばならないのは「ブガッティ」。
ロマーノ・アルティオーリ氏は1987年にブガッティの商標権を得て「ブガッティ・アウトモビリ」を設立し、ここで発表したのが「EB110」。
設立はイタリア・モデナとなりますが、モデナを選んだのは、彼の地がフェラーリやランボルギーニ、マセラティなどのスーパースポーツを排出した場所であり、サプライヤーやエンジニア確保が容易だったという理由kらだとされています。
かくして彼はパオロ・スタンツァーニはじめランボルギーニ・ミウラやカウンタックを生み出したチームを引き入れて「ミドシップ、クワッドターボ、4WD」という現代のブガッティにも連なるレシピを生み出すことになりますが、このEB110は「ブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティの生誕110周年」を記念して命名されています。
そして発売当時、そのパフォーマンスは「規格外」であり、現代ではその解釈が「ようやく追いついた」ということなのか、ここ最近急速にその価値を向上させているクルマの一台となっています。
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ロマーノ・アルティオーリは真のクルマ人
なお、ここでぼくがブガッティを持ち出したのは、ロマーノ・アルティオーリ氏のクルマ愛に触れたかったから。
同氏はロータスの経営権を引き継ぎ、そこで革新的な構造を持つエリーゼを生み出しつつも「伝統的なネーミングとロータスの基本精神」を守り、そしてブガッティの復活にあたっては「常に革新的でパワフルで、時代の先を行っていた」ブガッティのスピリットを継承しつつ、”スーパーカーの新しい時代を切り開く”EB110を発売したわけですね。
そしてEB110についてはエットーレ・ブガッティの生誕110周年を名称に込めるなど、ブガッティへの敬愛もしっかり表わされています。
つまり、過去と現在とをうまく融合させ、未来にまで残るクルマを作ることができる人物ばロマーノ・アルティオーリその人であったということですね。
同氏はたいへんなクルマ好きでありながらも、けして自身の理想形にすべくそれぞれのブランドを運営していたわけではなく、各ブランドの歴史、そして創業者の意思を引き継ぎ、現代に蘇らせるということを心がけていたのだと思われます(もしそのとき、コリン・チャップマンが生きていたらエリーゼのようなクルマを作っただろうし、もしエットーレ・ブガッティが生きていたら、EB110のようなクルマを作ったかもしれない)。
そしてエリーゼは1995年から昨年まで生産が続けられ、ブガッティEB110は現在の(フォルクスワーゲンが経営する別会社である)ブガッティ・オトモビルが10台限定にて発売した「チェントディエチ」のモデルともなっていて、ロマーノ・アルティオーリ氏がロータス、ブガッティ時代に送り出したクルマはいずれも「伝説」になっていると言ってよいかと思います。
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ちなみにこちらはエリーザ・アルティオーリさんが「ファミリーミーティング」と題してインスタグラムに公開した画像。
これを見ると、経営破綻したといえど、当時の工場などは今でも残っているようですね。※現在のブガッティ・オトモビルの本社はフランスのアルザスにあり、アウトモビリ・ブガッティの資産を引き継がない完全なる別会社で、商標の使用権のみが移動している
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そして今回エリーザ・アルティオーリさんに納車されたのは「最後の顧客向け」エリーゼ。
なお、ロータスは自社のヘリテージコレクション用として、イエローの個体(スポーツ240)を別途確保している、とのこと(35,124台目)。
ボディカラーはチャンピオンシップ・ゴールドで、搭載されるエンジンはスーパーチャージャー付きの1.8リッター4気筒(トヨタ製)、出力は237馬力(240PS)、0−60マイル(96km/h)加速は4.1秒、最高速度は237km/hというスペックを持っていますが、エリーザ・アルティオーリさんが最初に”授かった”初期のエリーゼ(S1)の出力が120馬力、0−60マイル加速6秒、最高速度203km/hであったことを考慮すると、見た目はほぼ同じであっても、エリーゼはそれだけの進化を果たしたということがわかります。
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参照:Lotus Cars(Twitter), iamlotuselise(Instagram)